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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
悪役令嬢は冒険者になります。え? 殿下はだめですよ?

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18/105

18 冒険者になります。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 毎日、猛烈に忙しく過ごしているうちに3年の月日が経った。

 フェイは相変わらず、のんびりと過ごしているし、稽古をつけてくれている父の鬼教官ぶりは健在だ。


 変わったことと言えば、アレス殿下が我が家に来るのが、週一回婚約者として定められているお茶会だけになったことくらいだった。


 私も、王妃教育と王立学園の両立で忙しいけれど、アレス殿下は最近は公務にも参加し始めたと聞いている。第一王子はとても忙しいようだ。


 ――――でも、学園に行けば、毎日会うことができるのだし寂しくはない。


 殿下は学園でもいつも誰かに囲まれている。私も、結局お断りできなかった取り巻きたちに囲まれている。もはや、立派な悪役令嬢だ。


 私を取り巻く令嬢たちの数が、小説よりも明らかに多い気もするが、たぶん気のせいだろう。


 だから、学園でも殿下と話をする機会はあまりなくなっていた。


 ――――寂しくなんかない。


 そんな風に、物思いにふけっていた私に、ここ最近忙しそうだった父が「ルルちゃん、出かけるから準備して」と声をかけてきた。


「お父様……?」


「ああ、ドレスではなくそこにある服を着るようにね」


 ソファーの上に包みが置かれているのがさっきから気になっていたけれど、私の服だったようだ。


 開けてみると、それは、丈夫だけれどまず貴族令嬢は着ないであろうズボンとシャツ、それに体の一部を覆う皮の鎧だった。その他にも、剣を下げるためのベルトがついている。


「これ……」


「――――剣の腕も、闇魔法も同年代では抜きんでているし、十分資格があると思うよ。俺が十歳の時より、むしろ強いかもしれない」


「お父様……それでは!」


「ああ、学園でも言われていただろう?」


「ありがとうございます!」


 冒険者クラスに所属している生徒は、十歳になるとギルドへの登録が推奨される。登録した生徒は、野外の実践的な授業の参加が認められるのだ。


「……ごめんね本当は、ここまで来るまでに諦めてくれないかなと思っていたんだ。でも、ルルちゃんは厳しい訓練にもついてきたから」


 ――――それは、命がかかっているからです。もちろん、私が悪役令嬢として断罪されれば、父にも悪役令嬢の父として没落運命しか残っていないんですからね?


「――――それに紹介したい人間もいるんだ」


 父は笑顔になると、私に手を差し出した。

 そういえば、手袋をしていることが多いから普段はわかりにくいけれど、父の手には立派な剣だこがある。そして、その体つきも通常の貴族とは違い、まるで騎士のように鍛え抜かれたものだ。


 そして、父は相変わらず年齢不詳のまま。私の年の離れた兄だといっても、十分通じそうな容姿をしている。私と違って髪の色は茶色だけれど、目力を感じる光が当たると金に光る茶色の瞳は私と同じ色をしている。


 そうやって黙って立っている父はカッコイイ。父なのに思わず惚れてしまいそうだ。いや、時々頼りないところとか、放っておけないところとか、もう私は父から目が離せない。あらゆる意味で。


 その手をそっと握りしめる。


 まだまだ、小さな私の手は父の大きな手にすっぽりと包まれてしまった。


 私はまだ、子どもで守られて生きていることを知っている。


 でも、私にはあまり時間がない。


 ヒロインと出会うまで、たぶんあと5年しか残されてないのだから。


 

最後までご覧いただきありがとうございました。


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