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第10話 《剣を手に持つため》

 アーサリアさんに連れられてしまった連れられてしまった僕は、現在屋敷のどこかにあるのであろう修練場のような場所に来た。正直、道中は森だったので本当に屋敷の中のものなのかは微妙である。修練場はやはり騎士のような人たちがたくさん訓練をしている。あるものは木の剣を、あるものは弓を、そしてあるものは槍を。それぞれにあった武器を使って訓練に励んでいる。木の剣がぶつかりあう音、模擬戦で互いをほめたたう声。そんな音がその場所からたくさん聞こえてくる。さすが騎士。そんな負けても相手を褒め称えれる精神はうらやましい。

「今からここで剣術の基礎を学んでもらうよ?」

「剣術…。全くしたことないんですが…大丈夫ですか?」

「それは、勿論君の努力と向上心次第だよ」

そんな試すような表情はどこか楽しそうであるが、変に期待するのはやめてほしいところである。

「最大限頑張らさせてもらいます…」

「よろしい。それじゃあまずは、剣を握るところからだね」

彼はそう述べて木の剣を取りにいって僕に投げ渡してくる。意外ときれいに投げてくれるのでいい感じにキャッチできた。にしても木の剣はなかなかの重量があって、きっと、振れば遠心力で上手く切ることさえできない。本物の剣だなんてもってのほかだろう。剣先が重たくて、振れば前に持っていかれる。

「剣を振るときはちゃんと腕を鍛えないといけない。何も鍛えてなければ剣に振り回されるだけだからね」

「なるほど…。でもいつかうまく振れるようになるのかなぁ、」

その言葉に相槌を一つ。いったん剣を思い切り振ってみるが、やはり腕が痛くなる。重心で前に行かないように支えようとすれば腕が張って少し間接に痛みが走る。思った百倍、大変できつい。片手ならなおさら関節の痛みが強くなるんだろう。やばい。こんなのいつになってもなれない。そんな気がする。少なくともこの一年は。あたりを見渡せば武器を自分の体の一部のように操っている騎士たちがいて、本当に自信がなくなりそうだ…。きっと、アーサリアさんは彼らの何倍も強い。そんな気がする。彼の自信、そしてゆらゆらと揺れない芯のある歩き方。今ここで剣でも振りかぶったら、返り討ちに合う。絶対に不意打ちなんてできない。しようものなら、当たるより先に斬られる。

「ミヤビはさ、剣を握るなら何のために握りたい?」

「何のため…?」

唐突の質問に僕は思考が止まった。もともと言えば無理やり連れられてきたから。いや関係ないか。もし剣を握って戦うなら、何のためか。……わからない。命を張ったことなんてない。だからこそわからない。

「僕はね?民のために剣を握る。騎士として、魔物や魔獣から民を守るために。そして約束のため。これが僕が剣を握る理由」

「約束…」

アーサリアさんの瞳は、どこか悲しげで、遠くを眺めてる。そんな気がした。約束。きっと大切な約束。

話す言葉は短かった。でもその一瞬はまるで、世界が止まったかのように感じられるほど、静かで、哀愁が漂ってたと思う。でもそんな時間を切り裂くように彼は笑って言葉を紡ぐ。

「まぁ、今日はお試し、みたいなものだから、明日から本格的に訓練、始めようね?」

「わかりましたっ!」

「いつか剣の握る理由を見出すため、そして生き残るため。とりあえず、今日はあのメイドさんからの憤怒、身をもって受け止めるんだよ?」

あ…。忘れていた。その瞬間僕の背中には悪寒が走る。ひやっと冷や汗が流れた気がする。仕事の途中で抜け出したんだ。しかも初日に。外は少しづつ暗くなり始めている。いや、そもそもアーサリアさんが悪いだろう。そんな言い訳は僕の中で消え去った。あきらめるしかない。足取りが重たい。ゆっくり、アーサリアさんの案内の中、屋敷へ向かう。






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