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#17 喧騒と矛盾点



短い廊下を抜け大部屋に着くと奥の壁一面がガラス貼りの窓になっていて、外の景色が存分に堪能出来るようになっていた。

そして細長い飲み物専用冷蔵庫とホログラムTVと呼ばれる金属棒が部屋の両側に1つずつ備え付けられている。

「さっ、それじゃ早速さっきの話の続きを聞かせてもらおうかぁ?」

「うん、僕も詳しく聞きたいな」

やっと自分達の部屋に辿り着いた桑場屋武蔵達はそれぞれ自分のベッドを選び羽を伸ばしていた。

そして皆が一息ついた所で崎山が鋭い眼光をギラつかせ桑場屋武蔵に声をかける。

そんな崎山とこれまた興味津々といった面持ちで体を乗り出す酒井を見た桑場屋武蔵は厄介そうに耳の裏を掻いた。

「だからさっき言った通りだって.........御前崎っていう変な奴にストーカー行為をされてたのを十八鳴って奴に解決してもらってたんだよ」

バス酔いが残っていたのか部屋に着いた途端スヤスヤ仮眠を取り始めた倉落の隣のベッドで、桑場屋武蔵は天井を仰ぎながら語る。

「おめぇ前も生徒会に襲われたとか言ってたよなぁ?困った時は生徒会のせいにするのはおめぇの悪い癖だぜ桑場屋」

「確かに俄かには信じ難いよね」

猜疑心丸出しの表情の2人に桑場屋武蔵は地団駄を踏みたい気持ちになった。

「あぁ〜!!もうわかったよ!今から十八鳴のスマートフォンにメールしてやるから!それで証明してやるよっ!」

「お前そいつのメアドも知ってんのかよ!?」

「へぇ〜、仲良しなんだね」

崎山と酒井は揃って驚いたように目を丸くする。そんな2人を尻目に桑場屋武蔵はポスト・クロックのホログラムを出現させ、手慣れた動作でメールを送った。

「おい、なんて送ったんだよ?」

「友人の疑惑を晴らす為に部屋に来てくれって送った」

「え...........それは流石に迷惑じゃない?」

「悪いのはお前達だぞ」

「とんでもねぇなお前は............」

桑場屋武蔵は何故か偉そうにふんぞりかえりだす。それを崎山は呆れた表情で見やり、心の奥底でまだ顔すらもわからぬ十八鳴に謝罪した。

「おっ!?メールもう返ってきたぞ!?」

桑場屋武蔵が嬉しそうに右手の時計に注目し、ビュンという気持ちの良い効果音と共に再びホログラムが彼の眼前に浮かび上がった。


『差出人:十八鳴鷹海

宛先:桑場屋

Re:嫌だ』


「「「................................」」」


あの野郎..........!!!!


桑場屋武蔵は猛然と再度メールを送り直すよう躍起になる。

静かな一室に2人の少年の大きな笑い声が満ち響くのはその直ぐ後だった。











何かがおかしい、と墨岸が感じ始めたのは部屋に到着してから1時間程経った辺りからだった。

彼は自分の計画の最初の第一歩目としてPCを使いある作業をしていたが、ある違和感によってその作業は中々進展を見せない。


プロテクトが堅過ぎる.............?


そう、墨岸は旅館如月のネットワークをハッキングしようとしていたのだ。しかし、想像以上のブロックによって彼得意のハッキングはまるで効果を成さない。

彼はここで思考する、自分のハッキング技術に絶対的な自信を持つが故の思索を繰り広げた。


俺がハッキング出来ないのは国家級のセキュリティくらいだ..........それにも関わらず政府御用達の1旅館に過ぎないここのセキュリティを突破出来ないだと..........?


何故か苛立ちを見せながら旧式の電子媒体を小まめにポチポチと手繰る同室の幼馴染を横目に捉えながら、墨岸はこれから先の自分の行動について思いを馳せる。


とりあえずメインサーバーは別館にあることだけは分かった............ どうする?直接行ってサーバーを弄るか?だが暇潰しの浄化計画の為にそこまでするのもなぁ............

それに鷹海は完全に俺を警戒している、迂闊には動けない。ちっ..........面倒だ。

.............しかしこの違和感.......最早浄化計画はどうでもよくなってきたがどうもこの違和感は引っかかる。

このセキュリティパターンは普通じゃない。こんな辺鄙な場所にある極一部の人間しか寄らない旅館にここまで複雑で高度なセキュリティだと?不自然だろ...........


墨岸はPCをOFFにすると、暗い瞳に怪しい光を宿しおもむろに立ち上がった。

彼は新しい玩具を見つけたのだ、彼にとって虫ケラ同然の同級生をいたぶる事より遥かに興味のそそられる物を見つけたのである。


旅は道連れぇ..........


彼のような捻れた人格を持つ者特有の歪みを感知する鼻が闇の匂いを嗅ぎつける。

墨岸は目先の危険に向かって歩く事を思断したのだ、もう振り返る事はないだろう。


「ちょっと俺、散歩してくるよ」


墨岸は意味ありげに急に険しい表情になった十八鳴に微笑むと、独特の歩幅で扉の外へ軽やかに消えて行った。

彼は未来に興味がない、しかし、誰よりも早く正確に未来を感じ取ったのは他の誰でもない、墨岸古光、その人であった。











「誰だろこの子?もしかして気づかれた?」

真っ暗な大部屋で一人、背丈の小さな男が数え切れない程沢山に映し出されたモニターを頬杖をつきながら眺め呟く。

「さっきからやたら僕の創り上げたネットワークにちょっかいだしてくるんだけどなんなのかな?」

男は若干楽しんでるのであろうか、何処と無く嬉しい気に新たなセキュリティプログラムを追加していく。

男の笑い声が誰もいない部屋に寂しくこだまする、時折機械らしき物が動く音がするのみの部屋に久方ぶりに違う音が溶け込んだ。

だがそんな笑い声も長くは続かない、ある質量が彼の自意識を支配する事になるからだ。



「準備は出来たのか?竪忍?」



———闇そのものが発したかのような重厚で底冷えする声が、男の背中にふいに投げ掛けられる。

「リ..........リーダー...............」

竪忍の先程までの愉快そうな雰囲気は消え失せ、緊張の汗がとめどなく流れ出るのを彼は抑えきれなかった。

「準備は出来たのかと聞いている。それにアケチは何処にいる?」

「はっ、はい。準備は終わっていませんが、あと一時間も必要ありませんっ!あとアケチはまだこちらに到着していません。それにしても何故今こちらに.........?」

竪忍からリーダーと呼ばれた男の姿は暗闇に紛れてしっかりと視認する事が出来ない。

しかしそれでも竪忍は背後の深淵に振り返り、抱いた疑問を素直に露する。

「計画変更だ。日本の選定(・・)は我ら皆でやるつもりだったが、先にお前とアケチでここにいる分で構わないから選定を行ってくれ」

その言葉に竪忍は不可解といった感情にさせられた、念には念を入れる傾向のある自らの指導者が予定を急ぎに変えるのは珍しい事であるという彼の記憶からだ。

「心配はいらない。私が掴んだ情報によればここにいる子供達の中には抑止力クラスが一人もいないらしい」

「え!?抑止力クラスがいない!?それならそもそも選定を行う必要がないのでは・・」

「竪忍」

闇が言葉を発する、まさにそんな心地がする竪忍であったが、別段それが気分の良いものであるわけでもない。むしろ異常な威圧感に常時苛まれ、神経がすり減るような頭痛を覚える程であった。

「準備が出来次第、即実行に移せ」

「................分かりました」

有無を言わせない闇から、やがて、重苦しい質量が、消えた。

「ふぅ.............アケチさんまだかなぁ」

えもいれぬ緊張感から解放された竪忍は手の甲で額の大粒の汗を拭うと、知らぬ間に平常運行に戻っているモニターに目を移し、疲労の吐息をする。

「ってあれ?生命反応が2つ(・・)こっちに向かってる?」

竪忍は思案げに爪を噛む、モニターを睨みながら舌打ちをした。

「..................アケチ早く来い」

そして竪忍は忙しそうにまた何かの作業を再開するのであった。










「おい桑場屋もう諦めろようぜ?な?」

「うん、そうだよ。僕はもう桑場屋君が言ってる事半分信じてるよ?」

必死に十八鳴に向かってメールを送る桑場屋武蔵だったが、 ありとあらゆる理由をつけられ部屋に呼び寄せるのを拒否されている。今にも十八鳴にメールを無視され始めそうな勢いだ。

そしてそんな桑場屋武蔵を見て最初こそ面白がっていた崎山と酒井だったが、相手に全くされない様子がそのうちなんだか哀れに思えてきてしまっていた。

「あの野郎!危険な時はいつでもメールしてくれって言ってた癖に何でスルーすんだよ!」

「どう考えても今がその危険な時じゃねぇからだろ............」

「ん〜...........むにゃむにゃ..........」

寝言のうるさい倉落の隣で十八鳴を呼びつける事に狂奔する桑場屋武蔵には中々崎山の提言は届かない。

「じゃあ僕ちょっとお風呂に入ってくるね」

「おう、浴場に行くのか?感想宜しくな」

「畜生っ!何なんだよあいつ忙しいしか言えないのかよ!」

とりあえず話がひと段落したと判断したのだろうか、酒井は早めの入浴に行くようだ。

それに習い崎山も一心不乱に腕時計をいじくる桑場屋武蔵の方を見るのをやめて、しっとりと体を包み込む柔らかさのベッドに身を委ねる。


俺もあの阿呆を見習って昼寝でもすっかなぁ


そんな穏やかな時間がある電子音によって壊されたのは、崎山も睡魔に誘われ、部屋で覚醒状態にある人物が桑場屋武蔵一人になろうとした、まさにその時だった。


ピーンポーン


「おい桑場屋、誰か来たぞ開けてやれよ」

「お!?十八鳴の奴、文面ではあーだこーだ言ってた癖に実はもうこっちに向かってたのか!?」

インターホンの乾いた音が静閑な室内に鳴り響く、その反響に桑場屋武蔵が反応し、弾けるように扉の方へ駆けて行った。

「ほら今から証明してやるからな!!ってあれ?酒井はどこ行ったの?」

咲き誇るように笑う桑場屋武蔵だったが、扉を開けに行く途中で部屋から一人友人が減っている事に気づく。

「今更かよ..........あいつならひとっ風呂浴びに行ったぜ」

「なんて間の悪い奴なんだ!まあしょうがない。崎山に証人になってもらえばいいだろう」

桑場屋武蔵は憤慨したが、それほど気にしていない、というより訪問者に意識が完全に行ってしまっていたので直ぐに気持ちを立て直し扉のドアノブに手を掛けていった。


ガチャ


「ったく来るのがおそ・・・」

満面の笑みで来客を迎えた桑場屋武蔵の表情が青ざめ凍りつく。


生徒会は生徒会でも俺が呼んだ方じゃないんですけど...............


扉を開いた先の物音のしない廊下に粛然と立っていたのは、完璧な美貌と欠点の無いプロポーションを兼ね備えた絶世の美少女にして桑場屋武蔵が最も敬遠し苦手とする女子生徒だった。

「貴方に話があるの、桑場屋武蔵」

完全に硬直した桑場屋武蔵に語りかけるその女性の声には何の感情も篭っていなく、そしてその美しい顔は一切の心情も表現していなかった。






ん?どうしたんだ桑場屋の奴?


ベッドに寝転がっていた崎山は玄関に姿を隠した桑場屋武蔵の雰囲気が激変したのを敏感にも感じ取った。


やっぱりあの生徒会の十八鳴とかいう奴を怒らしてて今絶賛睨まれ中か?


崎山は眠そうな眼を擦りながら簡潔な廊下の方へ近づいていく。桑場屋武蔵の知り合いでもある生徒会の人間がどのような人物なのか興味があったからだ。


さてさてこの学校の上位組織の一員てのはどんな面してんだぁ?


「お、お前は俺に近づいちゃいけない約束だったろ?」

「ええ、確かにそうね」


っておいおい!?あの女は何だぁ!?


しかし、崎山が覗いた桑場屋武蔵の先に立っていたのは尋常ではない存在感を纏う女子生徒であった。

咄嗟に危険な空気を嗅ぎ取った崎山はその女性の視界に入らないよう反射的に身を隠す。


何だか知らねぇがアイツはヤベェ匂いがプンプンすんぜぇ?

桑場屋が言ってた生徒会の奴ってのは確か男だったよなぁ?ってことはつまりあの女が噂のストーカー女なのか?

桑場屋にストーカーっていうのは俄かに信じらんねぇが..........あの女ならやりかねないオーラは確かにすんな。これは助けにいった方がいいのか?


崎山は暫し考える、どういった状況なのかまだまるで掴めていないからだ。

そして結局情報、状態が集まるまでしばらくの間見守る事に崎山は決めた。


とりあえず様子見だな...........


「でも今回は謝りに来たの。これまでは貴方に不快な思いをさせたと思って」

「いやいや謝るのなんて滅相もない、気にしないで下さい」

桑場屋武蔵はいつ殴りかかられるかわからない恐怖から大量の冷や汗をかきながら眉一つ動かさない御前崎という名の女子生徒を注意深く見やる。

「いえ、それじゃ私の気が済まないの。だから謝罪をさせてちょうだい?さぁ二人っきりになれる所に行きましょう?」

「え!?その謝罪って言うのはここじゃ無理なんですかね!?」


何だよ二人っきりって.........普通は美少女と二人っきりだったらボーナスゲームだけどお前の場合罰ゲームにしかならないだろ。ていうか怪し過ぎんだよっ!


「ええ。ここじゃあ無理ね。私、二人っきりじゃないと人に謝れないの」

「...............そうなんすか。というか本当謝罪とか要らないんで.........はい.....大丈夫です」

淡々と話す御前崎に桑場屋武蔵は最早畏怖の感情を抱いていた。

完全に彼の理解の範疇を超える御前崎に頭痛すら催し始める。

「あら?それとも生徒会の人間と二人っきりになると不都合な事でもあるの?もしそうなのならやはり貴方は不穏因子だと判断して今ここで正体を暴くわよ?」

ここで御前崎の表情が初めて変わった、そう、悪魔のような薄笑いに。


はあ!?何だよそのふざけた理屈は...........!?

二人っきりになるのを拒んだら不穏因子だって?まるで意味がわからない!!!これは俺が馬鹿だから理解出来ないのか?どういう理屈で人の謝罪を断ったら危険人物確定になるんだよっ!!!

...........というかこれ詰んでるよな?

のこのこ着いて行ったらひと気のない場所でボコボコにされる、拒否したら多分俺の友達も巻き込んでボコボコにされる............

こいつは腐っても生徒会、前に倉落もボコられたって言ってたんだから普通の高1女子じゃないんだろう。

糞っ!どうする..........?


いよいよ桑場屋武蔵の体は全身汗でグッショリ濡れてきてしまった。

彼は頭をフル回転で思考させる。解決策を必死で求める。

「さぁ、それじゃあ行きましょう?」

「あ、ああ.............わかった.........」

満足した様に卑下た笑みを深くする御前崎は可憐に歩き出す、それに桑場屋武蔵は渋い表情で着いて行くしかなかった。


みんなは巻き込めない...........仕方ないか。

でもこいつは何でまだ俺に執着するんだ?俺が十八鳴に連絡すれば同じ生徒会同士の抗争になるんじゃないのか?それともこいつは十八鳴より圧倒的に強い?う〜ん........よくわからないな.........もしそうだったとしたら牧場で俺と十八鳴をまとめて潰せたはず..........何で十八鳴を呼ばれる事が抑止力として働かない?

いや違う!!

こいつはいつでも俺が十八鳴を呼べる事を知らないんだ!!

全く俺は馬鹿だなぁ!俺とあいつが連絡先を交換した時こいつはもう居なかったじゃないか!!!

よし!だとしたら話は早い!!十八鳴にメールを送ればそれで万事OKだ!!!流石にあの野郎も御前崎関連だったら俺のメールを無下にはしないだろう。そのために連絡先を交換したんだからな!!


御前崎の背後を歩く桑場屋武蔵に笑顔が戻っていく。

彼は自信満々でメールを御前崎に気づかれないよう十八鳴に送った。

そして彼にとって嬉しい事に直ぐに返事は返って来た。彼はしてやったりとした視線を御前崎の姿勢の良い背中にぶつけるとメールを盗み見る。


『差出人:十八鳴鷹海

宛先:桑場屋

Re:嘘つけ』


なんでだよっっっ!!!!!!


ひと気のない廊下を歩く桑場屋武蔵は1人静かに咆哮した。











タンタンタンと小刻みに地面を踏み鳴らす音が一定のリズムで女の耳に入ってくる。

女の隣の男は不機嫌になると、この音を奏でる癖があったのだ。

「遅いですね」

満月の神秘的な夜光の元、タキシード姿の男は目を細めながら呟く。

その呟きには一見何の感情も含まれていないようではあったが、その男と付き合いの長い女にはそこに僅かな苛立ちが内包されているのが分かった。

「入り口付近で爆発音が聞こえてから一向に詳細の連絡が来ませんね。ブルー・ヒル、私は確かに皆に報告、情報こそが1番大事だと伝えましたよね?」

「うんそうだね〜、瀬田は確かに言ってたね〜」

奇抜な格好の女は若干愉快そうに相槌を打った。

「仕方ありません。直接私が現場に行って報告の重要性を説いてきましょう」

「ありゃりゃ!?瀬田が怒ってるぅ〜!」

女はけらけらと笑う。血の臭いが充満するその場所で悦楽の表情を見せるその女はさながら悪鬼の様であった。

そんな女に向かって痩身の男は何か言おうと口を半分開きかけたが、途中で何か異質の気配を感じたように身を強張らせる。

「ん?どうしたの瀬田?そんな急に殺気なんか出しちゃって?」

突如緊張感を見せる青白い肌の男に全身血だらけの女は不思議そうに問い掛けた。

「...........どうやら私は勘違いしていたようですね。報告を怠っているのではなく、報告が出来ない状態にあったようです」

使用感のまるでないタキシードを着る男は何の形も見えない闇に目を凝らす。

遅れて女も何かに気づいたようにニヤリとし、真っ赤な舌で自分の唇を舐める。

「へぇ?あいつ死んだんだ?」

軽装の女は闇からじわじわ浮き出る赤い色彩に焦点を合わせると可笑しそうに暗くて冷んやりとした空気に一人囁いたのだった。


「見つけた。コイツらだ」


そして、異様な雰囲気と共に闇夜から出現した紅髪の少年も女と同様に、まるで宝物を探し出した子供の様に嬉しそうな表情をしていた。











ガシャン

「ん?」

モニターに釘付けだった竪忍は部屋の自動ドアが開けられ、何者かが侵入して来たのを感じ取り、扉の方へ振り返った。

「ここに辿り着いた生体反応はなかった、ということはつまり..........」

竪忍は自分の方へ近づいてくる足音に向かって憤怒の表情を向ける。

「いや〜、やっと着いたで。ほんまごっつ遠いじゃけえのうここ」

「遅いよアケチさん!!!」

のうっと現れた麦わら帽子の男に竪忍は怒号を上げた。

それに対して明智(アケチ)と呼ばれた男は困ったように頬を掻きながら言い返す。

「そんな事言われてものう。これでも結構急いで来たんじゃが・・」

「いーや遅過ぎるね!」

やや泥の付いた袴姿の明智はこれに少しムッとする。

「何じゃ何じゃその言い草は!まだ他のメンバー達だって来てないんじゃから別にいいじゃろ!?」

竪忍の一方的な言い草に納得いかないとばかりに言い返す明智に竪忍は小馬鹿にした態度で軽く笑った。

「リーダーなら随分前に来て、僕と明智さんだけで即実行に移せと作戦変更を伝えてくれたよ」

「何じゃと!?いくら何でもそれはリスキーなんじゃないのかいのう?」

「この旅館にいる分だけでいいらしいよ。それに抑止力クラスは今ここに来てないらしい」

そう言われた明智は益々不可解そうな顔をしたが、最後には納得したように顎を一撫でした。

「まあ、あのウサギの旦那が言うんじゃ。きっと何か意味があるんじゃろう」

竪忍はモニターに振り返り、またもや慌ただしげにコマンドを入れていく。

「それじゃあ早速選定を始めるよ。とりあえず明智さんはなんかここに近づいてくる4つ(・・)の生体反応があるからそれを選定してきて。旅館の中は一旦僕が全部預かるから」

「はぁ..........もうやるんかいのう.......少しは休ませてくれても・・」

「はいはい行った行った!リーダーに即実行って言われてるんだから!!」

気怠そうな声を出す明智の背中を竪忍は体を半分背後に捻って押し出す。

「ほんま報酬は弾んで貰うでぇ..........」

そして明智はぶつくさ言いながらも再び部屋の外に旅立って行った。

「よし。これで準備は完了だ」

竪忍は少し汗ばんだ体を手で扇ぎながら大きく深呼吸をする。

「選定の始まりだ」

竪忍は覚悟を決めた真剣な面持ちでモニターの真ん中をクリックした。

すると約1秒後、政府専用旅館如月が、けたたましい警戒音によって混沌とした喧騒に包まれた。











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