976:ぺったんぺったん()
来年は寅年ですね。来年もよろしくお願いします。
お餅つきをすると心から血が出ませんか? ほぅら、耳をすまして聞いてご覧。ぺったんぺったんつるぺったん。耳をすまして聞くだけなんて居てもたってもいられない。はやる心に火が着くよ。着いた炎は燃え上がる。うがぁ! あ、お餅はよく焼いた方が美味しいと思います。
「ひとみん、準備出来たよー?」
「はいはい。今行く」
という事で今のは幻覚。一体いつから餅つきをやってると錯覚していた? 餅米は蒸した。あとは搗くだけだよ。
行ってみると既にスタンバイした楓ちゃんと澪ちゃん。楓ちゃんが杵役らしい。下手すると臼が砕けそうだけど……大丈夫よね?
「じゃあ始めます。うりゃっ」
「はいっ」
「どりゃ」
「はいっ」
「せいっ」
「はいっ」
おお、息ぴったりだ。さすがパートナーだね。よっ、水無月婦妻! あっという間にお餅へ。雨は夜更け過ぎに雪へと変わるかもしれんが、餅米は夜更けどころか日暮れを待たずにお餅へと変わったようだ。出来たお餅は七輪で焼いている。イフリートが火の番だから焦げたりはしない。しないよな?
続いての挑戦者はルーちゃんと香子ちゃん。ルーちゃんが杵役。あっ、ゆうちゃんが乱入した。ゆうちゃんも杵役やるの?
「そぉーれ!」
「うらぁ!」
「どりゃあ!」
「えっさぁ!」
「やっさぁ!」
「ほいさぁ!」
「どりゃりゃあ!」
二人の杵が交互に振り下ろされる。杵と杵によるめくるめくコンビネーション。香子ちゃんは……殆ど動いてない。あ、二人の杵が鍔迫り合いに! って鍔ってどこだよ。
「よいしょ」
その隙に香子ちゃんが餅米をひっくり返す。うむうむ、さすがである。
「他心通使えばこれくらいは容易いです」
そんなところで神通力使うの? いやまあ、私も精霊魔法というか精霊さんにズルをしてもらってるからなあ。その後も二人で競いながらお餅は出来た。二人はグロッキーだけど香子ちゃんは元気だ。
「次は私たちが」
「いつ来たの?」
「今です」
ちょうど通りかかった師走一家の参戦だ。悟さんが杵役……と思ったら杵持ってふらついてた。いや、もっとしっかりしろよ! 仕方ないので小さめの臼と杵を出してあげて今日香ちゃんと明日香ちゃんの二人でやらせる。うんうん、楽しそうだ。悟さんはイフリートと一緒に焼け具合見てて。
ガブリエル……真那さんは主を探しに行かなくてもいいのかと聞いてみたら、「こんな仕事が沢山ありそうな時に目立つわけないじゃないですか」だと。確かに、新年迎える神からは歓迎されないだろうし、活動するのは自殺行為かも。いや、戻って来いよ。
「じゃあ次は私ですね」
葵さんはお胸に柔らかそうなお餅が既にあると思うんですけど!? 返し手はハルがやるらしい。私かやろうかって言ったら危ないからやめてって。いや、その程度で通じないし。まあ葵さんだから障壁ぐらいなら砕きそうだけど。
しかし葵さん、低身長なのにどうするのかと思ってたら水使って持ち上げたよ? 時々ハルにも当たってるけど、当たる度にハルの身体が一部影になって消えてる。
なんのかんのと餅つき終わって砂糖醤油でいただきます。きな粉も良いけどやはり砂糖醤油だ。食べ過ぎると太ったり、喉に詰まったりするんだよね。犠牲者は年間三千人以上。って誰か一人多くない?
「ひとみ様、超ご挨拶に参りました」
招杜羅さんだった。そうか、丑年も終わりだもんね。という事は次の寅年も来るのかな?




