コップが女の子になる能力です
「いいんですか?チャンスを三回もくれて。能力を使ってもいいんですよね?」
「この状況で使える能力があるならいいだろう。
どうせ俺は少年の能力を感知することはできない。それが欲しいから今こうしているのだからな。
だが俺が知らない能力を使われて負けるなら、せめて教えてほしいところだな。その能力を」
レイさんは交渉がうまいな。たとえ負けても、俺が未知の能力を持っていると知ることができる。
本についてはもうコピーでも取ってあるのだろう。だから負けてもほぼデメリットは無い。
そもそも凝視の能力は青の基本の能力だ。俺以外にも身に付けている人は多数いるだろう。
だからここで奪えなくてもいい。他の人から幾らでも奪えるはずだ。
一番の目的は俺に以前負けたから、勝ちたいという気持ちだろうな。
そしてあわよくば能力を得たいといったところか。
「さあ、少し考えるか?五分後に答えを聞こうじゃないか。
だがもう勝負をする事は決まっている。勝負の内容を変更する事は可能だ」
◇
クロアは五分後、そのルールを承諾した。
クロアはコップとコインに仕掛けがないことを確認する。もちろんそれを置くテーブルにも。
その後ルールの通り、目隠しをして後ろを向いた。
レイはその後すぐにコインをコップに入れ、シャッフルを始めた。
クロアには、コップが混ぜられていく音だけが聞こえていた。
そしてその音はやがて止まり、静寂の時が訪れた。
「……さあ、終わったぞ。どれだ?そのまま言い当ててくれ。
もちろん今後一切俺は何も動かさない。種も仕掛けもない。
少年が当てるだけでいい。そうすれば俺の負けだ」
「直接見ないと本当に何もしていないか、わかりませんよね」
「音でわかるだろう?」
「音を立てずに何かを仕掛けることは、いくらでもできます」
「そうか、ならどうすればいい?」
「宣言と同時にすぐに目隠しを外して前を向く。これなら大丈夫なはずです」
「よし、それでいい」
レイさん……やけに潔いな。まずはこれを発動して様子を見てみるか。
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黄☆カミングパワー
運を引き寄せる能力。勝負事で使え、力があるほど強く運を引き寄せる。
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「青いコップでコインは表」
クロアは宣言すると同時に前を向き、三つのコップを見る。
「じゃあ青を開くぞ」
レイが青いコップを開いても……そこには何もなかった。
「残念だが、何もないな。はずれだ」
違ったか……。あの能力じゃさすがにダメか。
「もちろん俺は何もしていない。他のカップを見てみろ」
クロアが赤いコップを開くと、コインが裏向きに入っていた。
「確かにイカサマはしていないようですね」
「そうだと言っただろう。能力に頼らず本当の意味での運の良さ。それを発揮できるのが勝者だ」
黄色いコップに何もないことを見せながらレイは言った。
そんなこと言って、油断させようったって……。
ん?さっきからガードが発動していた?履歴を確認する。
この能力は……。
レイ、チェンジ。1分前。
レイ、チェンジ。3分前。
レイ、チェンジ。5分前。
どういうことだ?俺の運勢を下げて当てられないようにする気か。
これだから人は信用できない……。
だが幸いにも、ガードしても相手にはガードしたことはわからないはずだ。
動揺してはだめだ、俺がガードの能力を持っていることをレイさんはまだ知らない。
「どうした?まだチャンスはある」
「……えーっと、そうですね」
「何か考え事か?」
「そうですね、お祈りをしようかと」
「なるほど、それはいい。だが手短にな」
クロアはお祈りのポーズをとる。
この間に冷静にならなくては。
向こうが妨害をしてくることは想定の範囲内だ。
チェンジを使ってくる事は予想外だったが。
「そろそろいいか?」
「はい……」
クロアは再び目隠しをして、後ろを向いた。
……なんだか変だな。
これは……。頭の中で何かが起こっている。
この映像は……いつかの記憶を思い出してきている?
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赤のコップがミアちゃんになって、目をキラキラさせて言った。
「エルク様の味方のクロア様は私の味方なのです」
青のコップがリンさんになって、元気な声で言った。
「運が良いイコール実力があるということなんだよ?」
黄色のコップがセリスさんになって、暗い顔をして言った。
「黒い扉……だわ。とても縁起が悪い」
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☆予感
これから起こることを今までの経験に結び付けて察知できる。
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◇
「終わったぞ、宣言してくれ」
あれは能力だったのか?だとしたら一体どういう意味だ?
セリスさんだけ浮かない顔をしていたけど……。
一か八か……これに賭けてみるか。
「黄色、そしてコインは表です」
クロアはそう言うとすぐに目隠しを取り前を向き、自ら黄色のコップを開けた。
中からは縁起の良い白蛇のマークが顔を出した。
その一瞬に起きた出来事をすぐに理解できずに、レイは少しの間固まっていた。
クロアも少しの間、閉口してコインを見つめていた。
「……なぜわかった?その様子じゃ能力を使ったようだな」
「はい、使用しました」
「……どんな能力か教えてもらえるか?」
「コップが女の子になる能力です」
「ふっ……」
◇
「じゃあその黒の書はくれてやる。またいつかな、少年」
相変わらず去り際は味気ない人だな。
そうだ、最後にこれを使っておこう。最初に使うべきだったが。
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青☆目視
対象者一人の占いの力の程度を見破る。
自分を基準に相手の力量を把握する。
力があるほど正確にわかる。
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レイさんの力は9427です。あなたの力は8806です。
レイはクロアにそう言うと、そそくさと去っていった。
◇
思わぬ能力で勝利を手に入れたな……。
どうやら力の数値では負けていても、実力は俺のが上らしい。
黒の書を今すぐにでも読んでおかないと。誰かに取られたりしたら大変だ。
まずはこれを読んで知識を詰め込んでおいてから……。
そのあとにシャボンの街に戻るか。
事件は無事に止められたのか否か気になるし。
まあ今のところシークスフィアは問題ないようだし、大丈夫だと思うけど。




