715:修行パート
と言っても修行の様子はありません。
「澪もハルさんも友達居なさそうなんでお手伝いの人員が要るかなと思って確保しときました」
なるほど、言ってることは酷いけど、いい着眼点だ。ちなみに私も友達そんなに居ないけどね。敢えて口に出さなかったのかそれとも気付いて無いのか。
「でもオープンまだ先だよ?」
「オープニングスタッフって事で水無月の屋敷で研修すればいいかなって」
「学校の子を水無月のお屋敷に入れるの?」
「澪曰く、私の居場所は楓のそば、ですって」
「はいはい、ご馳走様。でもありがたい。今稟議は通した所だからもう準備はしてて」
「了解です」
さてと、それじゃあ施工してくれる業者を探さないとね。新年度だから多分大丈夫と思うけど。帰りに水無月のお屋敷に寄っていこう。
「おっさーん!」
「その呼び方はやめてくれんか。ちゃんと本村源造って名前があるんだ」
「今初めて聞いたわ」
「決算書類に書いてあっただろうが!」
そう言えばそんな文字列を見かけた気がするが特に気にも留めなかった。まあそんな瑣末事はどうでもいい。
「おっさ……源造さん、融資がおりますよ」
「本当か!? あれだけ延滞してたのに一体どうして……」
「まあ、そこは私の腕って事で」
嘘です。土地があったからです。担保があれば貸してくれます。でも、それを言うとプレッシャーになっちゃうかもだから秘密。
「じゃあそれこそ本当に頑張らなきゃいかんな」
「あ、それとバイトしてくれるっていう女の子も見つけてあります」
「何から何まで……だが、満足に給料は払えんぞ?」
「そこは借金してでも払ってもらいます。でも、売れたら万々歳ですよ」
「サラッと怖いことを言うな! まあ店員が居なきゃ店が回らんからな。最初は一人でやろうと思ってたんだが、ケーキを焼いていたりするとそんな暇がないんだな」
まあ、私もケーキ焼いたりするからわからんでもない。最近は火の精霊さんに焼くのも火加減も任せてるからなあ。
「じゃあ、施工業者の手配しときますね」
「何から何まで本当に助かる。だが、安くあげてくれよ?」
「いい仕事ってのは安くちゃ出来ないんですよ」
「金がねえんだよ!」
結局施工業者はハルの伝手である。なんでもハルが筆頭株主なんだとか。いや、なんかテレビでCMやってるような聞いた事ある所なんだけど。
「うちの市内ならまあだいたい揃うよー」
「市内じゃなくても揃いそうなんだけど」
という訳で異例の早さで着工開始。厨房の機械類は開店祝いって事でハルが贈るそうな。そんなこんなで三週間が過ぎて、ゴールデンウィーク直前の今日、無事にオープンする事になった。
もちろんその間も私は遊んでた訳じゃない。不良債権の色んなのを見て歩いていた。いや、この一件が片付くまで他のに取り掛かるのは気持ちが乗らないからね。まあ喫茶店には詳しくなったよ! 喫茶店でもケーキとか美味しいんだね。でもおっさ……源造さんの方が美味しかったなあ。そう考えると顔はいかついけど稀有な才能だよね。
「開店おめでとうございます」
店内には可愛い制服に身を包んだ女の子たちが。楓ちゃんの同級生や後輩たちらしい。顔広いよねえ。
「おっさ……源造さん、一言どうぞ」
「またおっさんって言いかけたな。まあいい。あー、今日、ケーキ屋を開店する事が出来て嬉しく思う。これから頑張っていこう」
パチパチパチと拍手が巻き起こった。さあ、じゃあ開店だ! 今日だけは私も手伝うよ!




