第二十話 円卓会議
首都アヴァンにある政府会館。
私はリアとともに4日かけてここまでやってきた。
馬車なんてものには久しぶりに乗ったけれど、やっぱりあまり好きじゃなかった。
だって暇なんだもん。
「さてと、この扉を通ったら円卓会議に突入やで。準備はええか?」
「はぁ。気乗りはしないけどね。行こう。」
二人で重々しい扉を開け、中に入る。
部屋の中には巨大な円卓があり、20人ほどの人がいた。
これが円卓会議…さすがの重厚感だね。
「パンドラことリア・マキノ、召集に応じ馳せ参じましたよっと。議長さん、久しぶりやな!」
「うむ。ご苦労、マキノくん。」
白髪交じりで鷹のような目、一段と迫力のある男だった。
察するにこの男があの生きとし生ける伝説、ギアル・ガンドだろう。
数多の戦場を超え、円卓会議において20年もの間議長を務め続けている、事実上の国家元首だ。
「それで、その隣のお方がかの戦姫殿で間違いないな?」
「…元四大英傑、戦姫アイラ・フォード。召集に応じ馳せ参じました。お会いできて光栄です、ガンド議長。」
「よく私の召集に応じてくれた。感謝する、フォード殿。」
こういう場はなかなか苦手なので、挨拶は手短に済ませる。
にしても、私なんかがこの場に呼ばれた理由はなんなのだろうか。
「んで、議長さん。ウチだけやなくてなんでアイラまで呼び出したんや?めんどくさい前置きとかなしで、さっさと本題にいこや。」
「ならば率直にいうが、クーゲル王国がヘルエ帝国に対し宣戦布告した。」
は?
何を言って…
「それが10日前のことだ。現在ではすでに王国軍による侵略が開始されている。この件に関して何か知っていることはないか、フォード殿。」
「…いえ、何も。」
動悸が激しくなる。
何で今更帝国に侵略なんて…。
そもそも今の王国は四大英傑の半分を欠いている。
それに加えて白銀は防衛線にしか参加しないから、実質稼働できるのは一人だ。
そのような状況で戦争を仕掛けるなんて、自殺行為だ。
ヘルエ王国にも英傑に匹敵する人物はいる。
それなのに行動を起こしたということは、なにか大きな目的があるのだろう。
「んで?あんたらはアイラを疑ってるん?」
「いいや、それはない。フォード殿は濡れ衣を着せられて罪人となったということは、すでに調べがついている。むしろこの国に戦姫がいることは、利益になる。」
「そら結構やな。ほなウチはいったんここでお暇させてもらうで。」
リアは突然くるっと後ろを向き歩き出す。
その小さな体からは想像もできないほどの殺気が放たれている。
「り、リア?どこにいくの?」
「故郷に帰んねん。家族が危ない目に遭ってるんならはよ帰らな。」
「マキノくん、待ちたまえ。話はまだ終わっていない。」
リアが顔を議長に向ける。
これまで一度も見たことのない激しい怒りの表情だ。
「我らラント共和国は古き盟友の要請に応え、帝国軍の救援に出る。」
「それって…」
「ああ、いまこそ王国軍を蹴散らす時だ。」
ちょっと急展開すぎたかもしれません。




