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紅葉の視点・ユータくんと超ムカ付く香山

-廃倉庫-


 ナイフで脅されて連れてこられて、ビニールのホモで手を縛られて監禁されちゃった。誘拐犯ゎ、少し離れた所にあるドラム缶の上に座ってる。周りにゎ何にも無いから、大声出しても誰も助けに来てくれそうにない。


「こんな事して、ごめんな。」


 バカなんぢゃね?きっとバカなんだね。謝るなら、最初っから捕まえるなっての。


「僕はどうしてもアイツ(ユータ)を消したいんだ。

 だけど、既に1回失敗をしたから、次は僕がアイツに近付く前に、

 アイツは僕に気付いて逃げてしまうだろう!

 だから、君のツレが僕の要求を呑めば、君に危害を加える気は無い」


 さっき、ァタシのスマホに燕真から電話がきたんだけど、アイツが勝手にお話しをして、「ユータくんを連れてこい」って、いかにも悪役ってみたいなことを言ってた。

 ァタシが捕まったの、燕真が知ったからチョット安心。でも、誘拐犯が変質者で、ァタシにエッチなコトしてきたらどうしよう?縛られちゃってるから戦えない。それに、ユータくんと交換になるのゎ、ユータくんが可哀想だからダメ。


「ねぇ・・・なんでユータくんを消したぃの?」

「へぇ~・・・名前まで知ってるんだ?

 僕の家まで突き止めてるくらいだから、僕とアイツの関係、だいたい想像ついてんだろ?」

「ァンタの名前は香山裕太。ユータくんゎ・・・ァンタの分身。」

「そう、アイツは僕の分身だ!

 僕を助けてくれた英雄のように、自分も英雄になるなんて、そんな下らない事を考えてるカスだ!

 そんな、立派なものになんて・・・成れるわけがないのに!!」



 平凡な自分では、どんなに頑張っても英雄にはなれない。

 どうすれば英雄になれるのだろう?もし今、目の前に轢かれる寸前のアカの他人がいたら、命を投げ出してまで助けられるのか?答えはノー。そんな勇気は無い。

 英雄を追い続けた少年は、成長の過程で理想と現実の狭間で藻掻き、到達の出来ない事実に気付いた。


 香山裕太は、、永久に英雄にはなれない。英雄になる事を諦めた。

 英雄は、こんなちっぽけな命を庇って死んだ。なんの役にも立たないクソのような命の為に、英雄は死ななければならなかった。あの時、自分が居なければ、英雄は死ななかった。自分が死んでいれば、英雄は死なずに済んだ。

 その結果、青年は自分を恨むようになり、やがて英雄の命という重荷に耐えられなくなった香山裕太は、自分自身ではなく、幼き日の香山裕太を恨むようになる。自分ではない別の個体として。その苦しみと恨みが、強い思念となり、少年の霊体を生み出した。


 一番悪いのは、少年時代の香山裕太。



「僕が自分を憎んで憎んで憎み続けたら、ある日、目の前にアイツが居た。

 アイツは、僕にとっては一番許せない汚点だ!

 最初は、見るのも気分が悪いから遠ざけていた。

 だけど違うんだ、僕の手でアイツを始末しなきゃ、僕は一歩も先には進めない!

 変な怪物とグルになったアイツを消せば、僕は、この苦しみから抜け出せる!!

 僕は、過去の自分との決別と同時に、怪物退治をして英雄になれる!!

 これは、過去に縛られた僕にとってのチャンスなんだ!!」

「・・・だから・・・YOUKAIミュージアムの刀を?」

「そうだ!調べたら解ったんだ!!アイツみたいな怪物は、普通の武器では倒せない!!

 だから僕は、霊祓いの刀で!!」


 誘拐犯ゎ自分の行動を正しい事のように語ってる。でもァタシ、スッゲー気持ち悪く感じた。


「・・・・・・間違ってる。」

「なに!?」

「そんなのゼッタイ間違ってる!!」

「なんだと!?」

「アンタゎ、みんなユータくんの所為にして、自分ゎ関係無いってフリをしてる!

 ユータ君のことを自分の分身て言ってるクセに、まるっきり他人扱いをしている!

 昔の自分を消して、それで英雄になれると思ってるなんて、バカなんぢゃね!?」

「だ、だまれぇ!!」


 犯人が超イライラしながら駆け寄ってきて、ァタシのことを引っ叩きやがった。無抵抗の女の子を殴るなんてサイテーすぎっ!


「・・・んわぁっっ!」

「僕の気持ち1つでどうなるか解らない分際で、調子の乗るな!!」


 そのあと、胸ぐらを掴んで、気持ち悪い顔を近付けて、ガンを飛ばしてきた。


「オマエと話すとペースが乱れる!!無事でいたかったら僕に話し掛けるな!!」


 イタズラとかされるかと思って、さすがにビビっちゃった。でも、直ぐに手を離して髪の毛を掻きむしりながら離れてったから一安心。でも、ァイツ、やっぱキショい。


 また文句言って叩かれるとヤダから、喋るの我慢して燕真が助けに来てくれるのを待つことにしたの。直ぐにゎ来なかったから、きっとユータくんゎ粉木の爺ちゃんに捕まらないように逃げたんだね。チョット安心したけど、燕真がユータくんを見付けられないってことゎ、助けに来てくれないのかな?お昼ご飯も食べてないのに、夜ご飯どうしよう?夜ご飯までに帰らなかったら、ママ心配するかな?もし、10年くらいユータくんが見付からなかったら、縛られたまま、ずっとココに住まなきゃなのかな?10年もココに居たら、エッチなことされちゃうかな?助かったあと、「燕真が来なかった所為でキズモノにされた」って言ったら、燕真ゎ責任取ってくれるかな?でも、ホントなら、綺麗な体で燕真とラブラブになりたいから、エッチなことされる前に助けに来て欲しい。だけど、ユータくんが見付かっちゃうのはヤダよ。


「え!?・・・ユータ・・・くん?」


 色々考えてたら、急に場の空気が冷たく変化をして、さっきまで居なかったはずのユータくんが立ってたの。


「燕真お兄ちゃんが困っている・・・僕に‘お姉ちゃんの居場所を教えて欲しい’ってお願いしてくれた。」


 霊感ゼロの燕真ぢゃ、どんなに頑張ってもユータくんの声は聞こえない。だけど、ユータくんから信頼をされてる燕真の声ゎ、どんなに遠くにいてもユータくんに届いていたみたい。


「こんな所に来ちゃダメだよ、ユータくん・・・逃げて!」

「・・・オマエ!!」


 誘拐犯が、盗んだ霊祓いの刀を持って、ユータくんに近付いてく。でも、ユータくんゎ、もう1人の自分をガン無視して、ァタシを見つめて話し続ける。その体の中心には、闇の渦が出現をしてる。


「一度目は、事故の交差点で、同じように突っ込んでくるトラックを見た時・・・

 事故のことを思い出しちゃったら、何がなんだか解らなくなって、妖怪に乗っ取られちゃった。

 二度目は、お姉ちゃん達と居て、もう1人の僕に襲われた時・・・

 もう1人の僕の憎しみの心が入り込んできたら、何がなんだか解らなくなって、妖怪に変身しちゃった。

 だからきっと・・・また、もう1人の僕に会えば、僕は僕じゃなくなっちゃう。」

「ダメだよ、ユータくん!

 ァタシゎ大丈夫だから・・・ヒドイことされてないから・・・心配しなくて良いから・・・」

「ぽっぺのアザ・・・もう1人の僕がやったんでしょ?

 隠しても解るよ・・・だって・・・もう1人の僕も僕なんだから。」


 ユータくんの体に出現した闇の渦は、ドンドンと大きく膨らんでいく!

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