二人の正体
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明国の国境付近では、セリスとレイがある人物を待ち構えていた。
「もうすぐ、ここに来るはずだ」
「風国から来る重要人物ね……。いったい誰かしら?」
「わからないか?君は会ったことがあるはずだぞ?」
「もう思わせぶりな言葉はいいわよ?これから会うのだから誰か教えなさいよ」
「仕方ないな……」
◇
明国の国境を越えた先、トルシュの街の入り口にアイ達の馬車は来ていた。
「……あれだな。ちょっと待ってくれ、そこの青い馬車」
「何か?」
「中にいる人物に話がある」
「はい……?」
「これで今はいいか?」
レイはそう言うとバッジを見せつけ、封筒を懐から取り出した。
「ああ、神官様でしたか、それでは……」
◇
馬車から降りた三人は、セリスとレイと対面していた。
「急に歩みを止めてすまないが、急用でね。黄色の神官レイだ」
「……レイ?確か?クロアが話していた人にそんな人がいたね」
「そうだろうな……クロアは元気か?」
「さあ最近会ってないから……どうだろうね?
ここで待ち受けてるってことは私たちに何か用があるってこと?」
「アイさん、お久しぶり」
「あ、セリスさん?久しぶりー、元気してた?」
「まあ、それなりにね」
「……あの方達、僕たちに何の用なんですかね?」
「あの二人は誰だろう?」
「神官様ですよ。あの胸に付けているバッジを見てください。
今輝く衣装は着られていませんが、お二人方とも神官様のようですよ?」
「なるほどね。それにしても、あの黄色い神官様は相当できるね?」
「確かに何か、異様なオーラを感じますね」
◇
「……こちらはそちらの情報を掴んでいる。
そちらが持っている情報をどうか教えてほしい。少しだけ時間をくれないか?」
レイはそう言うと、封筒を懐から取り出しアイに手渡した。
「なるほど?取引ということね?」
「少ないが、今はそれでどうだ?」
「時間はあまりないけど、とりあえず話しを聞くだけならいいよ?」
「二人だけで話がしたい」
「え?ああ、他人に聞かれたくないってことね」
◇
レイとアイは近くのカフェに入って向かい合い話し始めた。
その間、連れの三人は店の外で待っていた。
「急に呼び止めて、すまないと思っている」
「そうだね?私にもやらなければならないことがあるからね?
あ、もしかしてその事情も知っちゃってるの?」
「もちろんそうだ。だからあの場所で待ち伏せていた」
「……それで?一体何を知りたいの?」
「ボスの正体だ」
「ふーん、ここまでわかってるのにそれは知らないんだ?」
「裏からの情報でもそれだけは掴めなくてな。
限られた人物しか正体は知らされていないということだった」
「それで私に聞きたいってわけか。
……ところでさ、レイさんはどちら側の人間なの?」
「どちらにもついていないが?」
「クロアみたいなこと言うんだね?本当に協会の人間じゃないと証明できる?」
「それは中々難しいな。神官のバッジ、組織のバッジ、両方持ってはいるが……。
この二つを持っていることでその証明にはならないか?」
「まあ難しいね。……そうだ能力を使ってもいい?」
「いいぞ」
アイは青☆体感視の能力をレイに発動した。
「……なるほどね。
でも話したら、情報を協会に漏らす可能性もゼロではないし……」
「じゃあボスが今いる居場所を教えてくれ。それだけでも十分だ」
「わかったけど……。メリットは?私にとっての。
あと聞きたい理由。それを教えてくれないと話せないかな?」
「単に正体が知りたいからじゃダメか?」
「うーん、さすがにそれは理由としては弱いかな」
「それとメリットは……。
そうだな、聞きたいことはなんだ?俺が知っている情報なら教えよう」
「そうだね……。じゃあ協会の裏の話とか知らない?誰も知らないような」
「それならいくつか話せるかもしれない」
「じゃあそっちから話してよ。それで満足出来る内容だったらこちらも話すよ」
「わかった、それで条件を飲もう」
……そして数分後、互いの情報の交換は成立した。
◇
「協力するんですかね?アイ先輩はあの人に?」
「協力というより、たぶん情報の交換だと思うよ?
アイさんはああ見えて駆け引きがうまいからね」
「そうですよね……。少なくとも僕たちの出る幕はなさそうですね」
「……ところで君たち?見たところ新米占い師のようだけど?」
「は、はい。そうですけど?」
「私のことを知っている?功国の白の神官セリスというんだけど?」
「……すいませんが、全く存じ上げません」
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アイからボスの情報を得たレイは、セリスと共にボスのいる建物の前に来ていた。
「本当にこの場所にいるのか?さすがに嘘は言っていないだろうが」
「どうやらそのようみたいね?
一般人に紛れているけど、周りには組織の関係者がたくさんいるわ」
「わかるのか?」
「まあね」
「そうか……だが悪いが、ここから先は一人で行く。入り口で見張っていてくれ」
「そうよね……。もし何か危険な事でもあったらどうする?」
「そうだな、やむを得ない場合は能力を使用してくれ。
それでも対処出来ないときは逃げても構わない」
「そう……できれば能力は使いたくないものね」
◇
レイは一人、ボスがいるという建物へと入った。
すると入口から入るや否や、組織の男がレイに手招きをした。
「こちらでボスがお待ちです。どうぞレイ様」
「なるほど、すでにこちらの行動はお見通しってことらしいな」
◇
入口から少し歩き、黒い扉を開けるとそこにはボスらしき人物が椅子に腰かけていた。
「……やっと会えたな。その仮面は外したらどうだ?
組織のボスといわれているらしいが?正体はもう聞いたんだが」
「そうなの?でもその情報が本当に当たっているかはわからないわよ?
私は誰にも素顔を見せたことがないもの?」
「生まれてこの方ではないだろう?
いや……それでももう、自分の中で全てがすっきりしたからいいんだ」
「そうなの……。ところでどうして私の正体が気になったのかしら?」
「ただ、知りたかっただけだが……悪いか?」
「いいえ別に……。それでわざわざこんなところまで来て聞きたいことは?」
「率直に聞こう……。大神官の正体、知っているんじゃないのか?」
「さあね?」
「未来予知の能力を使えば、容易い事だと思ったのだが?」
「そう?あなたが能力の全てを知っているとは思えないけど?」
「見えるらしいじゃないか?
近くにいる人物の未来を見れば、正体は容易くわかるんだろう?まるでそこにいるかのように」
「そうかもしれないわね?」
「……3つある」
「何が?」
「組織のボス自身が大神官という説と、大神官は最初から存在していない説」
「なるほどね。どうやらなかなか頭は切れるようね?なぜそうなると思うの?」
「情報を得ていくと、不可解な点がいくつかあった」
「ふーん……?」
「まず大神官の情報が全く得られない。世界中のどこを探してもだ。
それについては協会の規制によって何とでもなるかもしれない」
「そうね」
「でも大神官のいるとされる明国の中心部にある本部。
数日間内部を探っても、影すら残されていなかった。そしているとされる噂すらなかった。
世界の協会の支部もくまなく探して見て回った。だが情報は皆無だ。
世界にはこれだけ多くの人間がいるのに、一人も知らないことがあるか?」
「あるんじゃない?本当に一切の外との交流を禁止して……。
ひっそりと生きている人はいるかもしれないわよ?」
「蛇国ならあり得るかもしれないが、俺はそんな話は聞いたことがない」
「そうなの?それで先ほどの2つの可能性を見出したと?」
「そうだ。見つからないのではなく……そもそもいない。
……もしくは目の前の人物が大神官ということだ」
「まあ面白い考察だこと……。それで……最後の一つというのは?」
「完全に理解不能な説だ。大神官自身、自らが気付いていないパターンだ。
もしくは一人にもう一人の人格が宿っているとか。
とにかく大神官自身の存在が、どこか別にいるという説だ」
「そこまで考えられるだなんて、まあ面白いことね」
「そうだろう?それでそろそろ教えてくれないか?
俺の話はこれで終わりだ。知っているんだろう?」
「それで……真実を教えたら私にメリットはあるの?」
「メリットはあるさ。俺が……何でも協力することを約束しよう」
「そこまでできるのなら、考えてあげましょうかね?」
「本当か?」
「じゃあ教えてあげましょうか?正体を……こっそりとね」
「……」
「でも残念ながらあなたの考察はすべてはずれ。答えはもっとシンプルだったのに」
「どういうことだ?」
「こういうことよ…………」
ボスはレイに大神官の正体を小声で話した。
「なるほど……そういうことだったのか……」
「この情報が出まわったら、この世界がどうなるかわかっているわよね?
蛇国の有名ギャンブラーさん。……いや、蛇国の有名シーフさん?」
「ああ、もちろんだ」
◇
「はあ……。ここまで来たら中の様子が気になるけど……。仕方ないわね。
サラ様とその他大勢を天秤にかけた時、サラ様が勝ってしまったのだから。
まさか組織の片棒を担ぐなんて……。いやレイは組織の人じゃなかったんだったわね……」




