974:動画はどうかな?
「追儺」に関しては73話参照。
再び来ました本店ビル。今日は私たちのために役員会が開かれてる……訳ではなく、金融庁の検査の報告会なんだとか。いや、この年末のクソ忙しい時に金融庁の検査とか地獄以外の何ものでもないですが。
で、報告会の方は私らが聞く事も無いので予め済ましてあるらしい。業務改善命令とかは出なかったみたいだからそこまでな指摘はなかったんだろう。一部にえらく憔悴した人がいるけども。
そんで金融庁の人はそのまま残る様です。帰ってもいいのよ? いや、これは役員会の人に主導権を無理矢理握られない様にするための睦月さんの策略かも。
「それでは熊井建設のリスケについてのご説明とその是非の討論を始めます。では、当行行員、霜月ひとみ殿、前へ」
「はい」
前に進みでる。なんだか裁判所の被告人席みたいだなあ。せめて弁護士席が良かったなあ。異議あり!
「では熊井建設に対する過去の経緯からご説明させていただきます」
と言って過去にうちの融資がギリギリまでなかった事で倒産寸前にまで追い込まれた事を洗いざらい話す。
「デタラメだ! 熊井建設は放っておいてもそうなった。そんな体力はなかった。競合に負けていたからな!」
「いえ、決して競合に負けていた訳ではありません。当時の担当者が競合先から賄賂を貰って計画書などを盗み出したのです!」
「で、デタラメを……証拠でもあるのか!?」
黄金沢が喚いてる。それもそのはず、こいつが真犯人だもの。トドメをさすか。これだ!
私が取りだしたのはタヌキから取り返した計画書類。太鼓腹建設から持ち出したものだ。まあそれでも嘘だデタラメだ、と黄金沢が騒ぐんだよね。確かにこの書類を担当者の黄金沢が渡したって証拠はないもんな。おや? メールだと? しかも動画付き? えーと、送り主はTSUINA……追儺!?
「皆さん、今私のところに動画が届きました!」
一か八か。スクリーンに映し出して……
ガチャッ
「これはこれは黄金沢さん。珍しい事もありますなあ」
「例の書類は何処だ?」
「例の書類?」
「とぼけるな! 二十年前に市からの案件をお前の所に回してやっただろうが!」
「申し訳ないですなあ。ありません。私も命は惜しいですからな」
「なんだと? ちっ、まあいい。どうせはっきりした証拠はないんだ。とぼければなんとでもなるだろう。リスケは……まあいい。もう熊井建設には何の興味も無いしな」
「他の件はどうします?」
「処分しておけ。しばらくは献金も要らん。なるべく繋がりを匂わせそうなものは残すな」
「へいへい。それじゃあほとぼり冷めたらまたいいお話お願いしますよ」
「いくらか融資してやってるだろうが。しかし新しい支店長となる奴にちゃんと仕込んでおいてやるさ」
動画はここで切れている。そうか、金とってたのね。しかも不正融資とかやってんのか。私が一円でも多くと債権回収やってんのに。
「あ、ああああ……」
「黄金沢君、何か言うことはあるかね?」
「とっ、頭取、違うんです! これは、違うんです!」
「これだけはっきりした証拠を見せられてまだ言い逃れをするつもりかね? 君の処分は追って下す。それまでは自宅謹慎しておきたまえ」
「うわああああああああああああああああああ」
引き摺られて退場して行った。それから私らは熊井建設のリスケについて妥当性や計画性をしっかり説明した。楽々森彦が作った計画がよく出来てたってのもある。リスケはしっかり認められたのであった。
ありがとね、追儺。




