723:アパートの鍵貸します。
次の問題物件。
「お疲れ様でしたー!」
最後のお客さんが帰って営業終了。焼かれたお菓子はだいたい出た。少し残ってるけど、これは賄い用だ。
「えー、皆さんのおかげで無事に営業出来ました。ありがとうございます」
源造さんが照れながらもはっきりと礼を言う。
「正直言うと前の店でファミレスが出来た時にもうダメだと思ったんだ。だけど、あったんだな。俺にも出来ることが。俺でもやれることが」
「源造さん……」
「オマケにこんな美人のおっぱいちゃんまで駆けつけてくれた!」
「源造、てめえ、まだ言うか!」
葵さんはジト目で源造さんを見てる。そうそう、その目で良いよ、こいつ。
「まあこれからこれがどれくらい続くかわからんが頑張っていきたいと思っている。今後ともよろしく頼む」
「はいはーい。じゃあ初日の成功と今後の発展をお祈りしつつ、乾杯しましょう。かんぱーい!」
買ってきたジュースの入った紙コップを掲げて乾杯。お酒? 未成年者とリハビリ途中の人相手に出す訳ないじゃん! ひとしきり騒いでその日はお開きに。次の日からは人数は減るけど大丈夫だろうか?
「さすがにお姉様に休ませる訳にもいきませんからメイドの中から応援寄越しましょう」
どうやら澪ちゃんも心配らしい。いや、私の心配なんだと。融資回収っていう私の都合なのにね。
初日の売上は上々。澪ちゃんが計算すると損益分岐点は一日五万くらい。今日は三十万ほど売上があったのでこの調子なら週一で手伝えば大丈夫かも? いや、今日はもの珍しさから来てくれた客も多分大勢居た。つまり、明日以降はこれだけの客が来ないかもしれない。
まあ、明日は私も来ないんだけど。あとは頼むよ、地狐。楓ちゃんと澪ちゃんも葵さんも明日は居ないんだからね!
「やり方はだいたいわかったから大丈夫!」
地狐はVサインをしているが果たして……
翌日。私は会社で他の案件で回収できそうなものが無いかを調べていた。どれも厄介な案件ばかりなんですが。何この家賃を払ってないけどずっと住み続けている厄介な住人って。この人居なくなったらアパート潰して返済できるとか言ってるけど。強制退去とか出来ないの? もしかして入居者がワケあり? ちょっと行ってみようかな?
「すいませーん」
「おや、霜月さん、こんにちは」
「あっ、三井さん。ちょうど良かった。昭和町三丁目のアパートの事で聞きたいんだけど」
売買の委託をしてるのが丸角不動産だったので来てみたのだ。
「銀行の方が来たって事はあの問題のアパートか」
「やっぱり問題なの?」
「地主さんは売る事に同意してくれてあとは追い出すだけなんだが」
「相手がスジモノって事?」
「いや、それがな、居るのは子供だけなんだよ」
……なんだって!?
「なんで子供だけ? 子供だけで暮らしてるの?」
「いつ行っても親は留守って言うばかりでな。家賃の督促に行っても難しい事は分からないとまあ」
「何歳くらい? うーん、お姉ちゃんの方は小六くらいかな。妹は小三か小二か」
「学校は?」
「さあ、行ってるのかどうかわからん。平日の昼間に訪ねて行っても子供が出たからな」
「案内して!」
子供だけで生活? 親は何やってんのよ! そんなの放っておけるわけ無いじゃない!
三井さんに連れられてアパートへ。かなり老朽化してる物件だ。一階の部屋のドアを三井さんが叩いた。
「おい、居るか? 生きてるか?」
カチャリとドアを開けて出て来たのはやせ細った女の子だった。




