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戦火の余温(E1-4)  作者: 闕恆遠


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第1章:1.1 ネオン街の影

2026年4月19日、この何変哲もない日曜日の午後、空は重厚な暗雲に覆われ、曇り時々雨を思わせる澱んだ青灰色をほのかに帯びていた。


空気には少しまとわりつくような湿気があったが、それでもこの街で最も賑やかな一角の喧騒を遮ることはできない。


西門町の中心エリアに位置する、おしゃれな雰囲気のカフェレストランの窓際にある木製の長いテーブルを囲んで、四人の女性と一人の男性が座っていた。


ここは歩行者天国の喧騒から離れた二階にあり、精巧なドライフラワーが天井から吊り下げられ、柔らかな暖色の光と織り交ざり合って、外界から切り離されたような静寂感を醸し出している。


テーブルの中央には、切り分けられたばかりの上品なストロベリーケーキが置かれており、真っ赤なイチゴと真っ白なホイップクリームが、ろうそくの消えた後の余温の中でひときわ美味しそうに輝いていた。


悦清禾は少しうつむき加減になり、そっと手を上げて絶妙な長さに切りそろえられた前髪を整えた。


その黒髪のミディアムヘアが白い首筋に沿って垂れ下がり、毛先には緩やかなカールがかかっていて、整った卵型の顔立ちをより一層引き立てていた。


願い事をしたばかりの彼女は、目元や口元に淡い笑みをたたえたまま、その視線をまっすぐに向かい側に座る男性へと向けていた。


闕恆遠は微笑みながらケーキ用のプラスチックナイフを受け取り、その落ち着いた身のこなしの瞳には、そばにいる四人の女の子たちに対する溺愛と優しい諦めが満ちあふれていた。


物心ついた頃から、この四人の女の子たちの誕生日のたびに、彼ら五人が顔を揃えないことは決してなく、それはすでに互いの間における暗黙の鉄則となっていた。


「清禾、」


「誕生日おめでとう、」


「どんな願い事をしたの?」


闕恆遠はケーキを切り分けながら、その優しい声でそっと尋ねた。


悦清禾の隣に座っていた伊凝雪は、この時軽く体を横に向けていた。


その黒く艶やかな長い髪はきれいに高いポニーテールに結ばれており、彼女の動きに合わせて空中に生き生きとした弧を描く。


伊凝雪の白い顔立ちがポニーテールに引き立てられてどこかクールで近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、この時彼女の手にはミラーレス一眼カメラが握られており、レンズは誕生日の主向けられ、口元には非常に珍しい温かな笑みが浮かんでいた。


「秘密、」


「口に出したら叶わなくなっちゃうから。」


悦清禾はふふっと微笑み、その声はまるで弦をなでる春風のように柔らかかった。


カシャリと、シャッター音が軽やかに響き渡り、この美しい一瞬を永遠に切り取った。


千慕羽はそれとはまったく異なる魅力を放っていた。


彼女は背もたれにどっかりと体を預け、滝のような美しい大波ウェーブのロングヘアをシャンパン色のワンピースの上に無造作に散らしている。


同じく非の打ちどころのない美しさを誇るキャンパスのアイドルらしい顔立ちには、この時興奮の色が浮かび、輝く大きな瞳が三日月のように細められていた。


彼女は手をパチパチと叩きながら、闕恆遠を急かした。


「恆遠、」


「質問ばっかりしてないでよ、」


「早く一番大きなケーキを清禾にあげて、」


「さっきからイチゴをじっと見つめて、」


「目がキラキラ輝いてたんだからさ。」


一方、長いテーブルのもう一方の端では、玥映嵐が静かに座っていた。


彼女は今日、上品で優しいハーフアップにしており、耳元にハラリと落ちた数本の髪が、その穏やかで控えめな気品を一層引き立てている。


玥映嵐の澄んだ瞳がふわりと細められ、淹れたての温かい麦茶の入ったグラスを闕恆遠の手元へとそっと滑らせた。その手つきは、この穏やかなひとときを驚かせまいとするかのように柔らかかった。


「お茶でも飲んで、」


「今日は外がけっこう蒸し暑いから。」


玥映嵐はしっとりと優しい声でそう言った。


これが彼らの日常だった。


幼い頃から一緒に育ち、数え切れないほどの春夏秋冬を共にくぐり抜け、性格はそれぞれ違うものの、誰もが世にも美しい容姿を持つ四人の女の子たちの心には、皆同じ一人の男性が住んでいた。


そして闕恆遠もまた、常に最も頼もしい支えとなり、誰かを特別扱いすることなく、このかけがえのない絆を大切に守り続けてきた。


だが、運命の歯車は往々にして、何の備えもない瞬間に大きく狂い出す。


悦清禾がちょうどケーキを受け取り、口に運ぼうとしたその瞬間だった。


店内に流れていた穏やかなジャズが、前触れもなくプツリと途切れた。


それと同時に、頭上で温かな光を放っていた黄色のレトロな電球が激しく二度瞬きしたかと思うと、プツンと音を立てて完全に消え去った。


信じられないことに、それはこのレストランだけではなかった。


巨大なガラス窓の外を見下ろすと、本来ならネオンが眩しく輝き、華やかな看板が立ち並んでいた西門町の街並みが、一瞬にして闇へと呑み込まれていた。


萬年ビルディングの外壁モニターも、楽声影城のLED看板も、さらには道沿いのアパレルショップのスポットライトも、すべてが同じ千分の1秒のうちに光を失った。


強力な冷房が効いていたはずの店内は、ほんの数秒のうちに澱んだ空気が立ち込め、息苦しさを増していった。


「どうしたの?」


「もしかして停電?」


千慕羽は動きを止め、振り上げていた腕を下ろすと、怪訝そうな表情で窓の外へと視線を向けた。


闕恆遠は眉をひそめ、本能的にポケットからスマートフォンを取り出した。


だが、画面が点灯した瞬間、そこに表示されていたのは見慣れたフルアンテナではなく、冷たい「圏外」の文字であり、時刻さえも奇妙なことに午後三時十四分でピタリと止まり、動かなくなっていた。


「凝雪、」


「君のスマホは電波ある?」


闕恆遠は低い声で尋ね、その口調には普段あまり見せない深刻さが混じっていた。


伊凝雪はカメラを下ろし、自分のスマホを操作してから、首を小さく横に振った。


その高いポニーテールが揺れる。


「ううん、ない、」


「緊急通報すら発信できないわ、」


「普通の基地局の故障じゃないみたい。」


彼女の冷静な声には、この時不吉な予感が滲んでいた。


悦清禾もフォークを置き、手のひらにうっすらと汗が滲むのを感じながら、無意識のうちに闕恆遠のそばへと体を寄せ、前髪の下の瞳を不安で揺らした。


「恆遠、」


「空を見て。」


玥映嵐の声は相変わらず穏やかだったが、その中に抑えきれないわずかな震えがあった。


彼女の白い指差す先は窓の外の夜空……いや、今はまだ午後三時を過ぎたばかりだというのに、空はまるで墨を流し込んだかのように真っ黒に染まっていた。


全員が彼女の指し示す方向を見上げると、厚い雲に覆われていたはずの空が、いつの間にか大きく引き裂かれているのが目に入った。


不気味な、幽紫色の光を放つオーラが、沸騰する液体のように雲の間でうねりを上げている。


それは決して雷などではない。


光には微かな音もなく、ただ静かに、そして冷徹に台北の上空全体を覆い尽くしていた。


それに続くように、大地が震えるほどの重苦しい低音の轟音とともに、言語を絶するほど巨大な鉄の怪物が、その禍々しい姿を紫色の光の向こうからゆっくりと現した。


それは巨大なハチの巣のような形状をした宇宙母艦であり、外装には暗金色の金属光沢が流麗に輝き、無数の幽青色のエネルギーラインがその表面で縦横無尽に交錯し、息が詰まるほどの圧倒的なテクノロジーと圧迫感を放っている。


その母艦はあまりにも巨大で、ほんの先端が顔をのぞかせているだけで、西門町の上空にあったすべての光を完全に遮り隠してしまった。


「嘘でしょ……」


「あれはいったい何なの?」


千慕羽の顔色が一瞬で真っ青になり、普段は活発な彼女がこの時、長テーブルの縁をきつく掴み、力を入れたせいで爪の先が白くなっていた。


店内にいた他の客たちもようやく事態を飲み込み、押し殺したような驚きの声は、やがてヒステリックな悲鳴と泣き声へと変わっていった。


人々は狂ったように階段の方へと殺到し、椅子やテーブルが倒れる耳障りな音が至るところで響き渡った。


「恆遠、」


「どうすればいいの?」


悦清禾は闕恆遠の袖をぎゅっと掴み、極度の恐怖に体が小刻みに震えていた。


闕恆遠は大きく息を吸い込み、早鐘を打つ心臓を無理やり落ち着かせた。


目の前の光景は彼の世界観を完全に覆すものだったが、今、自分はこの四人の女の子にとって唯一の頼みの綱なのだと彼は自覚していた。


「慌てないで、」


「みんな手をつないで、」


「凝雪は一番後ろに、」


「慕羽と映嵐は真ん中、」


「清禾は僕のすぐ後ろについて、」


「すぐにここを出るぞ、」


「外の様子を見てから判断しよう。」


闕恆遠の力強く断固とした声は、まるで目に見えない力を与えるかのように、パニックに陥っていた四人の心を少しだけ落ち着かせた。


伊凝雪はすぐにミラーレス一眼カメラを体に掛け、千慕羽の手をしっかりと握りしめた。その瞳は暗闇の中でも圧倒的な決意に満ちていた。


玥映嵐もまた千慕羽のもう片方の手を固く握り、五人は一列に素早く並び、我先にと逃げ惑う群衆を避けながら、レストランの狭い非常階段を通って一階へと避難した。


この時の西門町の街頭は、すでに地獄絵図と化していた。


かつては人で溢れ返っていた漢中街の歩行者天国は、狂ったように逃げ惑う群衆で埋め尽くされている。


空に浮かぶ巨大母艦がゆっくりと回転を始め、そのハチの巣のような無数の穴から、緑色の蛍光を放つ無数の生化カプセルが流星雨のように、台北市のあちこちへ向かって密に降り注いでいった。


そのうちのいくつかのカプセルが、耳障りな風切り音を伴いながら、西門町の方向めがけて一直線に落下してくる。


ドーンというすさまじい轟音が響き渡った。


直径がゆうに三メートルはある巨大なカプセルが、すぐ近くにあるアパレルショップの屋根を激しく突き破り、無数の鉄筋コンクリートの破片や飛び散ったガラスが散弾銃のように周囲へと降り注いだ。


路上にいた人々はさらに悲惨な悲鳴を上げ、誰もが前後不覚になって逃げ惑い、あらゆる場所で押し合いや踏みつけが起きていた。


政府軍や警察がまったく動きを見せず、全体の指揮系統が半テンポ遅れているこの数分間のうちに、災難はすでに全面的な広がりを見せていた。


闕恆遠が四人を連れてレストラン一階の出入り口へと飛び出すと、正面から押し寄せてきた群衆に危うく引き離されそうになった。


「しっかりつかまってろ。」


闕恆遠は振り返って大声で叫び、全身の力を振り絞って悦清禾を自分の胸元へと引き寄せ、その体で周囲の狂ったように押し合う通行人から彼女をかばった。


悦清禾の全身が闕恆遠の胸にぴったりと密着し、耳元には力強い心拍音が響き渡り、乱れていた心がわずかに落ち着きを取り戻した。


その時、すぐ近くで墜落した生化カプセルから、歯が浮くような金属の軋む音が突然響き渡った。


頑丈だった外殻が花びらのように四方へ開き、鼻をつく生臭さを伴った濃い緑色のドロドロとした液体が中から溢れ出してきた。


それに続いて、一匹、また一匹と……冷たい金属光沢を放つ無数の鋭い爪が、その粘液の塊の中から猛然と突き出してきた。


それは流線型の外骨格を持ち、体つきはヒョウのようでありながら、それよりもはるかに巨大で禍々しい異形の生物だった。


それらの頭部には目はなく、ただ無数のカミソリのような歯が並んだ巨大な口があるだけで、全身には強酸性の粘液が滴り、尾の先にある鉤爪のついた尻尾が空中で激しくうねっていた。


キィィィッ!


耳を貫くような鋭く甲高い咆哮が、その怪物の口から放たれた。


次の瞬間、その生化兵器は残像を残すほどの速さで駆け抜け、街で逃げ遅れた一人の行人めがけて猛然と飛びかかった。


鮮血が瞬く間に飛び散り、悲鳴はプツリと途切れた。


この光景を目の当たりにし、千慕羽は声を漏らしそうになり、玥映嵐は自分の口元を両手で覆い、目に涙をいっぱいに溜めた。


「行くぞ。」


「路地裏に入るんだ。」


「大通りを歩いたら、あの怪物たちの格好の標的になる。」


闕恆遠は目を血走りさせ、あの怪物たちが優れた聴覚と視覚を頼りに開けた路上で暴虐の限りを尽くしていることにすぐ気づいた。


彼は一瞬の躊躇も見せず、悦清禾の手を引き、後ろに続く伊凝雪、千慕羽、玥映嵐を引き連れて急旋回し、西門町で最も入り組んだ狭い峨眉街の路地裏へと飛び込んだ。


この時、どんよりと暗くなった空から、ぽつりぽつりと細い雨が降り始めかけた。


冷たい雨粒が黒焦げになったアスファルトの路面を打ちつけ、そこかしこに放り出された高級ブランドのバッグや飲み物のカップ、そして誰の物ともわからない靴を濡らしていく。


遠くの防空警報がこの時になってようやく半テンポ遅れて鳴り響き、その痛切で物悲しいサイレンの音が台北の上空にこだました。しかし、地球の科学をはるかに超越した異星からの侵略を目の前にしては、それはあまりにも無力で絶望的な響きにしか聞こえなかった。


五人は狭い路地の間を夢中で駆け抜けた。


冷たい雨が汗と混ざり合い、悦清禾の前髪を額に張り付かせ、伊凝雪の高いポニーテールをすっかりびしょ濡れにしていた。


前方に、普段で見慣れた派出所が見えてきた。


その赤いパトランプがこの時力なく点滅し、暗闇の中での唯一の目印となっている。


冷たい雨脚が次第に強くなり、西門町の入り組んだ路地の屋根を激しく打ちつけ、パラパラという重苦しい音を立てていた。


もともと湿気の多かった空気には、この時、強烈な焦げ臭さと正体不明の粘液の生臭さが混ざり合い、息をするたびに鈍い刃物で気管を削られているかのような痛みを伴った。


「恆遠、」


「待って……」


「足が……」


千慕羽の澄んだ声は激しい息切れを伴っており、美しい大波ウェーブのロングヘアは雨に濡れて束になり、ワンピースに張り付いて見る影もなくなっていた。


走る勢いが激しすぎたせいで、ハイヒールのヒールが地面の散らばったガラス片を踏んだ拍子にぐにゃりと曲がり、バランスを崩して水たまりだらけのアスファルトに倒れそうになった。


伊凝雪は素早く反応し、その白い腕をぐっと伸ばして千慕羽の肩をしっかりと支えた。


高いポニーテールが急停止の勢いで空中に鮮やかな弧を描き、結び目から滴る雨水が彼女のクールで近寄りがたい頬を伝い、尖ったあご先で水滴となって濡れそぼった襟元に落ちた。


「慕羽、」


「私につかまって、」


「体重をこちら預けて。」


伊凝雪の声はいつも通り冷ややかだったが、振り返って後方の路地を見つめるその涼やかな瞳には、隠しきれない焦燥の色が満ちていた。


闕恆遠はすぐに足を止め、しっかりと繋いでいた悦清禾の手を離すと、その場に素早くしゃがみ込んだ。


「慕羽、」


「そのヒールをへし折るんだ、」


「早く。」


闕恆遠は低い声でそう命じながら、自らの手も添えて力を貸した。


「でも……」


「これ、今年あなたがくれた誕生日のプレゼントなのに……」


千慕羽は下唇を噛みしめ、その美しい顔立ちは悔しさと切なさに歪み、潤んだ瞳に浮かぶ涙が雨粒と混ざり合っていった。


「バカだな、」


「今は命を守る方が先だ。」


悦清禾も同じようにしゃがみ込み、千慕羽を優しくなだめながら、わずかに震える両手でそのハイヒールの装飾されたヒール部分を思い切りへし折った。


玥映嵐は静かにその傍らに立ち、上品なハーフアップの髪から何本もの濡れた束が血の気のない頬に張り付いていた。


その澄んだ瞳は周囲の薄暗い店のショーケースを絶えず警戒し、両手でしっかりと抱きしめたバッグの中には、先ほどレストランから持ち出した未開封のミネラルウォーターが何本か入っていた。


「後ろから音がする……」


「何かが這い上がってきている……」


玥映嵐の声は雨音にかき消されそうなくらいか細かったが、その底知れぬ恐怖はそこにいる全員の背筋を凍らせた。


カサカサ、


カサカサ。


それは硬い鋭い爪がコンクリートの壁を素早く引っ掻く音であり、昆虫の口器が重なり合うような細かなカチカチという音が、さきほど通り抜けた峨眉街の路地裏の奥から響いてきた。


「よし、」


「行くぞ。」


闕恆遠は千慕羽をぐっと引き起こし、彼女の腕を自分の広い肩に回させると、もう片方の手で再び悦清禾の手をしっかりと握り締めた。


五人は土砂降りの雨の中で互いに支え合いながら、この息の詰まるような行き止まりをようやく飛び出し、西門町派出所の前へと続く通りに出た。


その派出所の前では、パトライトをけたたましく回転させたままパトカーのドアが大きく開け放たれており、その弱々しい赤と青の光が、地面に広がり続ける血の溜まりを不気味に照らし出していた。


政府や軍の対応は絶望的なほど遅く、空を見上げてもあの巨大な異星母艦のほかには、台湾空軍の戦闘機の姿は一台も見当たらない。


遠くの台北周辺の山あいから、かろうじて防空ミサイルの発射音がかすかに響いてくることもあったが、高空の幽紫色の光に飲み込まれ、一筋の火花さえ残さずに消え去っていった。


「中に誰もいないみたい……」


悦清禾はもぬけの殻となった派出所の入り口を見つめ、少しでも庇護が得られると思っていた心の防衛線が崩れそうになった。


「中に入ろう、」


「少なくとも壁があれば、あの怪物たちの視線を遮れる。」


闕恆遠は半開きになっていた防弾ガラスのドアを思い切り押し開き、四人を連れて次々と中へと飛び込んだ。


派出所のロビーに足を踏み入れた途端、鼻をつく血生臭さと、受付カウンターからひっくり返った書類の焦げた匂いが鼻腔を突いた。


床には数多くの警察無線用トランシーバーが散らばっており、その中からはザーというノイズ音と、途切れ途切れで要領を得ない中央からの指令がひっきりなしに漏れ聞こえていた。


『各員、警戒せよ……』


『これは通常の武装衝突にあらず……』


『注意せよ……』


『通常の……』


『全員、移行せよ……』


『ザー……』


混乱し、手遅れとしか言いようのないその行政命令を聞きながら、闕恆遠は心の中で悟っていた。


この街の防衛システムは、外星文明と接触したその千分の1秒のうちに、すでに機能不全に陥っていたのだ。


彼らが今、頼れるのは互いの存在だけだった。

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