716:新装開店!
滑り出しは上々の様です。
どこぞのアニメみたいに店を開いたら満員御礼とかある訳ないから地道にやっていこう。じゃあオープンするよ。
ガチャ……パタン
「ひとみさん? なんで閉めちゃったんですか?」
「ちょっと私、疲れてるみたい。お客さんの幻覚が見えるよ」
「そうなんですか。じゃあ私が」
楓ちゃんがドアに歩いて行って、ガチャ……パタン
「ひとみさん、どうやら私も疲れてるみたいです。たくさんの人が見えます」
「お姉さんも楓ちゃんも見えたならそれは本物でしょうが! ほらほら、お客さん待たせちゃうから」
楓ちゃんのお友達のユナちゃんがつっこを入れてくれた。やれやれこれでやっと話が進む。でも、開店するってあまり話してなかったのになんで?
「いらっしゃいませ!」
「スイーツハウス、リアルビレッジへようこそ!」
「そんな名前だっけ?」
「なんで看板頼んだはずのひとみさんが覚えてないんですか!?」
どうでもいいことは秒で忘れるんだよ。しかし、本村だからリアルでビレッジかあ。
店内には喫茶スペースがあるのでそっちで食べてもらう人には給仕をする。まずまずの人の流れ。
「はい、980円です。ありがとうございました!」
次から次にお客がひっきりなしに来る。おや、葵さん。
「ひとみさん、なんかすみません」
「どうしたんですか?」
「お客さんを呼ぼうと園のお母さん方に口コミで広めたらあっという間に広がっちゃったみたい」
なんと! 犯人は葵さんだった。まあ応援として出来るだけのことをしてくれたということだろう。お母さん方と子供たちの分まで買うから売れ行きは良い。
「あっ、ビショップさん?」
「イイエ、ヒトチガイデハ?」
「いや、今更誤魔化しても」
「……陛下には内緒でお願いします」
どうやらお忍びらしい。あ、ママの分まで持って帰ってくれるならママの分は私が出すよ?
「そうなったら結局陛下も一緒に食べねばおさまらないではないですか」
「まあちゃんと三人分持って帰んなさい」
十一時を過ぎるとお客さんもまばらになって来た。よし、ご飯にしましょう。今日は初日だから私が作ったお重だよ。みんな美味しいって食べてくれるから良しとしましょ。
午後に入って十五時すぎになるとまた客が増えてきた。食後のデザートに甘いものが食べたくなったのかな? この時間になると持って帰る人が多いみたい。晩御飯も作らなきゃだもんね。
夜十九時、閉店。疲れがどっと出た。
「皆さん、お疲れ様です」
なお一層疲れた様な顔をした源造さんがそこに居た。
「おっさ……源造さん、ちゃんと休んでね」
「分かっとるわい。あー、高校生のみなさんも手伝いありがとうございました」
「いえー、お仕事ですから」
「それでもありがとうございました。あなた方のお陰です」
手伝った女の子たちは嬉しそうにしている。
「じゃあみんなにこのホールケーキを」
「仕事の合間になにやってんの……」
でもまあせっかくなのでいただく事にする。うむ、いただきます。見た目は単なるチョコケーキである。お味の方は……ほんのりビターな大人の味だ。星三つだね! おや、誰かまた来た様だ。お客さん、閉店ですよ。
「邪魔するぜ。新しく開いた店ってのはここ……」
「くっ、もうヤクザが来おったか」
来たのはともかくなんか震えてるんだけど。どうしたの?
「ひいっ! すいません! もうみかじめ料とか言いません!」
どうやら私の事を知ってる相手らしい。私は全然知らんけど。




