721:客寄せ狐
稲荷神社は商売の神様。
登場してすぐ流れるような土下座ムーブを披露してくれた地狐。周りの炎は「狐火」という能力なんだそうな。イフリートにこっそり聞いたらコントロールを奪うのは難しくないんだとか。
「ただの人間かとバカにしておりましたが、まさか宇迦之御魂神様に取り入っていたとは……」
お前、全然反省してねえな?
「とっ、とんでもありません! この神にも手が届こうという狐である私が人間に対してへりくだっているのですから」
「どう思う、ドライアド?」
「ひとみが私をドライアドって呼んでるのも問題の一因だと思うけど……あのさ、分かるかどうか疑問だけど、私はティターニア。妖精女王よ」
「ひぐっ!? よ、妖精女王って……」
「そんで、このひとみは人間じゃあない」
「は? 何をおっしゃいますかどう見ても人間……」
ドライアドに促されて認識阻害を地狐にだけ解いて見せた。
「そ、その耳はエルフ?!」
「そうよ。それもハイエルフ」
「あ、あの生物兵器と言われた……」
酷い言われようだ。でもそれは私のせいじゃない。過去のハイエルフさんたちが悪いんだもん!
「こいつ、固まったけど、どうする?」
「脅かし過ぎたかな? ともかく起きるまで待っとこう。明日も仕事だしね」
「この状況で仕事なんか行けないでしょ?」
「……直ぐに戻ってくるからそれまでこいつ捕まえてて」
「わかった」
とまあそんなやり取りがあって次の日。私は早めに起きて家に帰り、シャワーを浴びて会社へ。副支店長に「融資の回収の為、現場に行きます」と報告して戻ってきた。副支店長ならあれこれ言わずに「いいよ。気をつけてね」で送り出してくれるからなあ。それに支店長が来るのを待ってるのもなんだし。
「もがー!」
戻るとツタに絡まってもがいてる地狐が居た。源造さんはまだ寝てるみたい。仕込みは良いのか?
「さて、それじゃあ話を聞かせてもらおうか。なんでこの店を燃やそうとしたの?」
「もがもが」
なるほど。わからん。
「あー、ドライアド? そいつの口を塞ぐのやめてもらっていい? 外に声が漏れない様に風の精霊さんたちにお願いしとくから」
「仕方ないなあ。じゃあ口だけ」
「ううう、ひどいよう」
「酷いのは店を燃やそうとしたあんたでしょうが。さあ、キリキリ吐きなさい」
という訳でポツリポツリと地狐が語り始めた。なんでも、ここの土地が霊的にとてもしっくり来て、いつか祠を作ってもらおうとこの土地に来た奴らを追い払ったんだそうな。って、自己中か!
「良い霊的相性の土地に居ることが出来れば天狐になるのも早まるので」
「天狐?」
狐の階級には天狐・空狐・白狐・地狐・阿紫霊狐があるんだと。永く生きた順なんだそうだけど、永生きするにも霊的相性のいい土地で霊力を蓄えないといけないんだとか。そういう意味でここはいい土地なんだと。
「お願いします! ここに住まわせてください! 何でもしますから!」
「なんでも? 今、何でもするって言いましたね?」
「な、何でもとは言って……」
「言ったよね?」
「はひ……」
よし、こいつここで働かしてしまおう。ほら、おいなりさんって商売の神様でしょ? いや、こいつはそんな大層なものでは無いけどそれなりのご利益はあるかもしれないし。
「じゃあ、今日からあなたもここの店員ね」
「???」
源造さんが起きる前に色々仕込んでおくか。




