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第6話
『今日は会社の忘年会だから帰りが遅くなるね。』
子ども達にそう伝え、ケイコは家を出る。ケイコの会社では12月第一週に事務所の忘年会を行うのが恒例。所長の意向で、社員だけではなく、取引先や業者にも幅広く呼びかける。もちろんケイコも参加し、ケンジも参加する。
取引先回りで遅れて到着したケンジは、空いている下座の席に腰を下ろし、始まったばかりの所長の話に耳を傾ける。そこはケイコの隣。乾杯の音頭の前に、グラスにビールを注いでいく。ケイコがケンジのグラスに注ぐ。
『お疲れさまです。タカハシさんですよね?』
ケンジははっと目を上げ、恐縮する。
『タカハシです。いつもお世話になってます。』
今度はケンジが注ぎ返す。
『いつも電話いただいたり、来店されてるんで名前は覚えてますよ。私はキムラといいます。よろしくお願いします。』
2人の瞳が交差する。
『乾杯~』
乾杯の合図でケンジとケイコのグラスが触れ合う。
2人のグラスを持つ手には、それぞれの指輪が煌めいている。




