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永夜の流星  作者: Ragna
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第二十二話 戦場

ヘルエ帝国、アリアの丘。

見晴らしのいい雄大な場所として有名なその丘は、今や地獄と化していた。

王国軍と帝国軍が殺しあってる。

ここまで凄惨な戦場はいつぶりだろう。


「アイラ、ほなウチはここで。」


リアはこれから共和国軍とともに王国軍の征討に行く。

私とはいったんここでお別れだ。


「うん。気を付けてね、リア。」

「約束やで。絶対に勝ってこな許さんからな。」


リアはそう言い残し、自分の仕事をするために歩き出す。

私も自分の責務を果たさないと。

あのバカでかい魔力の持ち主を倒さなければ。


「さて…今から行くよ、ヴィリアール。」


足を魔力で強化し、増幅。

そして一気に地面を蹴り、跳躍する。

空を飛ぶように移動し、目的地を探す。


「あそこか…!」


一度地面に着地し、もう一度跳躍。

そして目的地へ正確に着地した。

さぁ、再会の時だ。


「…久しぶりだね、ヴィル。」

「アイラ…!?なんでここに…」


女皇、ヴィリアール・ヴァイス。

一月ほど前に私を殺しかけた張本人。

珍しくその目は動揺の色が映っていた。


「私はこの地獄を終わらせるために来たんだよ。」

「そう…。そっかぁ、来てくれたんだね、アイラ。」


彼女の顔から動揺が消え、喜びが現れる。

私はその顔が嫌いだ。

この前は逃げるのに必死で気にする余裕もないけれど、今は違う。

その顔を見ると、反吐が出る。

あれを思い出させるな。


「一つ聞くけど、引いてくれる気はないんだよね?」

「えー。せっかくお姉ちゃんに会いに来てくれたのに、もう始めちゃうの?」

「あなたと話すことはないよ。」


私は腰に掛けていたスピカを引き抜き、姿勢を低くする。

ここは戦場だ。

私情ははさむべきじゃない。


「…そっか。もう私の言葉を聞いてくれる気はないんだね。」

「…。」

「いつからだろうね。私たちの道が途絶えたのって。」


私は信じられないものを見た。

ヴィリアールの顔に悲しみが現れている。

なんでそんな顔をするの?

()()()もそんな顔をしなかったのに。

今更そんな顔しないでよ。


「まあ…仕方ないか。でも、アタシはいつでもアイラを、妹のことを思って…」

「…っ!私を妹と呼ぶな!!!」


あらん限りの力を込めて地面を蹴り、距離を詰める。

今すぐこいつを斬り刻んでやる…!

最大限の殺意を込めてスピカを振るう


「…ごめんね。」


いきなり剣が飛んできて、私の斬撃を防ぐ。

間髪入れずに2本目、3本目の剣が飛んでくる。

私は身をよじって何と躱すが、距離を取らされてしまう。


「お前に…私を妹と呼ぶ資格なんてないっ!」

「…ごめん。ごめんね、アイラ。でもあなたはアタシの…!」

「黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れ!お前が…お前なんかが!」


私はお前の妹なんかじゃない。

そんな事実を認めるわけにはいかない…!

絶対に…絶対に!


「…アタシはそれでもアイラのことを思ってるよ。いつまでも。」

「なんども私を殺そうとしておいてぬけぬけと!」

「それもアイラのために…」

「それ、頼んでないよね。これ以上御託を続けるつもり?」


私はもう一度スピカを構える。


「うん、もうやめにしとくよ。これ以上続けてもきっとアイラを怒らせるだけみたい。」

「ここで終わらせてやる外道!」


私はもう一度地面を蹴る。

私はここで過去を清算しなければならない。

これがきっと最後のチャンス。

おそらくこの先、どちらかが死ぬまで止まることはない。

私の勘がそう告げていた。

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