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無能と追放されたお針子令嬢、神の裁縫チートで無双する〜呪われ公爵様にハグ専用服を作ったら限界突破で溺愛されました〜  作者: 月神世一


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世界一幸せなお針子令嬢。次なるミッションは『最高のウェディングドレス』!?

世界一幸せなお針子令嬢。次なるミッションは『最高のウェディングドレス』!?

ルナミス帝国とシーラン国を隔てる、荒れ狂う海。

その沖合を揺れながら進む、巨大なマグローザ漁船(通称・蟹工船)の甲板で、一人の男が死んだ魚のような目をして甲板をモップで磨いていた。

「おい新入り! 手が止まってるぞ! 借金を返し終わるまで、死んでも働いてもらうからな!」

「ひぃぃっ! も、申し訳ありません……っ!」

屈強な海の男に鞭で打たれ、惨めに這いつくばっているのは、私の元婚約者であるアルベルトだった。

アバロンの『呪われ公爵』を敵に回し、領地のすべてを物理的に腐敗させられた彼は、雇った闇ギルドへの違約金と莫大な借金を背負い、この絶望のマグローザ漁船へとドナドナされてきたのだ。

この船での通貨は『K(ケツフキのK)』と呼ばれる独自の単位のみ。地下のタコ部屋でチンチロリンに手を出してさらに借金を増やした彼が、再び地上に戻れる日は……おそらく、二度と来ないだろう。

「どうして……どうしてこんなことに……。俺が、あの時リゼットを追放さえしていなければ……っ!」

彼は冷たい海水に塗れながら、己の愚かさを呪ってむせび泣いた。

しかし、彼を慰める者は誰一人としていない。波の音と、過酷な労働の号令だけが、彼の残りの人生のすべてだった。

 ◇ ◇ ◇

そんな、元婚約者の完全なる破滅ざまぁが完了していた頃。

ポポロ村の格安アパート『ポポロ・コーポ』では、信じられないほど甘く、平和な朝が訪れていた。

「おはよう、リゼット。今日も世界で一番愛しているよ」

「ひゃっ!? ギ、ギデオン様、朝から近いです……っ!」

キッチンで目玉焼きを焼いていた私の背中から、大きな腕が回ってきた。

振り返ると、美しい銀髪をサラリと揺らしたギデオン様が、私の首筋に顔を埋めてすりすりと甘えてきている。

呪いが解け、タローマンの布が焦げる心配がなくなってからのギデオン様の『溺愛』は、完全にリミッターが外れていた。

数十年間、誰にも触れられなかった反動(タッチ飢餓)のすべてが、私一人に向かっているのだ。隙あらば抱きしめられ、手を握られ、髪にキスをされる。

「ごめん、嫌だったか? だが……君の体温を感じていないと、昨日の夜の奇跡が夢だったんじゃないかと不安になるんだ」

上目遣いで、ルビーの瞳を潤ませながらそんなことを言われて、突き放せるわけがない。

「嫌じゃないですけど……お料理中ですから、火には気をつけてくださいね」

「ああ。君に火の粉一つ飛ばさせはしない」

ギデオン様は嬉しそうに微笑むと、私の腰を抱きしめたまま、キッチンに立つ私を後ろからすっぽりと包み込んだ。

アバロン魔皇国の筆頭公爵様が、家賃三万円のアパートのキッチンで、私のお手伝い(という名のハグ)をしている。なんだか現実離れしすぎていて、思わずクスッと笑ってしまった。

「……ねえ、リゼット」

「はい?」

「俺は、本当に幸せだ。君という奇跡に出会えて、こうして君をこの腕に抱きしめられる。これ以上の幸福は、世界中のどこを探してもない」

「私もですよ、ギデオン様。大好きな服を作って、それを大好きな人に着てもらえるんですから」

私たちが、朝から糖度1000%の甘い空気を漂わせていると。

バンッ!!!

「おはようございますのーっ!! 朝からアツアツですのー!!」

「ちょっと、二人とも! イチャイチャしてる場合じゃないわよ!!」

リビングの扉が蹴り破られんばかりの勢いで開き、リーザちゃんとキュララちゃん、そして村長のキャルルちゃんが雪崩れ込んできた。

「みんな、どうしたの?」

「どうしたじゃないわよ! これを見なさい!」

キャルルちゃんがドサッ、とテーブルの上に積み上げたのは、山のような『手紙』の束だった。

封蝋には、ルナミス帝国の皇室の紋章、アバロン魔皇国の王族の紋章、果てはセレスティアの女神ルチアナ様の神紋まで押されている。

「えっ……これ、全部私宛て?」

「そうよ! 昨日の夜、キュララがゲリラ配信で『白銀のタキシードを着て呪いが解けたギデオン様』の姿を全世界に流しちゃったのよ!」

「なっ……!?」

私はギデオン様と一緒に、キュララちゃんをジロリと睨んだ。

「てへっ☆ だって、あんな神々しい公爵様の姿、配信に乗せたら絶対バズると思ったんだもん! 結果は大正解! 世界中の富豪からスパチャがカンストする勢いで飛んできたわ!」

「おかげで、わたくしの『お賽銭箱型掃除機』がパンク寸前でしたの!」

キュララちゃんとリーザちゃんがVサインを決める。

確かに、あのタキシードの輝きと、ギデオン様の超絶美形な素顔が世界にバレたら……。

「世界中の王族や神々が、『あの呪われ公爵を救った奇跡の服を作ったお針子に、私の服も仕立ててほしい!』って、ものすごい額の小切手と一緒に依頼書を送りつけてきてるのよ。ポポロ村のポストが爆発するかと思ったわ」

キャルルちゃんが呆れたようにため息を吐く。

なるほど。追放された無能なお針子だったはずが、一夜にして『世界中のVIPが喉から手が出るほど求める天才仕立て屋』になってしまったらしい。

服飾オタクとしては、色々な服が作れるのは夢のような状況だ。

「わぁっ! じゃあ、まずはルチアナ様のジャージの修繕から……」

私が手紙の山に手を伸ばそうとした、その瞬間。

バサァッ!!

ギデオン様が私を背中に庇い、手紙の山の上に漆黒のコートをバサリと被せた。

「ギ、ギデオン様?」

「……断る。彼女は、俺の『専属』だ」

ギデオン様のルビーの瞳が、威圧的に細められる。

部屋の温度が少しだけ下がり、彼の過保護スイッチが完全にオンになったのが分かった。

「彼女の美しい手は、俺の服を縫うためだけにある。どこの馬の骨とも知れん王族や神々の服など、一着たりとも作らせる気はない。たとえ世界を敵に回そうとも、彼女の時間は俺のものだ」

「ちょ、ギデオン様! お仕事ですから! それに、神様を馬の骨呼ばわりしたらバチが当たりますよ!」

「俺の神は君だけだ、リゼット」

真顔でとんでもなく重いセリフを吐きながら、ギデオン様は私を強く抱きしめ直した。

そして、フイッとそっぽを向いて、少しだけ拗ねたような声を出した。

「それに……君には、他の奴らの服を作っている暇などないはずだ。俺にはまだ、君に作ってもらわなければならない『最重要の服』があるのだから」

「最重要の服……ですか?」

私が首を傾げると、ギデオン様は私の頬にそっと手を添え、とろけるような熱を帯びた瞳で私を見つめた。

「ああ。俺の隣を一生歩くための、君自身の『ウェディングドレス』だ」

「――っ!!」

私の顔が、ボンッ!と音を立てて茹でダコのように真っ赤に爆発した。

「ウ、ウェ、ウェディング……っ!?」

「当たり前だろう。俺は君のすべてを奪うと言ったんだ。君が自分でデザインした、世界で一番美しい白無垢のドレス姿を見るまで……他の仕事など一切許さないからな」

悪戯っぽく笑う彼の顔が、反則的なまでにかっこいい。

心臓が口から飛び出しそうだ。

「キャーーーーッ!! プロポーズですのーーっ!!」

「最高!! 絶対最高のドレス作ってよ、リゼットちゃん! その結婚式、アタシのチャンネルで独占生中継させてよね!!」

「もう、あんたたち気が早いわよ! でも……リゼット、おめでとう!」

親友トリオが、大はしゃぎで拍手喝采を送ってくれる。

私は真っ赤な顔を両手で覆いながら、それでも込み上げてくる幸せな笑みを抑えることができなかった。

「……もう。ギデオン様ってば、本当に強引なんですから」

「嫌か?」

「嫌なわけ、ないじゃないですか」

私は背伸びをして、彼の首元に腕を回した。

「でも、覚悟してくださいね? 私の理想のウェディングドレスを作るためには、世界樹の糸よりももっともっと凄い、伝説級の素材がたくさん必要なんですから!」

「望むところだ。君のためなら、竜の巣だろうが神の領域だろうが、この足で踏み荒らしてこよう」

無能と実家を追い出され、ホームセンターの安布を握りしめていたあの日。

まさか私が、世界一美しくて過保護な公爵様に溺愛されながら、自分の結婚式のドレスを縫うことになるなんて、夢にも思わなかった。

「さぁ、アタシたちも忙しくなるわよ! ウェディングドレスの素材集め、スパチャ回収大作戦の始まりよーっ!」

「Love & Money! 資金稼ぎは任せてくださいですのー!」

大騒ぎする仲間たちと、私を絶対に離そうとしないギデオン様。

カオスで、ドタバタで、けれどこれ以上ないほど温かいポポロ村の日常。

私のお針子ライフは、どうやらまだまだ、最高に楽しくて幸せな日々が続いていくみたいだ。

(第1章・おわり)

最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございました!!

無事に第1章が完結いたしました!

元婚約者へのざまぁ、公爵様の呪い解呪、そして限界突破の溺愛プロポーズと、読者の皆様に少しでも「スッキリした!」「キュンキュンした!」と思っていただけていれば、作者としてこれ以上の喜びはありません!

ここまで読んでくださった皆様、

「面白かった!」「二人のイチャイチャをもっと見たい!」「次のウェディングドレス編も楽しみ!」

と思っていただけましたら、

どうか画面下部(または上部)にある、【★★★★★】の評価ボタンと、【ブックマークに追加】をポチッと押して、リゼットとギデオン様の未来を応援していただけないでしょうか!?

皆様の『星』と『ブクマ』の数が、そのまま次章(ウェディングドレス素材集め編)を執筆する私の最大の原動力スパチャとなります……!

評価は後からでも変更可能ですので、ぜひ今の率直なお気持ちでポチッとしていただけますと幸いです!

次回より第2章スタート!

世界中のVIPからの依頼を蹴散らし(?)、自分たちの結婚式のために新たな伝説の素材探しのドタバタが始まります!

新キャラも続々登場!? 引き続き、変わらぬ溺愛と無双をお楽しみください!

それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

評価とブックマーク、何卒よろしくお願いいたします!!

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