3-4・ドアを殴る少女②
-翌朝6時20分-
ガァンガァンガァンガァンガァンッ!!
・・・ガァンガァンガァンガァンガァンガァンガァンッ!!
「ぉ~~~~ぃ!!!燕真~~~~~~~!!!
居るんでしょ~~~!!!!おっきろぉ~~~~!!!」
アラームは6時半にセットしてあるのだが、人為的、且つ、凄まじく雑なアラームで、起床予定の10分前に目を覚ました。
「うるせ~なぁ~!モーニングコールの出前を頼んだ覚えはないぞ!!」
寝ぼけ眼を擦りながら、玄関の鍵を開けると、紅葉が怒鳴り込んできた!
「チョット、燕真!どぅぃうつもりなの!!?ァタシ『ょろしく』って言ったょねぇ!?」
「・・・ハァ、何が!?」
「ユータ君のこと『ょろしく』って言ったょねぇ!?」
「あぁ、それか!」
寝起きだったんでスッカリ忘れていたが、見えない客が、この部屋で一泊をしたのだ。
「3時間ばかり家を留守にした以外は、それなりに上手くやったつもりだ!
一緒にアニメ見たりしてさ。」
「ハァ!!?そんなゎけ無ぃでしょ!?」
「ん!?なんで!?」
「ユータ君、夜の10時くらいにゎ、ァタシの所に居たもん!!」
「・・・へ!?」
「駅西で事故がぁったみたぃだし、何となく気になって何回も外を見てたら、
ユータ君がマンションの駐車場に立ってて、ァタシのぉぅちは、亜弥賀神社の御札がぃっぱぃぁるから、
ユータ君ゎ入れなぃし、もぅ1回ココに連れて来たくても、
遅ぃ時間に出掛けるとママに怒られちゃうから、
迎ぇに来てもらぉぅと思って、何回も燕真に電話したのに全然出なぃし!!
仕方なぃから、粉木のジイちゃんに連絡して、迎えに来てもらったんだょ!!
なんで、ぉ願ぃしたのに、メンドウ見てくれなかったのぉ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なるほど、今の紅葉の話から、紅葉が自宅に霊体少年を連れて帰れない理由は理解を出来た・・・が、これを言ってしまうと話が根底から覆ってしまうのだが、「根本的に、預ける相手が間違えている」「見えない俺にどうしろってんだ!?」と言ってやりたい。
しかし、一方的に押し付けられたとは言え、迂闊に預かってしまい、それでいて期待に応えられなかったのは事実だ。
「ゴメン、悪かったよ!・・・だけど、粉木の爺さんが預かってくれたなら、それで良いだろ!?」
「・・・ぅん、そぅなんだけど」
素直にミスを認めたので、それまで激しい剣幕を見せていた紅葉も少し落ち着く。その後、「話の続きは夕方、遅刻しないように学校に行け」とその場をやり過ごし、紅葉の登校をを見送った。
「俺、たった1人で深夜までザンパンマンを見ていたのか?」
-陽快町・粉木邸-
見えない少年の事が気になるので、いつもより30分ほど早く到着をした。爺さんに会って訪ねてみると、俺が帰宅したあとに紅葉から連絡があり、ユータ少年を引き取ったらしい。
「・・・そっか。」
俺には見えないが、今は、茶の間でおとなしくしているようだ。居間に入り、道中でコンビニに寄って購入したプリンの蓋を開けて、ちゃぶ台の上に置く。
「どうしたんや、燕真?」
「・・・ん?良くワカンネ~けど、この辺にいるんだろ!?
食うのかは知らないけど、仏壇にお供え物すんのと同じかな?ってさ。
ガキが怒ってるようなら、教えてくれ。」
「良い心掛けやな。」
爺さんが眼を細めて喜ぶ。明確な言葉は無いが、爺さんが何を言いたいのかは解る。今までの俺は、見えない物には無関心だった。「見えない物は見えない」「感じられない物は仕方がない」で終わらせていた。だが、紅葉が廻りを彷徨くようになって、俺には見えない物を「明確に居る者」として接するので、俺も「見えないけど存在をしている者」と考えるようにしている。爺さんは、俺のそんな変化を感じているのだろう。




