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『白髪の天使は折り紙を折る 〜HP無限の転生令嬢、最強の家族にノンストップで溺愛される〜』  作者: CASCADE


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プロローグ 白髪の天使は折り紙を折る


カサリ、と静かな病室に紙の擦れ合う音が響く。



「はい、できたよ。これはお花のコマ。ここを持って回すと、ほら、綺麗に回るでしょう?」


「わあ……! 彩葉いろはお姉ちゃん、すごーい!」



ベッドの上の小さな男の子が、目を輝かせて折り紙のコマを受け取る。

私はそれを見て、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。



私の名前は彩葉。19歳。


幼い頃から体が弱く、この『聖桜大学付属病院』の白い天井の下が、私の世界のすべてだった。



私の両親は、病弱な私を見放している。

治療費だけは機械的に振り込まれるけれど、お見舞いにはもう何年も来ていない。


誕生日も、クリスマスも、私はいつもこの個室で一人きりだった。



そんな孤独な私を救ってくれたのが、看護師さんから教わった『折り紙』だった。



ただの四角い色紙が、指先ひとつで鶴になり、花になり、動物になる。

その小さな魔法に私は夢中になった。


いつしか、同じように入院している小さな子どもたちに折り紙を折ってプレゼントすることが、私の生きがいになっていた。



「彩葉お姉ちゃん、明日は19歳の誕生日でしょ? 僕、お手紙書くね!」


「ふふ、ありがとう。楽しみに待ってるね」



男の子が病室に戻り、一人になった夕暮れ。

窓の外の夕焼けを眺めながら、私はぽつりとお腹のあたりをさすった。



(19年、か……。寂しかったけれど、みんなの笑顔が見られたから、私の人生も悪いものじゃなかったな)



けれど、その日の夜。

私の19歳の誕生日前日、世界は唐突に終わりを告げた。



急に胸が苦しくなり、呼吸が浅くなる。

鳴り響くアラームの音。

駆けつける医師や看護師たちの緊迫した声。


遠のいていく意識の中で、私は最後に、ベッドの脇に置かれたカラフルな折り紙の束を見た。



(もっと、たくさん折りたかったな……。今度は、病気なんてしない、元気な体に……――)



それが、私の前世の最後の記憶だった。



◇◇◇



「おや、目が覚めましたか」



柔らかな声に、私はハッと目を開けた。


そこは病室ではなく、見渡す限りの緑が広がる、美しい草原だった。

風が優しく頬を撫でる。


何より驚いたのは、あんなに重かった体が、嘘のように軽いことだった。



「ここは……?」


「ここは狭間の世界。私は神と呼ばれる存在です。彩葉、あなたの19年間の優しさを、私はずっと見ていましたよ」



振り返ると、そこには光をまとった穏やかな佇まいの神様が立っていた。



「孤独な環境にありながら、他者に笑顔を届け続けたあなたに、新たな生を授けましょう。次の世界では、あなたがこれでもかと愛され、幸せになる番です」


「私が、新しい人生を……?」


「ええ。あなたの願い通り、決して病に倒れることのない、健やかな体を。そして、あなたが愛したその指先の技術も、魂に刻んでお送りします」



神様が優しく微笑み、そっと手をかざす。


私の体が温かな光に包まれ、だんだんと小さくなっていくような不思議な感覚に囚われる。



「さあ、行きなさい。愛しき我が子よ。あなたの未来に、無数の祝福があらんことを」



神様の祝福の声を最後に、私の意識は再び心地よい光の中に溶けていった。



◇◇◇



「――お、おああ……っ!?」



次に意識が戻ったとき、私は何故か大人の男の人の、ものすごい大声を聞いた。


視界がぼやけてよく見えない。

ただ、自分の体が信じられないほど小さく、ふにふにしていることだけは分かった。



(えっ!? 赤ちゃんになってる……!?)



「ギ、ギルバート様! 落ち着いてくださいませ! 産後のエレノア様が驚いてしまいます!」


「落ち着いていられるかッ! 見ろ、この愛らしさを……! 白い絹のような髪に、星を溶かしたかのような紫の瞳……。間違いない、我がエヴェレット公爵家に舞い降りた、本物の天使だ……ッ!」



鼓膜が破れそうなほどの凄まじい熱量で叫んでいるのは、威厳のある赤髪に茶色の瞳をした、見るからに身分の高そうな美男子だった。


鋭い眼光をしているのに、私を見る目は完全にデレデレに溶けている。



「あなた、お声を落として。……でも、本当に可愛いわ。ああ、なんて愛らしいのかしら……! この子のために、世界中の最高級のドレスとぬいぐるみを今すぐ買い占めなくては」



その隣で、気品溢れる緑の髪と水色の瞳をした絶世の美女――お母様が、目が完全に座った状態で、尋常ではないおねだりリストを脳内で構築している。



「父上、母上。僕の妹になる子は、やはり天使だったのですね。分かります。……よし、この子が大きくなった時、泣かせるような男がいたら、その血族ごと国を滅ぼしましょう」



さらに、父親譲りの赤髪に金色の瞳を持った、10代前半ほどの美少年――お兄様が、爽やかな笑顔でとんでもなく物騒なことを口にしていた。



(え、ええええええ……!?)



前世の孤独が嘘のような、開始早々フルスロットルな家族の溺愛。


どうやら私は『レグランディア皇国』の最高峰の大貴族、エヴェレット公爵家の長女『オリカ』として、とんでもなく濃い家族に囲まれて人生をスタートさせてしまったようだった。

面白い、気になると思ってくれたら応援よろしくお願いします!

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