751:キトゥン&スクランブル
今日のひとみんはちょっとだけ素直
バラの香りに包まれたお風呂場で私とハルは同じ浴槽に入っていた。と言ってもそんなに大きくないので大人が二人も入るとちょっと狭いんだが。それでも構わないとでも言うようにハルは幸せそうな顔をして湯船に浸かっている。私? まあ私もそんなに嫌じゃない。なんだか小さい頃に戻った様な気分だ。あの頃はママも含めて一緒に入ってたけど。パパ? シラネ。
「ねえ、ひとみん」
「何?」
「んーん、何となく呼んでみただけぇー」
しなだれかかって来るハル。肌くっついたところが熱いんだよなあ。お湯の温度上がってない?
「ねえ、ひとみん」
「だから何よ」
「あのさー、ひとみんはいつまで銀行員やるのー?」
「そうだね……まあ三十くらいまでじゃない?」
どっかのイケメンと結婚すればもっと早く寿退社出来るけどそんな事をハルに言うのもなんだしなあ。
「ひとみんはさー、まだ男の人と結婚したいのー?」
「え?」
そう言われてみればあまり考えなかった。結婚したい気持ちはあるのは間違いないが相手が男性というのはやはりラブラブな両親を唇を噛み締めながら見ていたからだと思う。誠に遺憾ではあるが。
大体、男性の趣味だってインテリ系のメガネの優男ってパパと正反対だもん。どう考えてもパパに反発してだよね。性別はひっくり返らなかったのは女性の中で一番好きなのがママだからだ。ママが結婚してくれるなら直ぐにでも結婚したい! でも結婚しなくてもママはママだからこのままでも良いのだ。
ちなみに現時点で二番目に好きなのは……ハルだ。なんだかんだで一緒に居てくれるし、一番気安い。それに客観的に見て美人だと思う。Cカップのおっぱい、ジムで鍛えてるからかスレンダーなくびれ。いや、こいつの場合平気でご飯抜くからか? 整った顔。学生時代、モテてはなかったと思うがモテていた友人が「真の美人はハルみたいな子だ」って言ってたからなあ。なお、ハルはそれを聞いて、「私は美人ってひとみんの事だと思うよー」って言ってた。昔からハルは私に対する評価が甘い。あと、脚もスラッとしていて美脚だ。背は同じくらいだけどモデル体型である。
「いや、まあ、結婚出来なかったら玉藻前に負けたみたいで悔しいなって」
「あー、その程度なのかー」
なによう。だって結婚して欲しいって言ってたのママだもん! 私は結婚しなくてママのそばに居たいもん!
「まあ女で結婚するならハルかなあ」
「ファッ!?」
「さて、狭くなって来たからそろそろ上がるね」
浴槽を出て外に出る。
「えっ、ちょっと、待っ(ざぶーん)」
どうやらハルは浴槽に沈んだ様だ。さて、私は寝るか。廊下をバタバタ走る音が聞こえた。ハルがお風呂から上がったらしい。止まったのは……私の部屋の前。コンコンとノックされた。
「ひーとーみーん」
「何よ、寝るんでしょ」
「その、さー、一緒に寝たりなんか……」
「良いよ」
「そうだよね…………………………え!?」
「だから良いって」
「寝相悪いよー?」
そんな事は分かってる。でも、今日は一緒に寝てやるよ。いや、何となくハルと一緒に寝たいと思ったんだ。
「ひとみん」
ベッドに寝転んでハルが私に話し掛けてきた。
「なあに?」
「手、繋いでも、いい?」
「……ほら」
「あったかい……」
私の手を包み込む様に握ったあと、ハルはゆっくり目を閉じた。私も寝よう。今日は疲れたな……




