おはよう 地獄
初の投稿ですが、まだ勝手が分かりません。
覗き見してね!
文字と言葉は記憶してあった。
五感の記憶はぼんやりと知っている。だが五感は無い。
思考回路がどうなっているのか不思議である。
自分の一人称が何かも分からない。この自己分析は何回目だろうか。回数を重ねる毎に大雑把になるし、記憶探索も飽きた。
そういえば、この意識が芽生えた頃。自分は何を考えていた?
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視覚を思い出した。いや、視えた。
「ウアァアアウァ!?」
驚いて叫び声を出して、その叫び声に更に驚いた。
「!?!?」
聴覚がある。
倒れているのか、背中からの触覚もあった。
口から血が垂れて、味覚も思い出した。
暑い。温度も感じた。これも感覚の一つかな?
遅れて嗅覚が…痛覚に変わった。
血の臭いかもしれないが、自分の口から出た血はこんな臭いじゃない。
血が焦げた臭い?
視覚に意識を替えた。空は赤黒く、地面を灰色に見える。
辺りからは炎が吹き出し、叫びが聞こえる。
とにかく此処が何なのか知る必要がある。
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地獄だった。比喩ではなく、絵に描いた通りの地獄が広がっている。何で『地獄』を知っている?
しばらく走っている合間に分かった事
・自分は女である
一人称は私にしよう
・鬼が歩き回っている
彼らは角がある。何故か私にも形は違うが、角がある。
・人が落ちて来る。そして鬼達に殺されている
此処ではそれが普通なようだ。
自分が女であることには驚かなかった。一番驚いたのは、道中で岩に激突しそうになったとき、なんと私の体は岩を貫通していた。透けて貫通した。コミカルに体の跡だけを残して岩に穴を開けた訳ではない。
その他にも色々と不可思議な現象を起こしたが、今の私は『鬼達以上に少し腕っぷしが強い』のが一番の武器だ。
試しに、鬼を1人(人?)相手に殴り合いを挑んだ。
数ヶ所の骨折で済んで安心した。鬼の方は地面から頭だけ出るようにして、埋めた。尋問開始。
「此処は地獄?」
鬼は頷く。
「貴方は鬼?」
頷く。
「私は落ちて来た?」
首を横に振る。
「私を知ってる?」
頷く。
「!」
今知りたいのは自分についてだった。
聞き取りにくい声で、鬼は話してくれた。
私はこの赤黒い空に浮いていたらしい。
200年間。
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鬼達に有名だったのだ。
そこだけ空間を消したが如く、黒い塊があったらしい。
石を投げても当たらず、覗き込んでも何か分からず、近づいて触れることも出来ない塊が私だったようだ。
「閻魔様に挨拶に行け」
「怖いからやめておくよ」
と、会話した後に鬼を掘り返した。
そこからは、出口を探す永いマラソンだった。
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