テロリスト編 3/5
同じような妄想だったがディテールにずいぶんと差異があるようなのでお互いの設定を確認する作業から始めた方が良さそうだ。
そう考えていたところ、突然教室のドアが開いた。
ドアの方を見るとテロリストがいた。
「き、貴様ら、俺の仲間に何しやがった!!」
「はぁ、やれやれ」
俺は大きな溜め息をもらした。
自分の妄想だと言うのにリッチーの妄想とリンクしてしまったというただでさえおかしな状況を飲み込むのですら一苦労なのだ。これからリッチーと俺でさらにこのカオスに立ち向かおうという時にテロリストの邪魔が入ってきてうんざりした。
俺は銃を構えたテロリストの方に近づいて行った。銃に全く怯む様子の無い俺に叫ぶテロリストだったが、俺が瞬きするよりも早くテロリストの背後にまわって首に手刀を叩き込む。
「色々とタイミング悪ぃーんだよ」
気絶して倒れるテロリストにおそらく俺の声は届いていないだろう。
リッチーの下へ戻りながら俺はこの妄想について説明を始めた。
「俺の妄想はこうだ。俺は校門から入ってきたテロリスト6人を見て先手を打つためにトイレに行くと言って先程学校内を調査してきた。職員室に3人、放送室に2人、あと俺が城島の前でカッコ良く倒してホレられるための踏み台になるはずだった奴が1人。計6人だ。今俺が倒したテロリストはよくわからん。職員室の奴なのか、放送室の奴なのか、もしくはリッチーの妄想のテロリストの30人のうちの1人なのかな。んで現在に至る、って感じだ。映画でいうと25分くらいのとこだな」
「その校門のとこもわかんねーし、ソーシがトイレに行ったのも知らねーな。俺が授業受けてたら突然テロリストが教室入ってきてみんな一カ所に集められるんだよ。そこで校内放送が流れて状況を知らされるんだ。俺は龍昇想波流奥義を駆使してテロリスト達を片っ端から蹴散らしていくってわけだ。そしてその手始めにこいつを始末したところだ」
「俺の妄想にリッチーが途中から割り込んで来たって感じかな?にしてもお前の設定雑だな。もっとこう、ストーリー練れよ」
「はぁ?そもそも俺の龍昇想波流が炸裂すればあとの事は大体テキトーでいいんだよ。それにお前、なんだ?城島って、城島円華の事か?お前城島の事好きなの?うわー聞いちゃったー」
「はっ…はぁ?べ、別にちげーし。そういうのじゃねーし。てかお前こそなんだよその奥義の名前。恥ずっ!うわっ、恥ずぅ~」
……
「なんか俺ら…死にたいね…?」
「…うん」
テストで16点取ったのがバレた時よりも、学校でうんこしてる時にドアの鍵がちゃんと閉まってなくて見られた時よりも精神ダメージがデカかった。
リッチーとは学校でいつもバカやって笑ってたけど、お互い家では相手に隠してこんなくだらない妄想なんかしちゃってたんだな。しかも同じ時間に。
「はぁ~、まぁソーシだからギリギリセーフだけど、これがあんまり仲良く無い友達とかだったら俺、間違い無く死んでたぜ」
「俺もだよ。リッチーの妄想の方が俺のよりアホっぽくて救われたわ」
「はぁ?カッコいいとこ見せて城島にホレられるとか、ソーシも大概アホだぞ?」
お互いの設定にひとしきりグチったところで、俺は足元のテロリスト共を見た。
「しゃーない。この二人の妄想がごちゃ混ぜになった世界をさっさとクリアするか!」
「そうだな!テロリストの人数は?」
「もう30人でも40人でもいいよ。好きにしてくれ」
「オッケー!じゃあ俺は職員室の奴らを片付けてくるから、ソーシは放送室を制圧してくれ!お前も妄想の設定で強いんだろ?技名とかあんの?教えてよ!」
「技名とかそういうの全く考えてねーよ。なんか凄い武術をマスターしてるって設定だからな。そもそも、教室でテロリストを倒して城島にホレられさえすれば残りのテロリスト戦はオマケでしかねーしな。」
「なんだ、つまんねーの。それじゃ俺と真逆じゃねーか。まぁいいか。お互いミッション達成後、屋上で落ち合おうぜ!」
「ミッションってなんだよ。お前本当設定ガバガバだな。それに屋上ってなんだよ?」
「屋上にテロリストのボスがいてヘリで逃げるのを阻止すんだよ」
「へいへい、了解しましたぁー」
「わかればよろしい!俺、先に行くぜ!」
そういってリッチーは何故か教室の窓に突撃し、派手にガラスを割りながら3階からグラウンド側へ飛び降りた。
下を見ると全然無傷のようで、雄叫びをあげながら4階の職員室に向けて正面玄関から突入していった。
俺はあいつのそういうバカなところが大好きだ。
俺は、テロリストが落としたハンドガンを拾い城島の方へ向かった。
「テロリスト達は俺らがなんとかするよ。なぁに心配いらないさ。でもキミに何かあったら俺は死ぬより後悔する。
…あ、いや。なんか違うな。もっとカッコいいセリフにしよう。
俺が戻ってくるまで安全なところで隠れててくれ。万が一の時はこれで身を守ってくれ。それと、戻ってきたらキミに聞いてもらいたい事があるんだ」
そう言ってハンドガンを城島に渡した。
頬を赤らめる城島。そう!これ!こういうの!
リッチーのせいでかなり遠回りしたがこのくだりをしたかったのだ。
「あ、あの……七女君、私ね…実は…」
「あぁ、わかってるよ。俺もキミの事が好きだよ」
俺は城島のおでこに軽くキスをして、使命感に駆られたようなそれっぽいキメ顔で廊下の方を見て立ち上がった。
「じゃあ、行ってくる!」
俺はこれまた最高級の爽やかな笑顔で城島に笑いかけて放送室に向かった。
あ、さっき俺「戻ってきたらキミに聞いてもらいたい事があるんだ」とか言ったけど、間違って先に城島に告っちまったな。
本来テロリストを倒したら城島から告ってくるはずだったのに、なんかシナリオが違ったからアドリブになってしまったわ。
アドリブが苦手だからこんな妄想と言う名のリハーサルを繰り返してんだろうなぁ。
さて、戻ってきてたら城島に何て言おうかな?
あ…言ったそばからセリフを考えようとしてしまってる。
やれやれ、俺の妄想癖は根が深そうだ。
おかげさまで処女作がホラー部門で「1位」になりました!
ありがとうございます!
いずれもブックマークや感想などいただけると嬉しいです!
「殺人鬼の方、挙手願います」
https://ncode.syosetu.com/n0984gh/




