#12 問題は矛盾点
「・・・という訳で始まりました!!第55回生徒会本会議!!!い〜やっほ〜!!!!」
「...........」
「会長、前回は第87回と言っていましたよね?もうその会議を始めるさいのやかましい音頭は止めて下さい、不快です」
「い、いぇーい......?」
「ズズズ....... スピー...... ズズズズ........」
「今日の議題は何ですか?今年度は本会議やるの早くないですか?」
「へっへっへ!俺はもう大体予想はついてるっスよ!?今回の議題!!」
白神が腕を高く振り上げると、白と黒で彩られた生徒会室に集まった他の生徒達が、一斉に彼女の方を三者三様の反応をしながら見つめる。
「ちょっと友里香ちゃん怒んないでよぉ.... 」
「別に怒っていません。ただ散々待たされたあげく、謝りもせずそんなふざけた態度をとられたので少しイラついてるだけです」
「それを怒ってるって言うんスよ」
大きな卓上テーブルを囲む生徒達の胸には全員同じ様な銀色のバッジがついている。
「まあ怒りんぼの友里香ちゃんは置いといて.....7人全員いるわね?..... ってあれ?6人しかいない?リュウタはどこ!?」
「......... りゅうーちんならサボりです。....... はい」
白神が御前崎から向けられる刺々しい視線を慣れたようにいなしながら部屋に集まった人数を数えた後、何かを探す様に辺りをキョロキョロとしていると、青色のネクタイをした華奢な少女がその探し物が絶対に見つからない事を伝えた。
「あいつはまたサボりか...... 自由人だからしょうがないか......」
「年功序列の意味をあいつは分かってないみたいね。馬鹿のオオスカ先輩ですら来てるというのに。やはり一度殺しましょう」
「お、御前崎先輩っ!?いくら何でも本気じゃないですよね!?それにオオスカ先輩にも少し失礼なんじゃ.......」
「まあ、オオスカ先輩は来てるっつても、寝てるだけっスけどね」
「ズズズッ.......スピー.....ズズ........」
「も〜、リュウタはしょうがないなぁ..... まあ仕方ない、とにかく会議を始めよっか!あ、モモカ、ヒロシは馬鹿だからそのまんまにしといていいよ」
白神は、机に突っ伏していびきをかいている少年を起こそうとする黄色いネクタイで長めのポニーテールを胸の前に垂らす少女に注意を促す。
「え?いいんですか?」
「うん、いいのいいの。後で私が正義の鉄槌を下しとくから」
「オオスカ先輩.... 御愁傷様っス........」
ホワイトボードを背に部屋の1番奥の席に座る白神は、部屋の全員を見渡してから1度間をとり、そして喋り始めた。
「......おほんっ!........今回の話は先週の金曜に起きたある事件の事よ」
「やっぱりそれっスね!?」
「........ 認めないわ」
白神が改まって話し始めると、2人の生徒を除き部屋の生徒達は口を閉じ彼女に注目した。
「もうこの中には知ってる人もいるんだけど、実は先週“紫苑の抑止力ー毒茸”である行方苳也が、<制裁>中に気を失い、顎の骨の骨折等の傷害で病院に搬送されたわ」
「......おい嘘だろ。学年で噂になってる行方の入院の理由ってまさかそれなんですか!?」
「信じられない.....!あの行方先輩が.....?」
「...............」
「俺も驚いたっスよ。窓がフレームごとぶっ壊れてたっスからね」
「どうせ行方が手を抜いたに決まってるわ!」
一気に騒然とする生徒会の面々を見て、白神は満足そうに頷く。
「でしょ!?びっくりでしょ!?!?」
「会長!それで誰なんですかその時の<制裁対象>は?」
紫色のネクタイをしていて、垂れ目だが力強い眼光を放つ少年が身を乗り出す。
「あ〜...... 実はその子今年の編入組の子だからよくわかんないんだよね〜」
「え!?編入組なのに行方先輩を倒しちゃったんですかっ!?!?」
「............ ありぴー先輩、その人は推薦組ですか?」
「お?よく分かったねハルカ!?一応推薦組ではあるみたいだよ!」
「でもいくら推薦組だからって行方を能力を手に入れてから数日で倒せる訳ないと思うんですが」
「まあ、その<制裁対象>だった桑場屋って人もボロボロだったっスよ」
胸に九十九里秀輝と刻まれたバッジをする細目の少年が横から口を挟むと、何人かの生徒はその言葉に不思議と驚きを持った様だった。
「え!?九十九里君もそこにいたの!?!?」
「おい九十九里、お前は実際の<制裁>を見たのか?」
「私と九十九里と副校長は現場にいたわ。実際に戦闘を見たのは副校長だけだけれど」
副校長という名前が御前崎の口から放たれた瞬間、部屋が一旦静まり返った。
「..........この件は副校長が関与してるのか」
「そう、そこが問題なのよ!あの人秘密主義でしょ?だから今回の件の最重要人物である『桑場屋武蔵』という謎の人物について全然情報をくれないのよ!ただ『君は気にしなくていいですよ。苳也君が抑止力である事は変わりません』とか抜かすだけなのよ!?」
「........ <制裁対象>に選ばれるくらいですから、危険人物なのでしょうか?」
黄色いネクタイをした丸顔の少女は心配気におずおずと尋ねる。
「う〜ん...... 実際会ってみたけど変人ではあるけど危険人物かと聞かれるとね〜......」
「あれ!?会長も会ったんスか?」
「会長に変人扱いされるとは、違う意味で危険なのは確定だな.......」
「まあ、とにかく桑場屋武蔵っていう奴には暫くの間全員注意しておいて。あの子はどう考えても私達<校長サイド>ではなく、<副校長サイド>の住人よ。私達の仕事は<副校長サイド>の監視が最重要よ、分かってるよね?」
「当たり前っスよ!!」
「はい、頑張ります!」
「ほんと俺の学年は面倒だな.... TOAの紫の闇とはよく言ったもんだ.......」
「.......任せて下さい。危険因子はこの世から消滅させます」
「...............めんどい」
「ズズッ..... ズズズズ..... スピー....」
そして白神はおもむろに立ち上がり、今回の会議が終了した事をその表情で暗に伝える。
「なんか最後の方の返事が不安だけどこれで今回の本会議は終わりよ!何か他に話して起きたい事ある人いる?」
殆どの生徒はもう立ち上がって、部屋から出ようとしていた。
だがしかし、白神の呼びかけに1人だけ一瞬顔を強張らせた者がいた。
それに隣の席に座っていた九十九里だけが気がついた。
「どうしたんスか?クグナリ先輩?」
「んっ!?何がだ?九十九里?」
「いや..... 何か気になる事がありそうな顔だった気がしたんスけど・・・」
ぞろぞろと他の生徒達が白神の言葉に対した反応もせず退出していく中、九十九里は何かを迷っているような目の前の筋肉質な少年を見やる。
「はい!君はちょっと残ってえ〜」
九十九里の質問に少し焦ってるようで返事を躊躇うその少年の肩に白神の白い手が突然乗せられた。
「悪いね秀輝、ちょっと内密な話があるから外して?」
「え?そっスか...... 分かったっス....」
九十九里は白神の一見純粋そうに見える笑顔と隣の少年の困惑したように見える顔とを見比べながら部屋を後にした。
「・・・で何のようですか?」
1人眠り続ける生徒から離れた部屋の角に連れていかれた少年は、若干哀愁を帯びた表情の少女に声をかける。
「..........うん、実は友里香ちゃんの事なんだけど、あの子事も見張っておいてくれない?多分無茶な単独行動をすると思うから......」
「........御前崎がですか?..... 分かりました」
少年は何故そう思うのか疑問に思ったが、その少女の蒼い眼を見て、それ以上聞くのを止めた。
「うん、じゃあ頼んだよ?タカミ?」
白神は指先で少年の十八鳴鷹海と書かれた胸のバッジを少し叩くと、安心した様にニコリと笑い、いつまでも眠り続ける長髪の生徒の方へ歩き去っていった。
「ほんと..... 面倒な学年に生まれちまったな......」
十八鳴は白神が油性ペンを大量に用意するのを横目で見ながら、他の生徒達がそうしたように、生徒会室を静かにあとにした。
「はぁっ.........!はぁっ......!!かっ....ん...はぁ.....!!!」
心臓の鼓動が俺に限界を知らせている。
でも俺は心臓の負担を軽減させてやることが出来ないでいる。
ワイシャツの下に着込んでいる黒のTシャツが汗で肌にベッタリと張り付いているが、その事にも今は注意を向けられない。
背負ったリュックサックに大した中身は入っていないはずなのに、自分が足を踏み出すたびに大袈裟に揺れるこいつが鬱陶しくてしょうがない。
「あのっ....クソババアっ......!!!」
俺は右手の見慣れた腕時計にまたも目を移す、時刻は9時29分、最悪だ。
坂道をどんなに急いで駆け上がろうとしても、俺の両足は鉛の様に重くて言うことを聞かない。
「はぁっ......!こんな時にっ....!時を止める事が出来ればなっ.....!!」
俺は左手にある白い傷1つ無い新品同様のブレスレットを視界に入れて軽く悪態をつく。
畜生....!い〜んだ別に!!俺は他の奴らとは違う!特別な存在なんだっ!!!
というかそうでも思わないとやってられませ〜んっ!!!
額に大粒の汗が流れる、やっともう見慣れてきた某テーマパークの様な派手な校門がその姿を現したみたいだ。
「こういう時こそ、実は腕時計が数分早めにズレてました、ってな具合だといいのになあ......」
まあ、実際は超正確に時を刻んでるんでしょうが......
俺は高校生になってからやたら調子の悪い、右手にピッタリくっ付いた付き合いの長い友人を懲りずにまたも見やる、 時刻は9時37分、最悪だ。
今日の天気は久しぶりの曇天、俺の心模様と不思議と一致していた。
「なぁ桑場屋?やっぱりお前俺を舐めてるよなぁ?2日連続でピンポイントで俺の授業を遅刻するてどゆこと?」
「違うんです先生!何故か俺の目覚まし時計がぶっ壊れてたんです!!それで起きたら俺の母さんがドヤ顔で・・・」
「あ〜!もう分かった分かった!!とりあえず座れ!」
1-E組の担任である橋本は、目の前のボサボサの髪から2つの寝癖が突き出ている少年を見下ろすと、ペチっとデコピンをした。
「痛いっ!?先生何するんで・・」
「早く席につけっつってんだろ」
2時限目の授業に約10分遅刻した汗だくの桑場屋武蔵は、若干怒っている様子の橋本の威圧から逃げるように自席についた。
「グッモーニンッ!クワ!!相も変わらず問題児ですなぁ〜!?」
「うるさいうるさい!絶対にこれは何かの陰謀だ.........」
彼が席に座った瞬間、待ってましたとばかりに1つ前の席の男子生徒が彼の方に振り返ってきた。
「朝から騒がしいね.... 全く.... 遅刻するくらいなら寮に入れば良かったのに」
そして桑場屋武蔵はさらに左隣りから聞こえてきた凛とした声に顔を傾ける。
「あれ!?岡月?もう体は大丈夫なのか!?」
「え!?あ、うんっ!大丈夫だけどっ!?」
「そうなの?顔まだ真っ赤なまんまだけどいいのか?」
「止めろクワっ!朝っぱらから俺にイチャイチャを見せんでくれっ!!!」
「ちょ、ちょっと、倉落君!?」
「倉落..... これが現実だ.....」
「こっ、こらっ!!桑場屋も変なノリに乗っからないでよねっ!?」
「あぁ〜!!岡月さんがクワを知らない間に呼び捨てにしている〜!!!」
「倉落..... これが現実だ.....」
「止めてって言ってるでしょうがぁぁっっ!!!!」
岡月が顔から湯気が出そうなほど紅潮しながら右隣りの少年達に叫んだ時、3人の前にヌッと大きな黒い影が立ち塞がった。
「そうだな、お前らは授業止めるか?」
不気味なほどピクピク頬が痙攣している笑みを携えた橋本が3人を見下ろすのが見えて、桑場屋武蔵の引きかけていた汗が再び溢れ出そうとしていた。
「ち、違うんですせんせ・・」
「お前らは廊下に出て頭を冷やしてこおおおおいいっっっっ!!!!!」
1人の生徒が遅れて入ってきてから乱れてしまった教室に再び静寂が戻った。
岡月真子、今年TOA高等部に入学したその少女は隣りに立つ自分より約10cmほど背の高い茶色い眼の少年を睨みつけていた。
「いやいやだからこれは八割倉落が悪いからね?そんな俺ばっかり睨まれても困るんですが.....?」
「は!?どういう事だよ!?全部俺のせいか!?」
「.....いやだから八割だって言ってるだろ?残り二割はおか・・」
ここで桑場屋武蔵は、自分を睨みつける岡月の眼の奥に暗黒の炎が滾っている気がして最後まで言い切る事が出来なかった。
「(おいクワ、岡月さんガンギレじゃんか.... これどうすんの?)」
「(元はといえばお前が変な事言うからだろ?ねえ?どうしてくれんの?ねえ?)」
「(それはそうだけど、クワもノリノリだったじゃんか!)」
桑場屋武蔵と倉落がヒソヒソと小声で会話している時も、岡月のギラついた視線のその炎の強みを増すばかりだった。
もう早くチャイム鳴ってくれよ.......
桑場屋武蔵は半分泣きそうになりつつ天井を見上げた。
「はぁ〜.... もう最悪っ!遅刻してきた誰かさんのせいで廊下に立たされるなんて!!」
「だからゴメンって、悪かったよ」
「俺からも謝るよ岡月さん、本当に申し訳なかった!」
2時限目の授業が終わり、休み時間となりやっと教室に戻る事の許された3人は、クラスメイトの冷たい視線を浴びながらも自席についていた。
「3時間目は何〜?倉落〜?」
「ん?昨日の放課後言ってただろ?親睦会の班と部屋を決めるんだよ」
「え?ちょっとさっきの件はもうおしまい?」
「何だよ岡月?しつこい女はモテないぞ〜?」
「何かそれちょっと違くない!?で、でもそっか...... しつこいのは良くないか......」
お?ラッキー!岡月は意外に簡単に引いてくれるんだよなあ。
桑場屋武蔵は何故か顔をほんのり赤くして黙り込む岡月を見て、心の中小さくガッツポーズした。
キーンコーン カーンコーン
「よし、じゃあ早速班を決めるぞ!ガッハッハッハ!!」
ほんとに早速だな......
チャイムが鳴り、部屋に戻ってきた瞬間大声で教室中にそう宣言した橋本を見て、桑場屋武蔵は不思議と感心した。
「我がクラスは幸い男20人、女20人とバランスのいいクラスだからな!男3人女3人の班を五つ、男3人女2人、男2人女3人の班を一つずつ作ってくれ!分かったな!?」
ん?この感じはまさか......!
「よし!じゃあ自由に教室を移動して自由に決めてくれ!!班が決まったら俺に報告して班で固まったまま待機してろよ!!」
やはり...!自由制...!!
「よ〜し、スタートォ!!」
そう橋本が高らかに宣言した後、暫しの沈黙に教室は包まれた。
そして数秒後、堰を切ったように教室がザワザワと蠢き出した。
「なあ倉落?どうするんだ?誰にも話しかけられないけど?」
「んな事言われてもな.... 俺自分から女子に話しかけられないし......」
班決めが始まってから約5分、クラスの人間の3分の2は自席から立ち上がり、教室を動き回りながらザワザワと会話をこなしている。
そんな中、桑場屋武蔵と倉落は2人揃って教室の1番後ろの壁に寄り掛かっていた。
「どうするよクワ?可愛い子は急がないと他の輩に取られちまうぜ!?」
「お前女子とまともに会話出来ないくせに何言ってんだよ」
「それとこれとは話が別さっ!」
教室内を辺りを伺いながら動き回るクラスメイトを眺めながらも2人は動かない。
「おい見ろよクワ!ヤマザキの野郎何か女子に囲まれてドヤ顔してやがるぜっ!」
「まああいつ背も高いし顔も結構いいしな、地獄に落ちろって感じだよな」
桑場屋武蔵と倉落は数少ない友人と自分達との差を目の当たりにして、知らず知らずの内に妬みの視線をその友人に送っていた。
「本当、君達は悲しい子だねぇ〜」
そんな2人の隣りに短髪で大きな黒目の少女が知らぬ間に現れていた。
「ってあれ!?岡月お前いつの間に!?」
「お、岡月さん!?まさか俺達と同じ班に!?!?」
「さっき前の子に同じ班になろうって誘ったら、『え?でも岡月さんってあの不良の子と同じ班になるんでしょ?私不良の子って苦手だから..... 』とか言われたんだからっ!!これどうしてくれんの!?!?」
その岡月の言葉を聞いて、桑場屋武蔵は顔を青ざめさせ、倉落は口を大きく開けて唖然とした。
「嘘.....だろ...?俺が不良......?」
「もう最悪じゃんかっ!!女子が誘ってこないと思ったらクワのせいだったのかよっ!!」
おいおい..... いつから俺はこのクラスで不良キャラになったんだ?
そんなキャラやった事無いんだけど?これヤバくね?俺の高校生活ヤバくね?
「もう君のせいで私まで評判落ちてるんだから、責任とってよね!」
「何故だ..... どこでミスったんだ....?」
言葉とは裏腹に笑顔で桑場屋武蔵の横に彼と同じ様に壁に寄り掛かった岡月に比べ、彼本人はこの世の終わりでも見たかのような表情をしていた。
「あぁ〜!友人選び失敗したぁ〜!!俺のモテモテ高校ライフがぁ〜!!!」
そして倉落は倉落で頭を抱えて悶絶していた。
だがそんな対照的な3人の元に背中の沢山の女性の視線を浴びた大きな人影が迫って来ていた。
「な、なぁ!やっぱ俺もおめぇらの班に入れてくれよ!頼むぜ!?」
そこにはさっきまで大勢の女子生徒に囲まれていた崎山の姿があった。
そんな崎山を倉落は一瞥すると、大きく舌打ちをした。
「はい〜?裏切り者が今更何の用だぁ?あん?この高身長イケメンがっ!!!」
「俺が..... 不良....?何故.... 何で.....?」
「う、裏切り者?というか桑場屋大丈夫か?」
崎山は何故か不機嫌そうに自分を睨みつける倉落と、取り憑かれた様にブツブツ呟く桑場屋武蔵を見て怪訝な顔をした。
「あ、ゴメンね崎山君。今、ちょっと桑場屋は壊れてて..... あ、班の事なら私は構わないよ」
「そうか?あんがとよ岡月さん」
「い〜や俺は構うぞヤマザキ!!条件が1つあるっ!!!」
「あ?何だよ条件って?あと崎山な」
崎山は人差し指をビッと自分の鼻先に突き付けてきた倉落に、突き付けられた指を払いのけながら聞き返す。
「.......可愛い子を1人でもいいから連れて来てくれ。頼む.....」
倉落は最初とは打って変わって切実な声で崎山に拝んだ。
それに崎山は静かで落ち着いた低い声で答える。
「........ 悪い倉落。俺あの子達におめぇらと組むから一緒の班になれないっつって来たんだ」
「.................. ファッキンジャァァッップ!!!!!!」
「不良...... 俺が?..... クラスの人気者になるはずだったのに..... 何故だ....?.....不良?」
「駄目だこいつら......... みんなにもうこの班に入るって言っちゃったの?崎山君?」
「あぁ..... 少し後悔してるがしょうがねぇ..... 俺ああいう子達苦手なんだよ。苦手な奴らと組むなら変人どもの巣窟にいた方がマシだ」
「ふ〜ん、君も大変なんだね.....」
岡月は自分がその変人どもの中に含まれているなどとは露も思わず、自分達の方を憎しみの込もった目つきで睨みつける女子の集団を横目で捉えると、隣りでオロオロし続けるボサボサ頭を軽く叩いた。
「ほら桑場屋!そろそろシャキッとしなって!!最低でもあと1人女の子が必要なんだからっ!」
「岡月〜、どうすればみんなの誤解を解けるんだあ〜、助けてくれえ〜」
「ザキクソのせいで何故か俺達は女子からとてつもない敵対心を持たれたようだぜ.....」
少しやつれた様子の倉落は黒板に3つ固まりごとにどんどん書かれていく女子生徒の名前を見て、死んだような声で皆に言った。
「ちょ、ちょっと!?く、くっ付かないでよっ!?」
だが岡月は自分の片腕が桑場屋武蔵にしがみつかれ、顔を真っ赤にして硬直するのでそれどころじゃなかった。
「あぁ、成る程。あぁやって先に女子の固まりを作る事で俺達と同じ班にならないようにしてんのか...... 」
崎山は顎に手をやり納得したようにうんうんと頷く。
「はぁ..... イチャイチャしてるカップルと物分かりの良いイケメンか..... もう死のうかな.....」
倉落は失意の余り座り込んでしまった。
「........ どこかに天使はいないのか?」
倉落は現実から逃げるように目を閉じる。
「すいません?」
.........ん?何だこの可愛いらしい声は?
倉落が目を開けるとそこには、背が低く目が小さくて、艶やかな黒髪にカチューシャを付けた可愛いらしく、それでいて清楚な女子生徒がいた。
「私、和慈秋と言います。女子で唯一私が余ってしまったので貴方達の班に入れてくれませんか?」
.............来た、俺の天使.......!
「?」
和慈は自分が頭を下げた生徒達の中に、何故か座り込んだまま涙を流して自分を見つめる男子生徒がいる事を不思議に思った。
「『1-E組、第7班、倉落優人、桑場屋武蔵、崎山慎吾、岡月真子、和慈秋』.....これはまた面白い班編成になりましたね、橋本先生?」
「自由に決めさせた結果ですよ。それで本当にいいんですか?今回の親睦会に行方を連れて行かないで?」
広いスペースをまったく有効活用していない副校長室の真ん中のソファーに寝転がったまま書類を眺める右々木に橋本は問う。
「ええ、大丈夫でしょう。友里香さんも鷹海君もいますしね」
「そうですか〜?何か私は不安なんですよね!」
橋本は腕を組んで頭を思案げに傾けた。
「もし、もしですよ?生徒会クラスの能力の持ち主が問題を起こしたらどうするんですか?」
「生徒会は各学年に2人はいますから、2人が力を合わせれば抑止力クラスの人物が暴れないかぎり大丈夫でしょう.......」
「う〜ん.....まぁそうなんですが......」
右々木の答えに橋本はイマイチ納得がいかないように唸り続ける。
「........ まあ生徒会自身が問題を起こしたら話は別ですけど........」
右々木の独り言はいつも通り橋本の耳には届かなかった。




