第十四楽章【眩暈】
―秋。
夏休みが明け、マキの学校ではコーラスコンクールの準備が始まった。
生徒 「伴走者はマキちゃんだよね?」
生徒 「もちろん!異論ないよ~!」
生徒 「全員賛成でーす」
マキ 「頑張るね」
生徒 「もう、マキちゃんが伴奏だったら優勝間違いなしだよね~」
生徒 「うんうん!」
カレン 「ふふ、楽しみだ~♪」
生徒 「指揮者は誰にするー?」
生徒 「ん~難しそうだよねぇ・・・リーダー的な感じでまとめなくちゃいけないし・・・」
生徒 「・・・それに、伴奏との息が合わないとだし・・・ここは・・・!」
生徒たちはカレンのほうを見た。
生徒 「カレンいきなよ!」
生徒 「うん、私もそう思った!」
カレン 「え!アタシ!?」
生徒 「確かに、マキちゃんと仲良いから息ぴったりだね!」
高野 「おーおーカレンさん。どうするんだ?」
カレン 「ちょっ、ちょっと高野!やめなさいよっ」
高野 「動揺してんなー(笑)」
生徒 「カレンならできるよ~!ムードメーカー的なとこあるし~!」
生徒 「うんうん!お願いカレン~!」
カレン 「マジかぁ・・・全然考えたこともなかった・・・」
少し照れながらも困惑して顔を下げると、マキが肩に手を置いて言った。
マキ 「私が支えるから大丈夫。・・・一緒にやろう」
カレン 「マ・・・マキちゃん!」
生徒 「いぇーい!」
生徒 「よっ!青春!」
カレン 「も、もう~!みんなもちゃんと歌頑張ってよ~?」
生徒 「任せろっ☆」
生徒 「優勝狙うぞ~!」
高野 「もうあんまり本番まで時間ないぞ」
生徒 「大丈夫だ高野!放課後の部活はしばらくお預けだからな!」
高野 「は!?マジかよ!」
生徒 「放課後は毎日練習!朝も早く来て練習!他のクラスもそうするらしいからな」
マキ 「早く譜読みをしないと・・・」
カレン 「マキちゃんは空耳で弾けそうだけどね(笑)」
生徒 「曲を決めたらパート分けもしなきゃいけないし、先生たちに聞いてもらう時間も作らないとだし、色々やることがあるね~」
生徒 「頑張ろう~!」
―放課後・・・
カレン 「おじゃまっしまーす!」
マキのお母さん 「はーいこんにちは♪今、飲み物持っていくわね~!」
カレン 「ありがとうございますっ!」
マキ 「ちょっとピアノ弾いてみようか」
カレン 「え!聴きたい!」
二人はマキの部屋へ向かった。
♪~
♪~♪♪♪♪~~♪♪♪~♪~
マキはコーラスコンクールで歌う曲の伴奏を弾き始めた。
カレン 「おお!」
♪~♪~♪♪♪~~
ピアノの演奏が続く中、下の階から誰かが上がってくるのを感じた。
ルイさん 「今日も弾いてますね~♪」
マキのお母さん 「ふふ」
♪♪♪~♪~
カレン 「ルイさん!」
ルイさん 「やぁカレンちゃん。久しぶりだね!」
マキのお母さん 「はい、これ3人でどうぞ~」
カレン 「わ~い!」
ルイさん 「ありがとうございます!」
マキは弾きながら一瞬、自分の母親と目を合わせたが、すぐに楽譜に目をやった。
♪~~♪♪~~~
カレン 「おお~」
マキ 「軽く弾いてみた・・・ルイさんいらっしゃい」
ルイさん 「お邪魔します♪」
カレン 「さすが一発で弾けるのね~!練習要らなさそう!(笑)」
マキ 「弾くだけならできるけど、合唱ならみんなと息を合わせないといけないから、少し違うかも」
カレン 「なるほどぉ!そうかもね、私も頑張らなきゃ!」
ルイさん 「コーラスコンクール、やっぱりマキちゃんが伴奏なんだね!」
マキ 「はい」
ルイさん 「指揮者は?」
カレン 「・・・(苦笑)」
マキ 「ここにいるよ」
ルイさん 「え・・・カレンちゃん!?」
マキ 「当たり。」
カレン 「なぜか私が・・・。やるのはいいんだけど、私でいいのかなー」
ルイさん 「いいじゃないか!二人でクラスをまとめたらいい感じになりそう!」
マキ 「クラスのみんなから推薦されてる訳だし、自信もっていいと思うよ」
カレン 「う、うん・・・色々教えて~(泣)」
マキ 「うん」
ルイさん 「でも二人ならこうやって放課後に打ち合わせとかしやすいね!」
カレン 「ふふ、確かに」
マキ 「クラスのみんなも優勝するぞって気合入ってるみたいだから、頑張ろう」
カレン 「うん!」
ルイさん 「いいねぇ、青春だねぇ」
カレン 「ふふ」
マキ 「とりあえず譜読みしようか?」
カレン 「そうだね!ルイさんも教えて~」
ルイさん 「お・・・オッケー!」
カレン 「歌う曲は決まったけど、パートとかごちゃごちゃになりそう・・・」
ルイさん 「ひとつひとつ見ていけば大丈夫だよ、落ち着いて」
カレン 「そうですよねっ!よし、頑張るぞ~!!」
ルイさん 「応援してるよ!」
マキ 「それじゃ、まずソプラノから・・・」
カレン 「あぁ、待って・・・ボールペン借りていい?」
マキ 「ん。」
―マキが引き出しから黒と灰色のデザインのボールペンを取り出した瞬間、眩暈がした。
ルイさん 「マキちゃん、大丈夫?」
マキ 「あ・・・大丈夫です。いきなり立ち上がったからふらついただけだと・・・」
カレン 「ごめんね、大丈夫?」
マキ 「平気だよ。はい」
ルイさん 「・・・。」
マキ 「・・・それじゃ、とりあえずメロディー追っていこうか。まずは・・・」
―二時間後・・・
カレン 「そろそろおいとまするね~」
マキ 「うん、また来てよ」
カレン 「マキちゃんのおかげで、予習できたから少し安心できた!」
マキ 「良かった。練習頑張ろう」
カレン 「うん!」
マキ 「送ってくよ」
カレン 「ありがとう!・・・あ、ルイさんはまだ帰らないの?」
マキ 「なんか用があって来たんだよね?」
ルイさん 「ん?あぁ・・・用事はもう済んだんだ。お母さんのお使いに行ってからマキちゃんの部屋にあがったからね」
マキ 「またお使い頼んだんですか・・・やめろって言ったのにすみません」
ルイさん 「いいんだよ。・・・ごめんカレンちゃん、もう少し残っていてもいいかな?」
カレン 「はい!じゃ、また今度」
ルイさん 「バイバイ~!」
マキ 「ちょっとカレンを送っていくので、家をお願いします」
ルイさん 「了解♪気を付けてね!」
―マキはカレンと共に、玄関を出た。