第1話「プンプン丸とメソッ子とニコニコ隊長」
心の部屋のまんなかで、プンプン丸が足をふん!とならした。
プンプン丸は、心の部屋の大切を守る係だ。
それは大事だぞ!と思ったとき、誰より先に動く。
「もう!ゆるせない!」
すみっこでは、メソッ子が小さくなっている。
メソッ子は大切の記録係。
失ったものや悲しかったことを、忘れないように抱えている。
ぽた、ぽた、と涙が落ち、
ひらいてあったノートの上に丸いしみをつくっていた。
そこへ、ニコニコ隊長がやってきた。
ニコニコ隊長は、心の部屋を明るくする係。
誰かが笑うとき、だいたい最初に笑っている。
「なんだかにぎやかだね。どうしたの?」
プンプン丸はノートを指さす。
「メソッ子が、ぼくの大事なノートに涙を落としたんだ!」
メソッ子は、ぎゅっと手をにぎった。
「ごめん…ちょっと悲しいことを思い出して…止まらなくて…」
ニコニコ隊長は、ふたりの顔を見くらべる。
「そっか。プンプン丸は“だいじなものを守りたかった”んだね。メソッ子は“悲しい気持ちを出していた”だけなんだね。」
プンプン丸は、まだむすっとしている。
「でも、怒っちゃったんだよ!」
「怒るのは悪いことじゃないよ」
ニコニコ隊長は、やさしく言った。
「怒りは“ここは大事だよ”って教えてくれるサインなんだ。」
メソッ子は、涙をぬぐいながら聞いていた。
「わたしの涙も…サインなの?」
「そう。悲しみは“ここが痛かったよ”って教えてくれる記録なんだ。」
プンプン丸は、ぽりぽりと頭をかく。
「じゃあ…ぼくも、メソッ子も、まちがってなかったの?」
「うん。ふたりとも、ちゃんと役目をはたしてたんだよ。」
プンプン丸は、メソッ子のほうを向いた。
「ノートのこと、言ってくれてありがとう。ぼく、怒ったけど…ほんとは心配だったんだ。」
その様子を見ていた、心の部屋の片隅のポカポカさんが、そっと近づいた。
ポカポカさんは、心をあたためる係。
自分にも、誰かにも、やさしい気持ちを届ける。
「ちゃんと伝えられて、よかったね」
メソッ子は、小さくうなずく。
「涙が出ちゃうときもあるけど…話せてよかった。」
ニコニコ隊長は、ぱっと笑った。
「じゃあ、今日は新しいページを書こう。“怒ったことも、泣いたことも、ちゃんと話せた日”ってね。」
三人はノートを囲んで、ゆっくりと今日のことを書きはじめた。
怒り:プンプン丸(突撃隊長)
境界線を越えられたときに最初に出る。
悲しみ:メソッ子(記録係)
失った大事なものを忘れさせない。
喜び=ニコニコ隊長
場の空気を一瞬で明るくする。だいたい最初に笑う。
愛情=ポカポカさん
抱きしめ役。自分にも他人にも効く。




