720:地狐ちゃんに叱られる?
諸説ありますって便利な言葉ですよね。
ゲートをくぐって出る。おお、ちゃんと移動出来てる。さすがドライアド。
「会社に遅れそうな時とかやってあげても良いけど?」
「あのね、いきなり会社の前に出て誰かに見つかったらどうすんの?」
「そこはほら、記憶を失わせるとか」
「なんでそう極端に走るんだか」
ゲートは便利だけど日常使いするにはちょっと配慮が必要だろう。今回だって夜遅い時間で人が少ないからやってるのだ。
「じゃあベヘモス、ここにお願い」
「了解。じゃあ埋め込むね」
ずぶずぶと家屋の土台が埋め込まれていく。そんでちょうど埋まった辺りでベヘモスが周りを固めてくれた。
「これでいいですか?」
「うん。ありがとう。ご飯食べてく?」
「あー、今は特には。ゲーム進めたいんで」
そう言ってベヘモスは帰って行った。ゲームばっかりしないでご飯も食べろよ。
「じゃあ今夜からここに寝れるんだな?」
「そうだね。それじゃあおやすみ」
「ねえ、ひとみ。ここに泊まった方がいいんじゃない?」
は? ドライアド、何を言ってるの? うら若き乙女である私が殿方の家に泊まるなどと……
「なんか異変が起こったならせっかく移った店が潰れちゃうかもしれないよ?」
「ぐぬぬぬぬぬ」
分かってんだろ? 何かってその、霊的なものだよね? 苦手だって言ったよね?
そんなこんなで源造さんは二階で寝てもらい、私たちは一階で待機する事にした。必ずしも一階から来ると決まってる訳では無いが、羽根が無けりゃ一階からだろう。矢でも鉄砲でも持って来い! ……こう言っときゃ来ないよね?
その夜。玄関の扉がギギィと開く音がした。泥棒かな? なんか火の玉みたいなものも浮かんでるけど気の所為だよね? あは、あはははは。
「立ち去れ……」
「ぎゃー、喋った!」
「この土地から出て行け……」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや、来ないでぇ!」
火の玉があったので水の精霊さんをゴーレムみたいな感じにして殴りつけた!
「ふぎゃ!?」
あれ? 当たった? って事は幽霊じゃないな! それなら平気だ!
「さぁて、水の精霊さんたち、そいつを捕まえて!」
「わ、こら、何すんだ!?」
火の玉に隠れていたやつが姿を現した。キツネ?
「くそぅ、なんなんだお前は!」
「あんたこそ何よ」
「この地狐を知らんか」
チコ? 叱られるの? ぼーっと生きてんじゃねえって? いや、ぼーっとは生きてないと思うけど。
「どこの五歳児かは知らんが一緒にすんな! これでも三百年は生きてんだぞ」
「たかだか三百歳かあ」
「な、なんだと!?」
まあドライアドはかなりな高齢なんだろうね。詳しい歳は聞いちゃいけないと思うので。天地開闢の頃から生きてたって言われても不思議じゃないしね。三百歳とかせいぜい江戸時代でしょ?
「いやー、狐の知り合いなら他にも居るけどこんな小物はねえ」
「狐の知り合い? 妲己とか?」
「いやまあ確かに知り合いだけど、ほら、こないだついてきてた宇迦之御魂神とか」
「ああ、ウカちゃん」
地狐の身体がビクッとなった。恐る恐るといった風に聞いてくる。
「あの、つかぬ事をお伺い致しますが、もしや、あの、宇迦之御魂神様をご存知なのですか?」
「ウカちゃん? そういえば酒呑童子の所に行って以来だからしばらく会ってないね」
地狐が血相を変えて床に額を擦り付けた。
「先程までの御無礼、平に、平に、御容赦くださいませー!」




