青の神官マルコス
「じゃあシークスフィア協会風国支部までは私が案内するね。
どうせ場所がわからないでしょ?」
「まあ、そうですね」
もう機嫌良くなったっぽいな。
「ここから西に行くと協会風国支部があるの」
「西ですね……わかりました。場所がわかれば一人でも行けますけど?」
「そんなに一人で行きたいの?でもお目付け役の私がいないと、逃げ出すかもしれないし……」
「もう今はそんな気は全く無いですけど、牢屋はごめんなので」
「でもやっぱり不安だし、おとなしく私についてきてよね」
「はい……」
俺は神官なのに……この待遇だ。
こうなったら早くボスとやらに会って、一言言わないと気がすまないな。
「でも、その前に……。まずはその恰好から着替えてきてね?」
「ああ……」
◇
二人が西に数分歩くと、シークスフィア協会風国支部にたどり着いた。
「ここが風国支部か。随分とロルドさんの家から近いんだな」
どうやら基本的に建物は、功国支部と同じ作りらしい。
違いは青系統の宝石が使われていることか。
「じゃあ、私はこのへんで」
「え?俺一人で行くんですか?」
「そうだよ?私が行っても、神官様にすぐに会えるわけないじゃん。
青い鳥の件、よろしく頼んだよ」
「神官さんに何て言えばいいんだっけ……」
「それはさっき説明したでしょ?
何か別のことを聞かれた時は、どうにかして自分で考えてね」
「そうは言っても……」
急に情報を探れだなんて、そんな会話術は俺にはないんだが……。
「大丈夫。とても気さくで話しやすい人だからね」
「そうなんだ」
「でも逆に相手のペースに飲まれちゃいけないよ?
言わなくてもいいことは言わない、これ鉄則」
「……気を付ける」
「話が終わったら、そのあとは自由行動でいいから。後で私に内容を報告してね」
「わかった」
◇
クロアはシークスフィア協会風国支部に入り、受付の人に話しかけていた。
「あ、えーっと、神官マルコスに会いたいのですが」
「面会のお約束は?」
「えっと……。アポ無しです」
「それではまず、正式なバッジか確認をさせてください」
受付の人はクロアのバッジを確認した。
「……そうですね、功国の白の神官クロア様ですね。少々お待ちください」
「相変わらず、お堅いお役所みたいなところだな……」
クロアは小声で呟いた。
クロアはそれから、虹色のソファに座って数分待った。
「……青の神官マルコス様はクロア様とお会いになるとのことです。ではあちらにお進みください」
良かった、無事に会えるようだ。とりあえず第一段階はクリアか。
クロアは階段を上り、奥にある青白い扉を開けた。
そこには青く輝く衣装に身を包んだ、神官マルコスが座していた。
「えーっとクロアくんですね、初めまして。青の神官マルコスだ」
「初めまして。白の神官クロアです」
二人は探るように挨拶をする。
……すっごい見られてるな。
まずは相手の力を確認しておこう。クロアは青☆目視の能力を発動した。
マルコスさんの力は14893です。
なるほど……。なかなかの力がおありのようで。
どうやらこの国のリーダーとしては申し分ない力ですね。
……お、黒☆ガードが早速発動したようだな。能力は……。
マルコス、青☆凝視。10秒前。
マルコス、青☆透視。20秒前。
「どうやら、手の内を見られたくないらしいね?」
「はい……?」
ガードのことがばれたかな?
でも相手に何故能力が効かなかったのかは、ばれないはずだ。
青☆凝視を使われたら、ばれるのだろうか……?
「ちょっとばかし能力を使わせてもらったのだが、何も見えなかったよ」
「そう、ですか」
「……私は青の能力を極めている。
青の能力は全部でいくつあるか知っているかな?」
「いや、全部は知りませんね」
「現在、五つ確認されている」
意外と少ないんだな。じゃあ知っているかもしれない。
「透視、目視、手相視、凝視、体感視。
オリジナル能力を含まないと、この五つだ」
「それでしたら、まあまあ知っていますね」
「私はそのすべてを使えるんだよ」
「なるほど、さすが青のエキスパートってわけですね。……でもなぜそんな話を」
「……ただの自慢話だよ。でもね、今みたいに能力を無効化されたり、
相手の姿が見えなければ、何の力も持たない。つまり無力なんだよ」
「そうですね……」
それが青の能力の不便なところだ。
「だから覆面なんてされたら、困る困る。
君も白の神官なんだから、わかるだろう?」
「……そうですよね」
組織のことを言っているんだろうか?
「まあ無駄話はこれくらいにして……と。
ところで何の用事があって君はここに来たんだい?」
「実は、えーっと……。青い鳥の像のことで」
「……その話をどこで?」
「ちょっと、神官仲間から聞いたんです」
「そうか……。どこまで知っている?」
「すごい力を秘めたアイテムということは……」
「詳しく知りたい……。そんなとこかな?」
「話していただけると助かります」
◇
「……幸運の青い鳥。特にこの青い国では縁起の良いものの代表格だった。
街の至る所にはそのマークが溢れていき、長い間民に重宝されてきた」
「なるほど、深い歴史があるわけですね」
確かに街の色々な所で、青い鳥のマークは見たな。
「それでいつだったか、最初は軽いノリだったかも知れない。
その青い鳥の像に数十人の占い師の力を封じ込めたんだ。
この幸せを祈ってアイテムを作ろうとね。すると、どうなると思う?」
「あまりの力に壊れてしまったとか?」
「いや、その逆で力が凝縮されてしまったんだよ。そしたら……?」
「……それを使ったら、すごい力を得れるようになったと?」
「まあそういうことだ、一時的だがね。
でも不用意に使われたらあまりにも危険なので、ある場所に隠されているんだ」
「そういうことだったんですか」
「まあ今、私が言える情報はこんなところだ」
「それがどこにあるかとかは……。この国にあるんですよね?」
「確かにこの国にあるさ。
……でも例え同じ神官と言えども、その場所を教えることはできないよ」
「そうですか」
「……最近ミスティックの活動が活発化してきている。
この間も国境近くで大爆発が起きたらしいじゃないか。
用心に越したことはないのでね」
爆発事件は、もう情報が出回っているんだな。
「……そうですね」
「君を疑っているわけではないが。
やはり同じ国の信頼したものにしか教えられないよ。
その場所は今でも厳重に警備されているんだ」
「厳重に警備を……」
「……おっと、少し言い過ぎたかな。
とにかくそういうわけなんだ、満足したかい?」
「そうですね、情報が聞けて為になりました。それじゃあ俺はこれで……」
「……そう言えば、君はこの国で働いてくれていたらしいじゃないか」
「まあ……」
大抵チェンジをするだけの簡単なお仕事だったけどね。
「君のその白の能力は……。そのチェンジの能力は今皆が求めているものなんだ。
ぜひともわが国に貢献していってくれたまえ」
「はい、できる限りは」