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うちの姉が最強すぎる理由~異世界修業録~  作者: 月詠 穹
新たなる世界へ
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異世界へ(7)ーエルフ領〈5〉ー(災厄の序章)


(響達が異世界へ行く7日前)

〈イクステリア王国 王都イクスフィル〉より北方山脈地帯ラストラル山麓 洞窟内


かなり広い洞窟内に数人の人影がある。

全員マントを羽織りフードで顔は見えない。

周囲に長くそびえ立つ8本の魔石があり、その内1本は真紅に輝いていた。その中に召喚魔法陣が描いてあり中央で呪文を呟いている女。

やがて呟きが終わると、女は後ろに立っていた男に話しかけた。


「終わりました、ご主人様。数日後には召喚されます」

声からして若い女性のようだった。


「ご苦労。これで念願の扉が開く。間も無くこの国に贈り物が届けられるな」

微笑みながら頷き答える男。


「はい、間違いなく。ようやく、私たちの願いが叶います」

女も微笑みながら嬉しそうに答えた。だが邪悪に満ちた微笑みだった。


「では、屋敷に帰りましょう。他の準備もありますから」

もう1人の女が促す。フードから長い耳が見えていた。褐色の肌であり見事な肢体はマントを羽織っていても隠しきれていないダークエルフ。


「いや、まだ1つ重要な事があるだろう?ナディア」

男はナディアに言い、ナディアも頷いた。


「そうでした。では私が。マリシア、此方こちらへ来て下さい」


ナディアが呪文を呟いていた女、マリシアを手招きした。


「何でしょう?すでに、準備は出来た筈ですが...」

ナディアが一際大きく聳える真紅の魔石の所にマリシアを立たせた。


「これが()()()()()()ですよ。マリシア」

優しく微笑み、マリシアの胸を持っていた短剣で貫いた。


「グッ..あ?...な、何故?、私を....」


そして、ナディアがマリシアを魔石に押した。

するとマリシアが魔石に吸い込まれていく。


「どう、し..て...キ.リアス..さ.ま...」


驚愕の表情を浮かべ、悲しそうに男の名を呼んだ。


「お前の血が必要なのだ。ハーフエルフでありながら、巫女の血を受け継いだお前がな。喜んで逝くが良い。お前の望みは叶う、必ずな」


キリアスは邪悪な笑みを浮かべ、マリシアに告げた。


そしてマリシアは魔石に完全に吸い込まれた。

すると、真紅の魔石は紫色に輝きだした。

それを確認したキリアスは背後に控えていた者達に命令した。


「戻るぞ。我々にはまだやる事がある」


マントをひるがえして、キリアスが外に向かう。

付き従う者達とナディア。


その背後では魔石と召喚魔法陣が呼応するかのように更に輝きだしていた。


深夜、隠れ家の屋敷にて今後の計画を確認し指示をだした後、キリアスはナディアを私室に呼んだ。


「お呼びでしょうか、キリアス様」


「ナディア、間も無くお前にとって積年の願いが叶う。思う存分楽しむと良い」

「はい、ダークエルフ一族と私の無念必ずや張らして参ります」

決意に満ちた表情で答えるナディア。


「そうだな。アルフヘルムには、お前にとっては憎んでも憎みくれないエルフがいたな。確か...ルシアだったか」

キリアスがそう言うと、ナディアは表情を険しくさせた。

「はい。エルフの中でも特にあの女だけは決して許すことは出来ません。あの里を出た時は力が足りませんでしたが...。今度こそは仕留めます」

(ズキン)

ナディアは答えた後、突然妙な頭痛を感じたが気にしなかった。

「うむ、今のお前であれば必ず復讐を果たせるだろう」

「ありがとうございます。これもキリアス様のおかげです。復讐を果たしましたら、直ぐにそちらにも向かいます」


「お前は頼りになる良い女だな、ナディア...」

キリアスはナディアを抱きよせて口づけをした。

ナディアはされるがまま抵抗をせず、そのままベッドに横たわる。

「キリアス様....」

「今宵も夜伽をせよ、ナディア」

「仰せのままに、主様」

キリアスはナディアの素晴らしい肢体を堪能しつつ、全く違う事を考えていた。


(ナディアの資質のせいか、あれの効き目が弱いな...。まぁ、今夜もたっぷり体内に注いでおくか...)

そして、更にキリアスは内心ほくそ笑む。

(もうすぐ、もうすぐだ。あの女も私のものになる。

このナディアのようにな....)



  ー現 在ー


【エルフ領アルフヘルム】(深緑の里)


将とカイルの手合わせが終わり、中庭には響とルシア、そして此方へ歩いて来ているエレナだけだ。


「響様。如何でしたか、将様の実力は?」


ルシアが隣で呆然と立ち尽くす響に尋ねた。


「あれが、将の本来の実力.....」


響はまだ衝撃から抜け出せない様子で、言葉が続かない。


「カイルは魔力で身体強化はしていませんでした。だからと言って、手加減はしていません。お互いに剣術のみの勝負でしたね」


ルシアが説明を補足する。


「私も間近で見ていましたが、正直驚きました。流石、真様と凛様のご子息です」


エレナが響達の側に来て感想を述べた。


響は2人の言葉を聞きながら、今までの将との稽古を思い返していた。

ここ最近、約2年間将とは朝稽古しか一緒に修練していない。

ましてや夕方から夜間は殆ど顔を合わせてもいなかった。

響は将があの騒動以降、稽古の時間を減らしたと思い込んでいた。だからこそ、毎朝稽古に誘ったのだ。

少しでも、修練に自ら進んで行っていた頃の将に戻って欲しかったからだ。

だが今見た将は、2年間修練を怠った者の動きではない。


「私の思い違いだったのでしょうか?てっきり将はもう武術を、剣術をしたくないのかと...」


響の独り言の様な呟きにエレナが答える。


「それは違います。将様は2年間自分なりに考え悩みながらも、修練は続けていた筈です。きっと...」


エレナに顔を向け響は尋ねた。


「では、私との朝稽古の時の将は何だったのですか?先程の動きとは別人の様でした」


「恐らくですが、響様の体を心配なさっていたのでは無いでしょうか?」


「え?私を....?」


エレナの言葉に驚く響。

更にエレナは推察を語る。


「将様が本気になれば、響様も相応の対応をする事になると思われたのでは?だから稽古では敢えて、響様の指導を受け続けていたのではないかと....」


響はエレナの答えを聞き両手で顔を被い下を向いた。


「...今頃..そんな事言われても、私..」


エレナとルシアには、響が頬を赤くしているのはバレバレである。


「大切にされていますね響様、嬉しいですか?」


先程の意趣返しなのか、エレナがニヤニヤしながら尋ねる。


「ちょっと、エレナ。失礼な事言わないの!」

ルシアが慌てて注意する。が、


「私と響様は家族同然ですから、これ位問題ありません!」

ドヤ顔で言いきるエレナ。


「貴女ねぇ...。響様、すみません。エレナには後で厳しく言い聞かせますのでお許し下さい」


ルシアが心底呆れ、響に謝罪する。


「いえ、元はと言えば私の勘違いが原因ですから。気にしないで下さい」


顔を上げて響はルシアに答え、響の言葉を聞き更にドヤ顔のエレナに意味深に微笑みながら、こう言った。


「エレナさん。久しぶりに手合わせ、しませんか?」


「ハァ...分かりました。お相手致します、響様」


エレナはため息をついて、諦め顔で承諾した。








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