未来が変わるなんて、あの時以来なかったのに
二回目。
「私の番」
「おっと、しっかり監視しておかなくては」
ロルドは能力を見破った。
「数値は、下の選択で……3よ」
ビアはテーブルにダイスを振る。
ダイスは勢いよく、くるくると回り続け、なかなかその目が出ることが無かった。
数秒後、ようやくその動きは停止した。
「……すべて1ですね。下なので得点は逆の18点で、二倍の36点ですね」
「運がよかったわ、次はあなたの番よ」
「ちゃんと見ておかないとな」
ロルドは能力を見破った。
レイは少しの間沈黙し、天を見上げ祈るようなポーズをとる。
「数値は……下の3だ」
レイはテーブルにダイスを振る。
テーブルに投げ出されたダイスの勢いは弱く、か細く動いていく。
そしてすべての数字は一つ目に帰した。
「そんな……」
「イカサマはしてませんよ?ロルドさん、見ていたでしょう?」
「ああ、レイは能力を使用していなかった」
「信じられない、もう一度やるべきよ。今度は私が見定める」
「それはいけませんよ?一度決めたルールですから。それに規則はお互い様です。
次の最後のダイスを振る時に、見定められたらどうです?」
「次、3か18が出るなら……絶対イカサマよ」
「そうですか、でも証拠がありませんよね」
◇
三回目。
「私の最後の番ね」
「一応見ておかないと」
ロルドは能力を見破った。
「うーん……選択は上で数値は18よ」
ビアはテーブルにダイスを振る。
ダイスは規則的に回りながら、次第にその目を出していった。
まるで決まっていたかのように、六の目が揃っていった。
「すごい……ですね、二倍の36点ですね。ビア様の合計は108点……と。
どう考えてもおかしいですね」
「なにが?」
「確率です。能力を禁止しているのに最大値が出る。そしてそれを簡単に言い当てる。
それが二回も。これがどんな確率かわかりますか?」
「さあ、出ることもあるんじゃない?たとえものすごく低い確率でも」
「能力を使ったので、ビア様の負けです」
「はあ?なんでそうなるの?」
「先ほど能力を使わないと約束をしました。でも使われましたね」
「使ってないわ」
「本当ですか?」
「ええ」
「ちゃんと見ていたが、ビア様は能力は使っていませんでしたよ」
ロルドは少し興奮気味に言った。
「二人がグルなら辻褄が合います」
「今更になってそんなこと言うの?」
「じゃあ、レイが見ていたらどうだ?」
「俺は能力を見破る能力は持っていません」
「そうか」
「なので、もう一度やり直すべきです」
「そうすれば、納得するの?」
「はい、そして今すぐにしてください。すぐにダイスを投げてください。
そうしたら能力は使えないはずでしょうから」
「……仕方、ないわね」
ビアは少し沈黙して考える様子を見せたが、言葉に詰まりながら言った。
◇
四回目。
「もう一度やるのね?」
ビアがそう言うが、レイは黙ってビアを見つめていた。
「一応見ておきます」
ロルドは能力を見破った。
「……選択は上で、そうね……数値は12よ」
ビアは不安そうな顔で、テーブルにダイスを振った。
ダイスはランダムにばらけて転がり、やがてその眼を開いた。
「出目は3と4と5ですね。……なので得点が、12ですね。その二倍の24点ですね。
合計は36+36+24で、96点……と」
「……どう?納得した?」
「数値を当てられたのは怪しいですが……最高点ではないので信用できました」
「そう。なら良かった。ではレイの最後は見届けさせてもらうわ」
◇
レイの三回目。
レイは天を見上げ、祈るようなポーズをとる。
「待って、すぐにダイスを振るべきよ、公平じゃない」
「わかりました」
レイはすぐに態勢を変えて、ダイスを頭の前で強く握りしめた。
「ちゃんと見ておかないとな」
ロルドは能力を見破った。
「私もきちんと見定めるわ」
ビアは能力を見破った。
「……数値は上で18」
レイはテーブルにダイスを振る。
テーブルに放り出されたダイスは勢いがあった。
その勢いが止まると、ほぼ同時に六つの目がそれぞれ現れた。
「そんな……」
「イカサマはしていませんよ?二人とも見ていたでしょう?」
「確かにレイは能力を使用していなかった」
「能力じゃなく、別の何かをしていたでしょ?先ほどあなたが言っていた確率の話をそのまま返すわ」
「そうですか?ビア様はがっつり見ていましたよね?何か証拠はあるんですか?」
「確実な証拠はないけど……。あなたも、もう一度やるべきよ。それで公平になるわ」
「それで本当に納得できます?」
「ええ、今度は不正を見逃さない」
◇
レイの四回目。
「すぐにダイスを振って、疑わしい行動はとらないようにして」
「わかりました」
「しっかり見る」
ロルドは能力を見破った。
「絶対、何かしているはずよ」
ビアは能力を見破りながら、レイを注意深く見続けた。
「……数値は下で3だ」
レイはノーリアクションでテーブルにダイスを振る。
テーブルに放り出されたダイスはまるで仕組まれた通りに規則的に動き……。
やがて、一つ目が一つずつ出現した。
「そんな……」
◇
「私が負けるなんて……」
「じゃあ俺が勝ったので、この本はもらっていきますね。
そして本を手に入れる目的を達成したので、ビア様の護衛の仕事はこれにて終わりとさせていただきます。それでは」
言葉を言い終えると、軽くお辞儀をしてレイはその場からすぐに去っていった。
取り残された二人。少しの間沈黙の時が流れた。
「まんまとしてやられましたね」
「この借りはいつか必ず返すわ。それにしてもレイは一体どんな手を使ったのかしら?
未来では私が勝つことは決定していたはずなのに」
「さあ、なんでしょうね」
「未来が変わるなんて、あの時以来なかったのに」
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目を閉じて瞑想を終えたビアは、深いため息をついた。
「ふう……危なかった」
「レイの未来を見ることができましたか?」
「そう。そのおかげで本の内容は分かった。でも、これから忙しくなりそうだわ」
「それは一体どんな……?」
「いい?今から私が言う内容をしっかりと記しておいて。この内容はきっと役立つ時が来る」
「承知しました」
「要点だけをかいつまんで話すと……」
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黒の素質は占いの根本の力で、人の願いから生まれました。
黒の素質が最初にできて、枝分かれするように他の色が出てきたのです。
黒の能力の基本は放つ、留める、引き寄せるです。
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「今、一番大事な事は黒の能力に能力を受け渡す能力があることよ。
黒の能力で黒の能力を渡していけば大変なことになるのは明らか……。
これが蔓延すれば人々は簡単に能力を得れてしまう。もちろん占い師じゃなくても。
第二、第三のクロアが生まれてしまう可能性があるわ」
「それは楽し……いや大変な事態ですね」




