第198話(後日談3):数年後の朝と、相変わらずな愛(エピローグ)
あれから、数年の月日が流れた。
学園を無事に卒業した私は、今、公爵家の一角に設けられた自身の『折り紙魔導研究所』で、日々新しい魔法の研究と執筆に励んでいる。
「ふぁ……、もう朝……?」
柔らかな朝日が部屋に差し込む中、目をこすりながらベッドから起き上がると、ドアがコンコンと優しく叩かれた。
「オリカ、入るぞ。……おや、もう起きていたのかい?」
ドアを開けて入ってきたのは、上質なシルクのナイトウェアを羽織ったお兄様だった。
数年が経ち、公爵家の当主としての威厳と洗練された大人の色香が増したお兄様……のはずなのだが、その手には大きな銀のトレーが載っている。
「お兄様!? ご自身で朝食を運んできてくださったのですか!?」
「当たり前だろう! 愛しい妹の目覚めを一番に祝うのは私の特権だ。さあ、焼き立てのクロワッサンと、お前が好きな蜂蜜たっぷりの紅茶だよ」
お兄様は昔と全く変わらない極上の笑顔でトレーをテーブルに置くと、当然のように私の隣に腰掛け、私の頭を優しく撫でまわした。
「お、お兄様……私、もう学園を卒業した立派な大人なんですけれど……っ」
「何を言っているんだ。どれだけ年を重ねようと、お前は私の世界で一番かわいくて愛おしい妹だ。……それとも何か? 最近、ライアンの奴と頻繁に連絡を取っているようだが……あいつめ、我が妹を拐かす気か? 今すぐ討伐隊を……」
「違います! ライアン君とは新しい魔導紙の強度実験の相談をしているだけです!」
「ガウッ!」
私の声に反応して、部屋の隅で丸くなっていたノワールが目を覚ました。
数年でさらに一回り大きく、凛々しい聖獣へと成長したノワールだが、トコトコと歩み寄ってくると、昔と変わらず私の膝の上に大きな頭を乗せて甘えてくる。
「ふふ、ノワールもおはよう」
ノワールの毛並みを撫でながら、私はそっと窓の外に広がる青空を見上げた。
かつて前世の病室で、一人寂しく白い紙を折っていた私。
あの頃の私が今の私を見たら、きっと驚いて、そして泣いて喜ぶと思う。
周りには相変わらず過保護で甘々な親バカならぬ「妹バカ」のお兄様がいて、頼もしい仲間たちや先生がいて、いつでも温かく寄り添ってくれるノワールがいる。
「ねえ、お兄様」
「なんだい、オリカ?」
「私、今……毎日がとっても楽しくて、本当に幸せです」
心の底から溢れ出た言葉に、お兄様は一瞬目を見開き、それから愛おしそうに私をぎゅっと抱きしめた。
「……ああ。私もだよ、オリカ。お前が笑っていてくれるなら、私は世界中の何よりも幸せだ」
窓から差し込むあたたかな光の中、何重にも折り重ねられた絆と愛情に包まれながら、私の新しく愛おしい毎日は、これからもずっと続いていく。
(完)
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!どこまで続けるかすごく悩みましたが、あまり長すぎるのもなぁと思いここで完結となりました( . .)"
しおりや、♡が増える度にものすごくはげみになりました!今日まで本当にありがとうございました( . .)"




