1165:ハルの奮闘
だがこの結果である。相手が格上過ぎるんですよね。もうちょい頑張れば追いつくかもです。
あ、ちなみにあのミラーイメージ、私には全部見えててどれが虚像でどれが本体かまで丸わかりだから。端で見てるからって? いやいや、多分対峙してても大丈夫だと思う。ニアが太鼓判押してくれた。
「ハイエルフ相手に幻術使ったって全部バレるんだもん。目まで良いのよね、ホント」
ニアは私にも何度も幻術掛けようとした事はあったんだと。ちょうど覚醒したばかりの頃かな? でもちっとも掛からなかったってさ。
「ほぅら、こっちこっちぃ」
バカにした様にモーガンが挑発する。ハルは目をつぶった。
「あらぁ、見えててもかわせないからって諦めて目をつぶっちゃったのぉ? それじゃあトドメと行こうかしらぁ」
背中の羽根を尖らせて、串刺しにする様な態勢。ハルの周りにはあれが無数に居て四方八方から飛んでくるんだ。うわー、ハル大丈夫かな?
「じゃあ脇役は退場してねぇ、まったねぇ」
凄まじい勢いで突っ込んでいくモーガン。その顔面をハルの拳が捉えた。
「もげらっ!?」
「よし、あったりー」
ハルはニッコリと笑った。えっ? どういう仕組み?
「コウモリの超音波じゃよ」
「ああっ!」
そうか。ハルは真祖だからコウモリに変身とか出来るんだ。そして今のはもしかして超音波の器官だけ身体を変化させた?
「正確には超音波の発信と受信、それから解像の器官じゃがの」
「そんなの教えてたんですか?」
「本人、「ソナーに感あり!」とか言って嬉々としてやっておったが?」
どこの沈黙の潜水艦だ。まあ深海に潜る原子力潜水艦の外側にわざわざ傷付けるとか頭おかしい……いや、マンガの話はいいか。
「さーて、それじゃー本気でやるよー」
ハルが軽いフットワークで不意をくって戸惑ってるモーガンに襲い掛かる。パンチ主体……というかキックは使ってない。そもそも、キックは威力と引き換えにバランスを崩す可能性があるのだ。真祖であるハルはパンチだけでも相当の攻撃力があり、(楓ちゃんとかと比べちゃダメではあるけど)普通の相手ならばそれだけで十分なのだ。
但し、普通の相手ならば。
「なめンじゃねぇ、若造ォ!」
モーガンから魔力が放出された。かなりの濃度の魔力だ。
「こちとらなァ、生まれた時から何百年とオトコを喰う事と相手をぶっ倒す事だけ考えて生きてきてンだ。高々百年すら生きてねぇガキにやられてたまるかよォ!」
モーガンが激高した。さっきまでの余裕のある姿じゃなく、本性を剥き出しにした獣。そのまま手を頭に当てる。
「いかん、避けよ!」
「クロックアップ!」
次の瞬間、本当にモーガンの姿が消えた。そして、気が付いたらハルの腹にパンチがめり込んでいた。
「ステゴロ勝負がお望みなら、滅びるまで付き合ってやるよォ!」
それからはハルは防戦一方だった。サンドバッグのようにひたすら打たれて時折攻撃を返しては居たが、当たっても意に介さずといった感じでそのまま殴り続けていた。
「私が、ひとみんを、守るんだー!」
「なら出直してこいや、三下ァ!」
モーガンの周りに闇が集まる。なんだかすごく嫌な予感がする。
「ダークネス……」
「阿呆!」
ロニさんが飛び出してモーガンを取り抑えた。
「はっ、放せっ」
「この勝負、こちらの負けで良い。矛を退け。そんなもの大した結界も張っとらんのにぶっぱなすでない」
やがてモーガンの周りの闇が消えてロニさんがそれを吸収したような感じだった。




