この人もセリスさんと同じか……。
さて無事に外に出れたわけだけど……。
シークスフィアはどうなったんだろう?セリスさんは本当に無事に逃げられたかな?
「あの、まずは情報収集をさせてもらえます?」
「何を言っているんだ。まずは街に向かって、着いたらすぐに一戦って約束だろ?」
そんな約束してないぞ。
「そうでしたっけ……?じゃあ一つだけ質問いいですか?」
「聞こう」
「シークスフィアはどうなりました?」
「シークスフィア?この近くにあるシークスフィア功国校か?」
「はい、そうです」
「……別にどうもなってないだろう。
あそこで何かあればすぐさま騒ぎになり、嫌でも情報は入ってくるはずだ」
「ですよね……」
レイさんに事件の事を言う訳にもいかないよな。
「何か心当たりでもあるのか?」
「いや、最近物騒なのでなんだか気になって」
「そうか?蛇国なんかここよりもっと物騒じゃないか。確か少年も蛇国の出身だっただろ?」
「ああ、そうでしたそうでした。捕まってて頭が混乱してました……」
そして二人は近くの商業都市カノンへ歩みを進めた。
◇
「ところで、何故俺があそこに捕まっている事が分かったんですか?」
「ええとそれはだな……」
この動揺は、何だか怪しいな。
「聞いたんだ。占い師に」
「誰にですか?」
「それは守秘義務があるので答えられないが、少年が今どこにいるか占ってもらった。
そしたら危機的状況にあると聞いたので、急いで助けに来たんだ」
「なぜ俺を?」
「……ギャンブル勝負がしたかったからな」
やっぱり生粋のギャンブルマニアですね。
しかし功国支部からの使いは誰も来ないのに……。レイさんが来るとは何か妙だな。
でもレイさんも嘘をついているようには見えないし。
仕事のことはセリスさんとゾルさん以外は、知らないだろうからな。
なんらかの事情があって、俺を救いに来れなかったとみるべきだろうか。
「何か事情があったんだろう?仕事は守秘義務があるだろうから、理由は聞かないがな」
◇
「そういえば少年はどっちの味方なんだ?」
「え?」
「ビア様派かエルク様派か」
何派とかあるんだ。そう言われると困るが。
「そうですね、どっちもあまり好みではないですが」
「そうか。俺もどちらも、どうも気に食わなくてな」
まあ、その気持ちはわかるよ。
「俺たち手を組めるかもな……」
いや、俺は嫌だよ?レイさんギャンブルマニアだし。
「どちらにつくか、これから先はそれが問題になりそうだな」
「どっちにもつかないのが気軽でいいですよ」
「そうだな、俺も今までそうやって生きてきた」
しかしレイさんはよく話すな。
◇
街に着いた二人は向かい合って話し合っていた。
クロアは周りを見渡す。
覆面はこの辺りにはいないようだから、一安心だな。
「ではレイさんがやりたがっていた、ギャンブル勝負をしましょう。で、何を賭けるんです?」
早く終わらせて、今の状況を確認しなければ。
「よし、早速やる気になってくれたか。少年はこれが欲しいんじゃないかと思ってな」
そう言うとレイは黒い本を机の上に置いた。
あれは、漆黒の黒の書。占いの書上級の失われた八巻と言われているものか。
「……まあ、欲しいですね」
本当はかなり欲しいけど、そこそこに言っておこう。
賭けようとしている気分を変えられたら面倒だ。
あれさえあれば黒の能力の事がわかって、元の世界に帰れる能力もわかるかもしれない。
「そうか、それなら良かった」
「それでこちらが賭けるものは?」
「…………能力だ」
レイは少し言い渋って小さい声で言った。
「……どういうことですか?」
「黒の能力で能力の交換ができるんだ。だから少年の能力をもらう」
「なるほど、ってそれはリスクが大きすぎるのでは?」
黒の能力の能力を受け渡す能力。エルクさんが使っていた能力か。
ということはレイさんも黒の素質を……?
「それは裏の世界じゃ、ちょっとした伝説になっている本だぞ。
その価値はとても値段がつけられないくらいの代物だ。
能力ぐらいじゃないと、釣り合わないと思うが」
「それでも能力を渡すというのは……占い師の第二の命みたいなもんですよ。
……ちなみに何の能力が欲しいんですか?」
「青の能力の凝視だ。少年は持っているんだろう?
対象者一人が発動している能力を見破る能力だ」
「まあ、持っていますけど……」
でも能力を見れる能力がないと困るな。しかし黒の書も捨てがたい。
「それがないとギャンブルをする時困るんでな。
青い人たちの訓練を何度も受けたのだが、一向に身につかなくてな」
この人もセリスさんと同じか……。
「どうだ?やってくれるか?リスクを冒さなければ何も得ることはできないぞ」
さてどうしたものか。ギャンブル勝負をすることは約束していたから避けられない。
最悪一つの能力を失うだけで……。
……いや、弱気になってどうする。勝って黒の書を得る。これしかない。
きっと能力をうまく使えば勝てるはずだ。
クロアは能力を発動した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
青☆凝視
対象者一人が発動している能力を見破る。力があるほど正確にわかる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
レイさんはガードを発動していない。これは持っていないな。
だがこちらは向こうからの能力をガードできる。これなら勝てる。
一応これも使っておこう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
緑☆直感視
対象者一人を見ることですぐ先の行動を予測する。
力があるほど正確にわかる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……じゃあ、それで」
◇
「それで一体何をするんですか?ルールは?」
「ちょっと待ってくれ、今用意する」
レイはカバンからあるものを取り出していく。
よし、直感視の通りに行動している。
これを使えば相手の先の行動がわかるから、勝ったも同然だ。
「ここに三つのコップがある。赤、青、黄色の三色だ。
これに蛇の国のコインを一枚入れてシャッフルする。
そしてコインがどのカップに入っていて、それが表か裏かというのを当てる」
なんかこの感じ見たことあるぞ。マジック的なやつで。
「わかりました」
「ただし少年は目隠しをする。完全に見えないよう目隠しをして後ろを向いてもらう。
能力を使われては、つまらないからな。
もっともそんな能力があるのかは知らないが、念のためだ。
そして俺が完全にシャッフルをしてから、目隠しをしたまま少年が選ぶ。あとは……ハンデをやろう。
三回やって一度でもこれを当てることができれば、少年の勝ちだ。どうだ?」
目隠しをするのか。そうすると青と緑の能力は使えないな。どうするべきか。