第二十一話 剣は汝の元に
「ああ、いまこそ王国軍を蹴散らす時だ。」
その言葉で部屋に緊張が走る。
王国と共和国が戦争になるなんて、だれが想像しただろうか。
そしてこうなったのなら、私はどうすればいいのだろう?
まさか今更王国軍に加勢などはしないのだけど。
「フォード殿、貴殿には一つ頼みがある。」
「頼み…ですか?」
「戦姫として、共和国に貴殿の剣をささげてはもらえないだろうか。」
なるほど、これが私を呼び出した理由なのか。
共和国に仕えろ、か。
そもそも私は騎士じゃないから、忠義を尽くすなんて騎士道を持ち合わせていない。
だからそんなことをする義理もないのだけど…
「議長殿。私は罪人の身です。そんな人間を受け入れるというのですか。」
「言っただろう、貴殿の罪が冤罪であることは調べがついている。貴殿が報酬を求めるというのなら、できる限りなんでも応えよう。」
「私を信じると?」
「ああ、これはこの場にいる議員満場一致で決めたことだ。」
ここまで私を信用しているなんて、逆にちょっと怖い。
でも、私とて英雄と呼ばれていた身だ。
その信用に応えないわけにはいかない。
でも私は傭兵だ。
だからタダだ使われるわけにはいかない。
「分かりました。ただし一つ条件を付けさせていただきたい。」
「なんでも言うといい。さっきも言った通り、力の及ぶ限り応えよう。」
「この国への永住権をいただきたい。今のところ私は流浪の身ですので。」
「その程度ならばすぐにでも。」
今の私が求めているのは居場所。
それを提供してもらえるというのならば願ってもないもとだ。
なら私は取るべき行動は一つ。
そういえばあの時…英傑になった時もこう言ったっけな。
「我が剣は汝の元に。我が命ある限り、祖国に尽くすこと誓いましょう。」
「貴殿の献身、感謝する。フォード殿。」
この瞬間、私は柄にもなく共和国お抱えの騎士になった。
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それからしばらく経った後、円卓会議は順調に進んでいた。
議題はもちろん、どのようにして王国軍と戦うか。
議員たちの意見では、とにかく帝国領に侵入した王国軍の掃討を行うべきである、だそうだ。
実際それは正しいと思う。
王国領に攻め入るのは侵略を止めてからでも間に合う。
まずは今苦しんでいる民を早急に救うべきだ。
「そして王国軍の指揮官だが、四大英傑の女皇であるという情報が入っている。」
その言葉を聞いて鳥肌が立つ。
女皇が式を務めているのなら、帝国の被害は想像を超えているかもしれない。
「女皇の相手はウチとアイラが。それでええやろ?」
「マキノくん、勝つ自信があるのか?」
「逆に聞くけど、負けるとでも思ってるん?ウチらをなめすぎやで。」
会議中リアはずっとこんな調子で、今にも部屋を飛び出しそうな勢いだ。
だから私が今から言おうとしていることにも、すっごい怒るんだろうな。
「ウチとアイラでかかれば絶対に負けることはない。だからこれで決まりや。」
「…リア。悪いけど、ヴィリアールの相手は私に任せてほしい。」
「…は?」
リアと目を合わせる。
その目にはいつもの無邪気さなどない。
「あいつは私が倒す。」
「…なんで?ウチが足手まといってことなん?」
私は静かに首を振る。
「認めたくないけど、ヴィリアールは私の家族だった人なんだよ。彼女を止めるのは私じゃないと。」
「そんなん言ってる場合ちゃうやろ!」
「ううん、これが最善だよ。王国軍の戦力は知ってるでしょ?私たち二人が女皇一人に足止めされると、それこそ被害が広がる。」
王国軍はどの国と比べてもはるかに強力な軍事力を誇る。
女皇一人に気を取られてはいけないのだ。
リアであれば、あの強大な王国軍騎士たちを一掃できるだろう。
「でも…!」
「お願い、リア。私を信じて。リアは自分の家族を救ってあげてよ。」
しぶしぶリアはうなずいてくれる。
納得…するわけないのは知っている。
でも女皇だけは私が倒さないと。
私にはその責任がある。
「話は決まったな?それでは2日後、帝国領に向けて出陣する。みな準備を整えろ。」
議長の言葉で会議がお開きになる。
王国との因縁をこんなにも早く精算しないといけないなんて。
全く予想はしてなかったけど、どうせ避けられないことだ。
目を背けていては前に進めない。
「ヴィリアール…今度は私が勝つ。」
私は一人呟き、スピカを握りしめた。




