最後に見た通知
幸せを探していた私が最後に気づいた、本当に大切なこと。
幸福の日に届けたい、小さな恋の物語。
あの日から。
少しだけ毎日が変わった。
朝起きて。
すぐにスマホを開くことが減った。
食事が運ばれてきても。
「早く撮らなきゃ。」
そう思わなくなった。
休日も。
「映える場所」を探すんじゃなくて。
「行ってみたい場所」を選ぶようになった。
彼は何も言わなかった。
「SNSやめたの?」
とも聞かなかった。
ただ。
前よりたくさん笑う私を見て、
嬉しそうに笑っていた。
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ある日の帰り道。
川沿いを歩いていると。
夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。
思わず立ち止まる。
「きれい。」
私がそう言うと。
彼も空を見上げる。
「写真撮る?」
いつもなら。
反射的にスマホを取り出していた。
でも私は。
首を横に振った。
「今日はいい。」
「え?」
「たぶん。」
「写真に残すより。」
「覚えていたい。」
彼は少し笑って。
「うん。」
とだけ答えた。
その短い返事が。
なんだか嬉しかった。
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歩きながら。
私は彼に聞いた。
「ねぇ。」
「私、変われたかな。」
彼は少し考えてから言う。
「うん。」
「前よりずっと。」
「景色を見るようになった。」
「人の話を最後まで聞くようになった。」
「よく笑うようになった。」
「あと。」
「俺の顔を見る時間も増えた。」
思わず吹き出す。
「なにそれ。」
「嬉しいってこと。」
そう言って笑う彼を見て。
私も笑った。
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その時。
ポケットの中でスマホが震えた。
通知が来たらしい。
以前の私なら。
すぐ画面を開いていた。
誰からだろう。
何件だろう。
「いいね」は増えたかな。
そんなことばかり気になっていた。
でも。
私はスマホを取り出さなかった。
彼が不思議そうに聞く。
「見なくていいの?」
私は夕焼けを見つめたまま答える。
「うん。」
「今見たら。」
「もったいないから。」
彼は少し照れながら笑う。
「そっか。」
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家に帰ってから。
ようやくスマホを開いた。
通知はたくさん来ていた。
仕事の連絡。
友達からのLINE。
SNSの通知。
その中に。
彼からのメッセージが一件だけ届いていた。
開く。
そこには今日の写真が一枚。
私は思わず笑う。
夕焼けでも。
景色でもない。
写っていたのは。
夕焼けを見上げながら、
笑っている私だった。
そしてメッセージが添えられていた。
**『今日の君、すごく幸せそうだった。』**
私はその写真を見ながら思う。
SNSではずっと。
「幸せそう」
と言われ続けてきた。
でも。
今日初めて。
本当に幸せだった。
だからきっと。
本当に幸せな人は。
"幸せそうに見える"んじゃない。
誰かに見せようとしなくても。
自然と笑ってしまう人なんだ。
私はスマホを閉じる。
窓の外には、
今日と同じ夕焼けが広がっていた。
あの日。
彼が送ってきた一枚の写真がなかったら。
私はきっと。
今日も画面の中ばかり見ていた。
ポケットの中で。
スマホがもう一度震える。
私は笑ってそのまま歩き出した。
今、一番大切なものは。
もう通知の中じゃなくて。
ちゃんと目の前にあるから。
「あなたが最後に、スマホを見ずに笑えた日はいつですか?」




