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第8話
『タカハシさんってお上手ですね。』
ケイコもお世話とは言え悪い気はしない。家と事務所の往復で、ほとんど飲み会にも顔を出さないケイコにとって、男に褒められるのは久しぶりだ。
『キムラさんのような人が家で待っていたら、毎日帰るのが楽しいだろうなー。』
ケイコの目をケンジが見つめる。ちょっと動揺気味のケイコ。
『でもタカハシさんもご結婚されてますよね?まだまだ新婚さんみたいな感じなんじゃないですか?お子さんはいらっしゃるんですか?』
『結婚3年目で今年子供が生まれました。まあ幸せって言えば幸せなんですけどね。実際はいろいろありますが。』
しばらく休んでいたケンジがまたビールを飲み始める。
『じゃあ一番頑張らなきゃならない時期ですね。仕事も家庭も。』
『そうですね。キムラさんと話せて元気が出てきました。またちょっと頑張ってきますね。』
そう言ってケンジはビール瓶とグラスを片手に、夜の酒の戦場へと舞い戻って行った。
ケンジと話したことにより、自分の幸せだった時期のことを思い出すケイコがいた。




