好きな人より通知が気になっていた私
彼と付き合って、もう二年になる。
友達からはよく言われた。
「ほんと仲いいよね。」
SNSに投稿するたび、
「理想のカップル」
「幸せそう」
そんなコメントが並ぶ。
私もそう思っていた。
少なくとも。
そう思い込もうとしていた。
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休日。
彼と新しくできたカフェへ行った。
パンケーキが運ばれてくる。
「おいしそう!」
そう言いながら私はスマホを取り出す。
角度を変えて。
明るさを調整して。
何枚も撮り直す。
「ちょっと待って。」
「もう一枚だけ。」
彼は笑いながら待ってくれていた。
「冷めちゃうよ。」
「あと10秒!」
そう言ってまたシャッターを切る。
ようやく満足してスマホを置いた頃には、
パンケーキは少ししぼんでいた。
「ごめん。」
そう言うと彼は笑う。
「慣れた。」
その一言に。
少しだけ胸が痛んだ。
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食事を終えて街を歩く。
可愛い雑貨屋さん。
期間限定のイベント。
綺麗な花。
私は何か見つけるたびに立ち止まる。
「これ写真撮ろ!」
「ねぇ、この角度で立って!」
彼は何も言わず応じてくれる。
でも。
撮り終わると私はすぐ画面を見る。
ちゃんと撮れてるかな。
盛れてるかな。
投稿したら伸びるかな。
その繰り返しだった。
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夜。
展望台へ行った。
街中の明かりが宝石みたいに輝いている。
「きれいだね。」
彼がそう言った。
「うん!」
そう返事をしながら。
私は夜景じゃなく、
スマホを見ていた。
何枚も撮って。
加工して。
文章を考えて。
ようやく投稿する。
数秒後。
「いいね」がつき始める。
なんだか安心する。
もっと増えるかな。
コメント来るかな。
そんなことばかり考えていた。
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「帰ろっか。」
彼の声で我に返る。
「あ、ごめん!」
慌ててスマホをしまう。
でも。
その帰り道。
私たちはほとんど話さなかった。
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家に着く。
ソファに座るとすぐスマホを開く。
投稿はよく伸びていた。
コメント欄には、
「憧れます。」
「幸せそう。」
「こんな恋愛したい。」
そんな言葉が並んでいる。
少しだけ嬉しかった。
その時。
彼からLINEが届く。
『今日撮った写真、送るね。』
写真かな。
そう思って開く。
送られてきたのは一枚だけだった。
私が投稿した夜景の写真じゃない。
誰かが撮った。
私たちの後ろ姿。
その写真には。
夜景なんて一度も見ずに、
スマホを見つめている私と。
そんな私を、
少し寂しそうな顔で見ている彼が写っていた。
私は息をのんだ。
今日。
私は何十回も写真を見返した。
でも。
彼の表情を見たのは。
その一枚が初めてだった。
その時。
彼からもう一通LINEが届く。
『この写真見て、何か気づいた?』
私は画面を見つめたまま、
何も返信できなかった。
SNSでは「理想のカップル」と言われる私たち。
でも、一枚の写真に写っていたのは、私が気づかなかった"本当の彼"の表情だった——。




