参拾参の8 青葉区に聴けばいいじゃないですか!
衣食住と職に関する公的な複数の申請書が、おれが暮らし商売をする横浜市青葉区の区役所で受理されていないと分かったのは、二〇二一(令和三)年のことだ。担当部署の担当職員は、こう言う。
〈出ていません〉
受け取っていないとか、見当たらないとかではない。
問題の書類の多くは、パソコンで作成している。だから、その内容がそのまま電子的ファイル保存されている。しかし、すべて普通郵便で送ったので、配達の証明はない。
担当職員の言い分が、変わった。
〈××と××は、見つかりました。それ以外は、出ていません〉
見つかったと担当職員が主張を変えたのは、すべてパソコンで作成しおれの手元にファイルが残っているもの。手書きで作成し、そのファイルがおれの手元にないものは、すべて〈出ていません〉。
強烈な悪意に基づく恣意を感じる。
おれの申請書をすべて「なきもの」にしたい。しかし、活字で提出したものはおれの手元にファイルが残っているから、「なきもの」にするのは難しい。手書きの書面は、容易に「なきもの」にできる。
郵便事故の可能性を検討した。
しかし、日本郵便の調査に横浜市は、青葉区は、協力しないという。
なぜかーー。
郵便事故などではなく、おれが投函していないのだ、していないのにしたと言い張っているのだ、していないことを忘れているのだ。
担当職員の言い分をまとめると、おおむねこうだ。
しくじったーー。
区役所職員の良心というか常識を信じたおれがばかだった。パソコンで作成した分は手元にファイルが残っているのだと、無用なヒントを与えてしまった。
その時から、後に脅迫容疑(刑法二〇四条)の虚偽告訴(同一七二条)でおれを陥れようとしたという青葉区地域振興課長(当時)繁田智孝との闘いが始まる。
おれが郵便で提出したはずの書類に関する、二〇二二(令和四)年二月二十八日付け繁田文書(該当部分抜粋)は、こうだ。
《以前ご質問いただいた内容については、すでに担当からご説明させていただいておりますが、改めて書面にてご回答いたします
令和3年7月13日(略)にお伝えしたとおり(略)申告書の提出がありませんでした。その後、令和3年7月15日に提出をいただいたことを、確認しております。郵便事故等の外部の第三者の責任は、不明です。
「なんらかの意図を伴う組織的な行動」は、ございません》
繁田文書が《ございません》という「なんらかの意図を伴う組織的な行動」とは、おれを陥れるため、申請書を「なきもの」にする、強烈な悪意に基づく恣意のことだ。
同文書の《提出がありませんでした》は、法的にどういう状態を示すのか。例えば、民法(九七条)に基づく一般通念である、繁田ら側の「支配圏内」に到達していない、という理解でよいか。青葉区役所に尋ねた。誰も答えられない。
だから、横浜市役所に尋ねることにした。
インターネットの公式サイトトップページに記される番号〇四五-六六四-二五二五に架電する。二年前のマイナンバーカード問題のことは、念頭になかった。
〈きょうは、どのようなお問い合わせですか?〉
この言い回しで、二年前の悪夢を思い出した。役所の代表番号に架電し最初に出てくる交換手による第一声としては極めて不自然なせりふだ。
「法令部門を担当する部署に代わっていただきたい」
不自然さを感じながらも、用件を申し伝える。
〈はあ? ホーレーブモン?〉
「うん。法令部門」
〈どういうご用件でですか?〉
「あんたらの行政手続きを、法的に解釈していただきたい。ぼくの理解でいいか尋ねたい」
〈はあ? ギョーセーテツヅキ? ホーテキニカイシャク? なにをおっしゃってらっしゃるのか、分かりかねます〉
「分からんでいいよ。いいから、法令部門に代わって」
〈そんなブモンは、横浜市にはありません〉
「…名称は異なるかもしれんよ。だけど、法令を所管する、担当する部署は存在するでしょ?」
〈ございません〉
「じゃあ、あんたら、条例はどこが作ってるの? どこが管理してるの?」
〈ジョーレー? おっしゃってる意味が分かりません〉
「条例が分からんか? きみ、中学を卒業してないのか? 義務教育を終えてないのか?」
〈そんな、ジョーレーなんて、存在しません〉
「ほう。横浜市には、条例が存在しないのか?」
〈違います。そんな日本語は存在しません〉
「もう、あんた駄目。誰かに代わって」
代わって出てきた「誰か」は、クラモトと名乗る老女だ。二年前の、入れ歯ふがふが後期高齢者とのやり取りが、ありありとよみがえる。
「法令を所管する部門に代わって」
〈なぜですか?〉
「青葉区にね、郵送した書類が提出されてないって言われてんのよ」
状況を説明したおれの敗けだ。
〈だったら、青葉区役所に聴けばいいじゃないですか!〉
「青葉区役所じゃ対応不能なんだよ」
〈それなら、横浜市役所でも対応できません〉
「そうじゃなくて、青葉区の問題について、疑義の解釈をしてほしいのよ」
〈ギギノカイシャク?〉
「あなたがしてくれる?」
〈わたしでできることなら〉
「例えば、民法九七条でいうところの『意思表示の到達』に今回の問題を当てはめると、青葉区が主張する『提出がなかった』は、支配圏内への到達さえも否定するのかどうか」
〈…まったく意味が分かりません〉
「分からんだろ? 分からないでしょ? だから、分かる部署に代わって」
〈そんな部署は存在しません〉
「あのねえ、どこの役所にも、法令を担当する部署が存在するのよ。小さい自治体…町役場とかだと、総務の部門がやってるの。でも、横浜市は規模が大きいでしょ? だから、きみらに聴いてるのよ。頼んでるのよ。法令を担当する部門に代わって。代われないなら、その連絡先を教えて」
〈だから、そんな部署は存在しません。なんですか、ホーレーって。なんですかミンポーって。そんな日本語、ありません。聴いたことがありません〉
「あんたが『聴いたことがない』だけ。それとさっきのばあさんもだな」
聴いたことがないから存在しない、という狂った価値観に彼女らがまみれている実態を、後におれは確信するに至る。
〈シメキリが過ぎたのなら、青葉区役所に相談してみてはどうですか?〉
「締め切りいっ? なんだよ、締め切りって」
〈締め切りが過ぎたんでしょ?〉
「なんでそうやって、きみらは自分の仕事を増やすかな。自分で自分の首を絞めるかな。締め切りの話なんかしてないだろ? 締め切りなんか存在しないんだよ」
〈じゃあ、それでいいじゃないですか〉
まったく話にならない。
「とにかく、法令を、法律を、条例を、今、言ったうちのどれでもいいから、担当する部署に回して」
〈そういろいろと申しましてもーー〉
「きみ、さっきから『申しましても』とか『申す』とかを連発するね」
会話の節々で、おれの発言のはずのせりふを謙譲語で表現する。
〈それがなにか?〉
「どういうつもりで、そのワードを使ってるの?」
〈はあ?〉
「『申す』の主語はなに?」
電話口で誰か第三者と相談している様子が聴き取れる。
〈『言う』でございます〉
「ほう。きみらの職場では、『申す』の主語は、『言う』か?」
相談の結果であろう、クラモトは声高らかに、自信満々の口調でおかしなことを言う。「恥の上塗り」を繰り返す。
(「参拾参の9 AKB48を嫌いにならないで!」に続く)
※ 筆者急病のため、12月27日以降の更新(投稿)を当面、取り止め(休み)ます。健康状態が回復し次第、再会します。(2025.12.26 夜)




