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無能と追放されたお針子令嬢、神の裁縫チートで無双する〜呪われ公爵様にハグ専用服を作ったら限界突破で溺愛されました〜  作者: 月神世一


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第一章 婚約破棄されたので、辺境のホームセンターで運命の布(銅貨1枚)と出会うことにしました

婚約破棄されたので、辺境のホームセンターで運命の布(銅貨1枚)と出会うことにしました

「お前のような、魔導防具も作れないただの布屋は我が家に不要だ! 真実の愛を見つけた私に相応しいのは強力な付与魔法を使える聖女だけだ。婚約は破棄する。出て行け!」

煌びやかな王都のパーティー会場。冷酷な元婚約者からの追放宣告を浴びた瞬間――私の脳内に、前世の記憶が鮮明にフラッシュバックした。

そうだ。私、深夜の終電の電車内で「もう疲れた……アパレルのパタンナーの仕事は好きだけど、残業ばかりで人生やり直したい」って呟いたんだ。

そうしたら、隣の座席に座っていた、ピンク色の芋ジャージに健康サンダルを履いた妙な女神様(ルチアナって名乗ってたっけ)が、缶ビールを片手にフランクに話しかけてきたのだ。

『お疲れ様。じゃあ、いっそ異世界で人生やり直してみる? チートスキル、おまけでつけとくからさ』

そして気がつけば、私はアナステシア世界の男爵令嬢、リゼットとして生を受けていた。

しかし、強力な魔力や闘気が至上とされるこの世界において、「ただ服を縫うだけ」のユニークスキルしか持たない私は、実家でも無能扱い。結局、家からも婚約者からもゴミのように捨てられてしまったのだ。

でも……正直、心の底から清々している。

前世のブラック企業や、見栄っ張りで息の詰まる貴族社会よりずっとマシだ。これで誰に文句を言われることもなく、大好きな服作りだけに没頭できるんだから!

 ◇ ◇ ◇

というわけで。

私は今、ルナミス帝国と獣人王国、そして魔皇国の国境が交わる緩衝地帯――『ポポロ村』の大型ホームセンター『タローマン』の、ワゴンセールの前に立っていた。

ここは様々な種族が入り乱れるカオスな村だが、布や工具の品揃えは大陸一だ。

「うわぁ……! この布、ちょっとゴワゴワしてるけど耐久性は良さそう。こっちは色がすごく綺麗! えっ、一メートル銅貨一枚(約100円)!? 安っ!」

目をキラキラさせながらワゴンの中を物色していると、足元から「きゅるるるるる……」という、ひもじさ極まる悲しい音が聞こえてきた。

視線を落とすと、そこには色あせた型落ちの芋ジャージに健康サンダルを突っかけた、信じられないほど顔の整った美少女がしゃがみ込んでいた。

彼女はタローマンの試食コーナーでもらったらしい『パンの耳』を、プロ顔負けの真剣な表情でかじっている。

「……さ、寒いですの。でも、アイドルの道は険しいものですの。これも試練……『絶対無敵のスパチャアイドル、リーザですの!』……ぶくしゅっ!」

ガタガタと震えながらもアイドルスマイルを作る彼女は、海中国家シーランの王女でありながら、なぜか地上で極貧の地下アイドルとして活動しているリーザちゃん(16歳)。ポポロ村にたどり着いた私が、最初に出会ったお友達だ。

いくら彼女のユニークスキルが悪運に強いとはいえ、こんな寒空の下でジャージ一枚なんて見ていられない。

「リーザちゃん! ちょっと待ってて。今、暖かくてすっごく可愛い服を作ってあげるから!」

「えっ? リ、リゼットさん? でも私、全財産がピカピカに磨いた五円玉一枚しかありませんの……。それに、お金を使ったら今日の夕飯の雑草サラダにドレッシングがかけられませんの」

「お金なんていらないよ! 私が、リーザちゃんに可愛い服を着てほしいだけだから!」

私はワゴンセールの中から、鮮やかなマリンブルーの布(銅貨一枚)と、少しだけフリルの端切れを買い占めると、タローマンのイートインスペースの隅を借りて、愛用の裁縫箱を開いた。

【神の裁縫箱エンチャント・テーラー】。

女神ルチアナ様から貰った、私の唯一のユニークスキル。

この裁縫箱に入っている魔法の針と糸を使えば、どんな素材でも私の思い描いた通りの服に瞬時に仕立て上げることができる。前世で培った服飾の知識と情熱が、今世の魔法と融合する瞬間だ。

「リーザちゃんは人魚姫だから、海を思わせるブルーベースの生地で。でもアイドルだから、動くたびにフリルが揺れるようにして、防寒性もしっかり高めて……」

ダダダダダダダッ!!

目にも留まらぬ速度で針を動かす。服のことになると、私は完全に周りが見えなくなるオタクなのだ。

布の目を読み、光る糸を這わせる。ただ「この子を最高に可愛く、そして外の寒さや危険から守ってあげたい」という強い祈りを込めて縫い上げる。

ほんの数十分後。

「できた……! 特製・マリンスノーフリルワンピース!」

「わぁぁ……っ! これ、本当に私に!? すっごく可愛いですの! しかも、着た瞬間にポカポカして……まるでお日様に包まれてるみたいですの!」

ボロボロの芋ジャージを脱いでワンピースに着替えたリーザちゃんは、まさに深海の妖精のようにキラキラと輝いていた。

その時だった。

ドドドドドドドッ!!!

突如、タローマンの駐車場の方から地鳴りのような足音が響き渡った。

「ブモォォォォォォッ!!」

現れたのは、角が強固な岩でできている凶暴な魔獣・ロックバイソン。

群れからはぐれたのか、目を血走らせて暴走し、あろうことか真っ直ぐにリーザちゃんへと猛突進してきたのだ。

周囲の買い物客たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。

「ひっ!? 死ぬぅぅぅっ!!」

腰を抜かして座り込むリーザちゃん。

大質量の岩の角が、彼女の華奢な体に迫る。自警団を呼ぶ暇もない。

普通なら逃げ出す場面だ。しかし、私の頭の中は完全に服飾オタクのそれで埋め尽くされていた。

「あっ、ダメ! 私の作った新作の服が、泥と血で汚れちゃう!!」

考えるより先に体が動き、リーザちゃんの前に飛び出した私は、ギュッと目をつぶった。

――キィィィィィンッ!!!!

凄まじい金属音が響いた。

……あれ? 痛みはない。

そっと目を開けると、信じられない光景が広がっていた。

リーザちゃんが着ているマリンブルーのワンピースのフリルから、淡い光の波紋のようなバリアが展開し、数トンはあるロックバイソンの突進を完全に弾き返していたのだ。

弾き飛ばされたロックバイソンは、目を回してドスーンと気絶している。

「……えっ?」

「……えっ?」

私とリーザちゃんは顔を見合わせた。

ただの銅貨一枚の安い布だ。防御力なんてあるはずがない。

私は知らなかったのだ。

【神の裁縫箱】で『着る人を守りたい』と強く念じて縫い上げた服には、「絶対防御」や「状態異常無効」という、国家の最高軍備すら凌駕する規格外の概念が物理的に付与されてしまうということを。

「リゼットさん……この服、いったい……」

私たちが呆然としていると、空が急に暗くなった。

「……何、あれ」

上空から、ズシンッ! とアスファルトを砕いて降り立ったのは、身の丈を優に超える巨大な男だった。

全身を禍々しい漆黒のフルアーマーで覆い、その装甲の隙間からは周囲の草木を瞬時に枯らすほどの「呪いの瘴気」が黒いモヤとなって漏れ出している。

(ひえっ……!? す、すごく怖い人が来た……!)

アバロン魔皇国が誇る最強の筆頭公爵にして、触れるものすべてを腐らせる呪われた化け物。

後に私の運命を大きく変えることになるその男は、兜の奥で赤く光る眼光を、私とリーザちゃんに――正確には、彼の強烈な瘴気を浴びても一切腐食せず、美しく揺れている私の作った『絶対防御の服』に、真っ直ぐに向けていた。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「銅貨1枚の布が最強防具になるなんて最高!」

「この怖い公爵様、ここからどうなるの!?」

「続きが読みたい!」

と少しでも思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【★★★★★】の評価と、【ブックマークに追加】を押して応援していただけると、執筆の最大の励みになります!

読者の皆様の応援ポイントが、リゼットの布代とリーザちゃんのスパチャ(食費)に繋がります…!笑

次回、恐怖の呪われ公爵様が、リゼットの作った服を見てまさかの行動に……!?

明日も更新予定ですので、ぜひブックマークをしてお待ちくださいませ!

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