第7話
席が隣とは言え、ケンジにとっては単なる飲み会ではなく、仕事の一環。楽しく会話している時間などなく、担当者、課長、部長と挨拶にお酌と忙しい。ビール瓶を持っていろんな人に注ぎに行く度に、注いだ以上のお酒を飲まされるのが営業マンの定め。ケンジはいつもの営業スマイルで、注がれたお酒は飲み続けた。
ケイコは普段飲まないお酒を久しぶりに飲んだこともあり、顔がほんのり赤みを浴びている。今日くらいはいいかなーとちょっとずつ飲み始めたが、いつの間にかビールも進んでいた。トイレから戻る途中、ケンジは店員さんに水を貰い一気に飲み干す。ちょっと酔いもまわり始めており、小休止の意味も込めて、ケイコの隣の席に戻った。
『お疲れさまでーす。大変ですねー?』
ケイコも酔いが回り饒舌になる。
『まあ仕事ですからねー』
ケンジも軽いノリで返す。
『キムラさんはお酒強いんですか?普段も旦那さんと飲まれるんですか?』
ケンジはケイコの左手のリングを意識して会話を膨らませる。
『普段は全然飲まないんですよー。ホント久しぶりですよ。旦那はほとんど家に帰らないですし。』
ケイコが真面目に応える。適当に話を合わせればいいものを、根が真面目なので、旦那の話も普通に出してしまう。
『こんな素敵な奥さんがいるのに帰らないなんて、旦那さんもお忙しいんですね。』
営業トークの中にケンジの本音が入り交じる。




