↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レトロ殺人RPG【最終回 執筆済】  作者: 凛1129
四章 デスゲーム島
39/39

4話 みんなの力

 ◇


【別荘宅】


「南地区の書物にはねえ……北の攻略については、なかったと思うけど」


 俺たちは北地区から一度別荘へ戻り、リリーとターシャにも集まってもらって今後の攻略について話し合うことにした。


 普段は酒や食事で散らかっている大きなテーブルも、今日は北地区の地図や各地から届いた報告書、防寒具の試作品や必要物資の一覧でほとんど埋まっている。


「そうか。南地区でも北の攻略はしてなかったってことか」


「少なくとも、私が調べた書物にはそれらしい記録はなかったね」


「最近は何故か一日数百人、初心者が増えてるのよ。なにがあったんだろーって、アタシもちょっと違和感は感じてるのよね」


 ターシャの話では、現実世界へ戻っていた間に、このゲームが特別大々的に宣伝されていた様子はなかったらしい。


 再びここへ来る時も、以前勧誘された場所へ行って再契約しただけで、その場には前回も今回も誰もおらず、客らしい人間もターシャ一人だけだったという。


「それで一日数百人か……」


「そう。どこからそんなに集まってるのか、アタシにも分かんないよ」


「でもさ〜、とにかく今回はアテがないのよぉ〜。前はみんながいたからなんとかなってたけど、今回は私ら四人だから全然見つからなくて」


 ミヤビはそう言うと、広げられた北地区の地図へ突っ伏した。


「じゃあ、またみんなが北地区へ行けるように色々やってみる? ターシャ商会雪国支店とか作る?」


「そうだなあ。結局やれることは今までと同じになるけど、それでやってみるしかねえか。あとリリーに調べてもらって、防寒具もかなりの数を用意しないと攻略どころじゃない」


「素材の手配はアタシがやるよ。東西南から集めれば、数はなんとかなると思う」


「北の設定モンスターは普通の連中じゃまず無理だ。探索に出すなら、ある程度育った奴を中心にして護衛も付けた方がいい」


「じゃあ育成班も作る?」


「それも必要だな。人だけ集めても、着いたそばから死なれたら意味ねえし」


 話しているうちに、北攻略は俺たち四人だけの問題ではなくなっていった。


 物資の確保、防寒具の生産、冒険者の育成、護衛の選定、拠点の建設まで、それぞれ東西南から人員を集めて進めることになった。


 ◇


 俺たちは北地区の極寒地帯へ入る手前に、新しい拠点を作り始めた。


 町というより、実際には基地に近い。


 北にいる設定モンスターは俺たち以外ではまともに倒せないものも多く、普通の木造建築では襲われた時に一晩で壊されかねない。


 リリーが南地区の資料から見つけた製法を参考に、外壁や主要な建物には鉄に近い強度を持つ素材を使い、防寒具や食料、回復薬を大量に保管できる倉庫も作った。


 ターシャ商会の雪国支店をそこへ移し、冒険者用の宿舎や治療場所、武器や防具を修理する工房まで増やしていくと、もう「支店」という規模ではなくなっていた。


 ただ、南地区までとは事情が違う。


 資材を運ぶだけでも距離があり、寒さへの対策も必要になる。さらに北へ入れる冒険者そのものを育てなければならず、拠点を作りながら探索まで続けるとなると、思っていた以上に時間がかかった。


 俺たちが北地区へ足を踏み入れてから、およそ半年。


 その大半を冒険者全体のレベル上げと拠点作り、そして北地区の探索に費やしたが、それでも次のイベントらしいものは一向に見つからなかった。


 探索範囲は何度も塗り潰され、同じ場所を別の班が改めて調べ、それでも何も出てこない。


 とうとう雪原そのものを疑い始め、降り積もった雪の下を大人数で掘り返してみようという話まで出た。


「さすがに地面の下に何か埋めてたら、悪趣味すぎるだろ……」


「でも他に探す場所ないんですよぉ〜」


「雪全部掘る気?」


「千人いればいけません?」


「いけるかどうかじゃなくて、やりたくねえよ」


 そんなやり取りまで出るようになった頃、ターシャ商会雪国支店を拠点に動ける冒険者は千人を超えていた。


 そしてある日、探索班の一人が雪まみれのまま基地へ駆け込んできた。


「報告します。とうとう見つけました」


「なにを?」


「雪国の町から東へまっすぐ行った最東端で、ガルーダを発見しました」


「ガルーダだと? まさかの俺か?」


「いえ、普通にあの、現実世界でよく見るような感じです」


「どんな感じだよ」


 詳しく聞けば、ワシやタカに似た頭部と鋭いクチバシを持ち、背中には巨大な翼。胴体と手足は人間に近い半人半鳥で、全身は黄金色、翼は赤く、雪原の中でも遠目に分かるほど光り輝く巨体だったらしい。


「間違いないんだな?」


「はい。しかも、前にも調べた場所です」


 それが引っかかった。


 その一帯は俺たち自身も通っているし、その後も複数の探索班が最東端まで調べている。何もない空間が続くだけで、ガルーダどころか、それらしい気配すらなかった場所だ。


「……急に出たってことか」


「そうとしか思えません」


 俺は北地区の地図を広げ、ガルーダが見つかったという場所を確認した。


 俺たちは人を集め、拠点を作り、北へ送り続けただけだ。


 それなのに、何もなかったはずの場所にガルーダが現れた。


「……やっぱり、人数か?」


「人数?」


「北に来る人間が増えたこと自体が、出現条件だったんじゃねえかってことだよ」


 確証はない。


 それでも、これまでの攻略でも人が増え、町が動き、他のプレイヤーが関わり始めたところから次の何かが起きている。


 今回も同じなら、俺たちは半年かけてようやく北地区のフラグを立てたのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。