第5話:国家機密、錬金術で超強化される
パパが「自分の勘違い」だと思い込み、
執務室へと猛ダッシュで
戻っていってから、数分。
もちろん、執務室を探したところで
本物の書類が見つかるはずはない。
(パパのパニックが再発する前に、
早くこのツルさんを
元の書類に戻さなきゃ……!)
私はベッドの隅っこで、
手のひらの上の折り鶴を
じっと見つめた。
パタパタと健気に
羽を動かしている折り鶴は、
私の魔力を吸って
すっかり懐いている様子だ。
ちょっと心が痛むけれど、
背に腹は代えられない。
(ツルさん、ごめんね。
元の紙に戻って!)
私は心の中で、
もう一つの初期スキル――
『錬金』の発動を強く念じた。
その瞬間、私の手元が
まばゆい緑色の光に包まれる。
光の粒が折り鶴を優しく包み込むと、
ツルの形がサラサラと解け、
折り目がみるみるうちに消えていく。
そして、光が収まったとき――
私の前には、
折り目やシワ一つなく元通りになった、
難しい文字がびっしり並ぶ
美しい羊皮紙が転がっていた。
(できた……! すごい、
文字もパパの筆跡のままで
綺麗に修復されてる!)
前世のゲームの知識通り、
【錬金】スキルは
「素材の修復や形状変化」が
バッチリできるようだ。
ホッと胸をなでおろし、
私は小さな手でその書類に触れた。
その時、私の視界に
ピコン、とシステムメッセージが
表示された。
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【錬金成功】
・対象:国家機密の外交書簡
・品質:神話級
・特性:【絶対不壊】【元素無効】
※詳細:∞の魔力による過剰錬成。
いかなる物理攻撃でも傷つかず、
火で炙っても絶対に燃えない。
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……私は再び、
白目を剥きそうになった。
(ゴッドレアって何!?
ただのパパの仕事の紙が、
世界最高の防具並みに
カッチカチになっちゃったんだけど!?)
どうやら、折り紙を折った時に
私の【MP:∞】から
ドバドバと流れ込んだ魔力が、
錬金したことで紙の繊維に
完全に定着してしまったらしい。
触ってみると、
見た目はしなやかな羊皮紙なのに、
鉄板よりも頑丈な気配がする。
試しに小さな爪で
ギギッと引っ掻いてみたけれど、
傷一つ、凹み一つ付かない。
(最重要機密が、物理的にも
絶対に破壊できない
最強の書類になっちゃった……。
ま、まあ、紛失しても
破られないし燃えないから、
セキュリティ的には大正解……よね?)
そう自分に言い聞かせ、
強引に納得することにした。
あとは、これをどうやって
パパの元へ返すかだ。
「大変だ! やはり執務室にも
書類がない! まさか本当に、
我が家に間者が侵入して――」
廊下の向こうから、
パパの血相を変えた叫び声と、
凄まじいドタバタという足音が
近づいてくる。
(ひえっ、パパが戻ってくる!
もう猶予がないわ!)
私は大慌てで、
超強化された国家機密書類を
両手でがっしりと掴み、
ベッドの柵から外へ向かって
思いっきり放り投げた。
書類はひらひらと宙を舞い、
ちょうどパパが置いていった
ソファのクッションの隙間へと、
綺麗に滑り込んでいった。
(よし、あとはパパが見つけるのを
祈るだけ……!)
私は急いでベッドの真ん中に戻り、
何事もなかったかのように
コロンと仰向けに寝転がって、
天井を見つめるのだった。




