家でみんなとわちゃわちゃする
クロアの家には、女性四人がクロアが神官になったお祝いに押し寄せてきていた。
「今日はみんなで訪ねてきちゃいました……」
「クロアが神官になったお祝いだよ」
「その服を着られるなんて偉くなったものですね。ところでどのくらいの価値があるのですか?」
「セリスさんもすごいですね……」
「ありがとう。でも何だか自分だけ悪いわね」
「そんなことないですよ、すぐにみんな追いついて神官になっちゃいますから」
「そうね、早くみんなが隣に立ってくれる事を祈っているわ」
「あの……これはお祝いの品です……」
「あ、それなら私も持ってきたよ」
続々とクロアとセリスにお祝いの言葉が溢れていく。
みんな一斉に喋るから、こちらから話し出すスキがないな。
しかしなんでわざわざ俺の家に集まるんだよ。
◇
クロアは一人、考え込んでいた。
一度状況を整理しよう。
今、俺はこの中で一人を選ぶとしたら誰を選ぶ?という選択を決めかねている。
どうやらこの後、また聞かれる状況になるらしい。俺の予感がそう言っているのだ。
前に聞かれた時はそんなの選べないと逃げ出したので、顰蹙を買った。
もちろんふざけて聞いているのはわかっている。
だが今は何故か真剣に誰を選ぶか考えている訳だ。
「……この衣装の中は一体どうなっているんですか?」
茶髪の赤紫色ローブのミアちゃん15歳。
この中で一番可愛いのは間違いない。だがエルク様好き好き病に罹っている。
「神官様のお給料はどのくらいなんでしょうか」
黒い長髪に紫色のローブのミルさん19歳。
この中で一番ちゃんとしている人なのだが、お金の事になると性格が一変する。
大人のお姉さん的魅力があり、ポテンシャルを秘めている。
「誰か、なんか食べ物もってない?ちょっと小腹がすいたんだよ」
青髪のポニテのリンさん18歳。通称青いお姉さん。
いつも元気。欠点はいつも青い服を着ていることとわがままなことだ。
あとずっと一緒にいると、話が止まらくなり疲れる。
「私、白蛇パンなら持っていますよ」
オレンジ色のローブのセリスさん19歳。通称オレンジの女。
今のところプライドが高いだけで、この世界では珍しく性格は普通なのだ。
……と、思いたかったのだが、やはりある欠点があった。でもあの事はもう忘れよう。思い出してはダメだ。
「ねえ、クロアも食べる?」
「いや、今はそんな気分じゃない」
やっぱりこの中から一人なんて選べないわ。どうしよう。
◇
「そういやみんな、最近調子はどう?」
「ぼちぼち儲かっていますわ。この街に占い師が増えたことで、別の国からくる人も増えておりますし」
「私は……まだまだ。仕事もあんまり取れないし」
「ミアさんはまだ新米ですもの、これから頑張っていけばいいのよ」
「じゃあミアちゃん、今度私と一緒に組んで仕事しよー」
「……うん」
ミアはこくりと頷いた。
「やっぱりミアちゃんは可愛いね。
でもセリスさんはいいよね、もう将来が約束されているようなもんだ」
「でも神官様でもそれなりの実績を保たないと、降格もあり得ると聞いたことがありますよ」
それは怖いな。
「そんなことはありませんよ、私もようやく白の能力に目覚めそうなので」
「そうだね。一緒に頑張ったんだもんね」
一緒に特訓していた青い人は、リンさんだったのか。
「白の能力、憧れますね。やっぱりチェンジが有名でしょうか。
あれを一度でいいから使ってみたいものですわ。そういえばこの前も……あ」
「……この前ってなんのこと?」
「な、なんでもありませんわ」
「……それにしても皆さん本当にすごいです。
羨ましいです……。神官になればエルク様とも会えるのでしょうか」
エルクが話題に出ると、皆はシーン、と静まり返った。
なんだこの空気は……。
「そういえばさ、二人は神官になってしまったから敬語使わなきゃダメなのかな」
「何だか今までと同じ風に話せないのは、少々気が引けますね」
「でもプライベートなら大丈夫だと思います……」
「私は全然普通に接してくれていいのだけれど」
「神官様がこう言っているならいいのかな」
「そうかもしれませんね」
「じゃあお許しが出たから良いってことだよねー」
なんか女子たちで勝手に盛り上がってるな。俺にも話し振ってくれよ。
◇
「そういやクロア、何一人で考え込んでいるのさ」
「いや、話を振られないからさ」
「クロア様は何か大事なお考えがあるのです」
「えーそうかなー?」
「そういや、なんでクロアはミアさんに様付けで呼ばれているのですか?」
「それは……」
「でももう神官になっちゃったから、ミアちゃんの呼び方はそのままでいいよね」
「クロア様はエルク様の味方なのでクロア様なのです……」
エルクの話題になると、その場はまた静けさを感じ始めた。
「……確か神官たちの集会みたいなものが、定期的にあると聞きましたが」
そんなものあるのか?面倒だな。
「そんなものあるの?じゃあクロアもその一員に入れるってこと?」
「そのような話は聞いたことがないけれど、クロアは何か知っている?」
「聞いたことないけど、その場が眩しすぎて目が眩みそうだな……」
「なんだかそれ自慢話みたいに聞こえるー」
「お金の大きな流れが、きっとそこには流れていることでしょう」
「エ、エルク様もそこに……」
そのあとも女子たちはクロアの家で話し合っていった。
なんだかんだ悪い気分はしないけど……家が狭い。




