510:鬼がかったやり方
FGOの酒呑童子は私の一番好きな鯖です(関係ない)
地の底から声がする。暗い。ここは暗い。憎い、憎い。騙し討ちをした奴らが憎い。手打ちをしたいと贈り物をしてきたと思ったら毒の酒を飲ませるなぞ。憎い、憎い。この身体が動けばすぐにでも彼奴等を粉々に砕くものを。憎い、憎い。
「とまあ、ここの所こればかりなんですよ」
「確かに怨念が詰まってそうだわ」
大江山のある中腹。底無しの穴が空いていてそこからこのようなうめき声が聞こえるのだ。気が滅入って仕方ない。
「さっさと降りて片付ける?」
「とんでもない! そんな事をすれば封印が直ぐに解けてしまうではありませぬか!」
いやだから封印解いて全員でボコるんだってば。
「まあ、酒呑の奴なら全盛期のわっちと五分位の実力でありんしたねえ」
「やっぱり大したことないんじゃん」
「なんでわっちがザコみたいな扱いになっとるのか理解に苦しむのやけど.......」
いや、まあ鬼姫ザコかったじゃん? あ、いや、楓ちゃんが抑え込んでたからザコかったのかもだけど。
「.......そこに居るのは鬼姫か?」
おっ、地の底から問い掛ける声が。
「おー、酒呑よ。鬼姫はここに居りますえ」
「随分と久しいな。茨木は壮健か?」
「安心せい。大人しくしておるよ」
茨城? ここは京都だけど? まあでも言い方からして人名なんだろうな(人とは言ってない)
「なあ、鬼姫。ここから出してくれんか? お主とワシの二人ならこの国の人を滅ぼす事も出来ようて」
「いや、無理じゃな」
「なんだと? 臆したか?」
「全盛期の頃のわっちならともかく、今は人の身に封じられておる。オマケにここには人以外がたんまりじゃ。御前や玉藻が居たとてどうしようもあるまい」
「玉藻はともかく御前がおってもか。随分と厳しい話じゃな」
その響きには何か寂しそうなものを感じた。
「あの、ちょっといいですか?」
「ん? お主人間.......違うな。お主が鬼姫の依代か」
「はい。水無月楓と申します。多聞天です」
「たもっ.......そう言うことか。生半可な存在に鬼姫が封じられるとは思わんが多聞天などという大物がおったか」
「いえ、アルバイトなんでそんなに偉くはないんですけど」
「アルバイト? よく分からんが多聞天には違いないのだろう? まあいい。ここから出してくれんか?」
「出たらどうするのですか?」
「素直に従おう。地の底は苦しくてやれん」
まあ鬼姫が封じられてるから観念してるのかな? でもまあここは慎重に行った方がいいよね。
「うん、わかった。良いよ」
ぴょーんと楓ちゃんが穴の中に飛び降りた。あっ、ちょっと何やってんの!
「大丈夫。ちょっといってきまーす」
「大丈夫な訳あるかー!」
澪ちゃんがそのまま飛び降りて触手で楓ちゃんを掴む。よし、ナイスキャッチ! ってそのまま一緒に降りるんかーい!
「私らも行こうかー」
ハル、さすがにこれは空でも飛べない限りは.......
「ほい、闇の翼」
ハルの背中に漆黒の翼が生えた。コウモリみたいなのが吸血鬼の翼だと思ったけどこの翼はどっちかと言うと鳥のようだ。
「コウモリの羽根だと二人を持って降りれないからねー」
そう言うとハルは私と葵さんを抱えて地の底へ羽ばたいた。穴は深く深く続いており、どこまでも降りていける様だった。しばらく降りると地面が広がっており、そこに鎖に繋がれた鬼と楓ちゃんと澪ちゃんが居た。
「楓ちゃん、澪ちゃん」
「ひとみさんまで」
「お姉様」
鎖に繋がれた鬼は酷く弱々しく、ぐったりとしていた。
「お主ら、これが酒呑童子。京を騒がせた鬼の王よ」




