第八歩 悪魔の観測
魔女から一撃を貰いました
次に目が覚めたのは雲の上ではなく藁のベットの上だった。質素な木組みのベットのほかには薪や果物やテーブル程度しかない小屋の中で寝ていた。
「甘い香り。」
ふと呟き匂いの方向を見るとメルアシアが寝息を立てていた。すぐ真横に寝ていたが驚きとかより安堵が上回る。仮に死んでいても、それは二人を別たなかったか・・・。
・・・それは冗談としてここはメルアシアが連れてきてくれたのか?俺は動かない体で夢遊病ではないなと思いながら考える。
ただメルアシアが連れてきてくれたには位置が気になるな。なぜなら二人で同じベットに寝ているが壁側にメルアシアがいる。メルアシアが寝かしてくれたのなら逆が自然のはずだが。
「じゃあ誰が。」
フィレリアの顔が浮かんだところで小屋の中に寒風がなだれ込む。軋んだ扉が開かれたのだった。
「やあ。起きてよかった。ボロボロだったからね。薬草が聞いてくれなきゃ死人のベットで寝るところだったよ。」
その人は揺れるような不安定な歩き方で俺の前に立つ。猫の目を柔らかくしたような目が印象的な彼女は俺の目を覗き込んでくる。そのまま俺の眼球をぺろりと舐める。
「なにを!」
俺は反射的に彼女の肩を押すが俺の体はそれに耐えられなかった。ふらついたのは自分で後ろに倒れて・・・。
「ふぎゃ!」
メルアシアの腹に重い頭が直撃する。ああ、一人しか寝てないマイベットならこんなこともなかっただろうに。
「ふむ血の味はしないな。倒れていた時は充血してた。血の味がしなかったから完治してるね。」
迷信だろそれ。そう思ってたら後ろから頭を掴まれた。けれど、アイアンクローみたいなものじゃなくてふにゃふにゃして力がない。
「私に謝罪はないの~!」
メルアシアに頭を掴まれてぐわんぐわん揺すってくる。気持ち悪くなるからやめろって。抵抗するけどはたからはメルアシアも俺も力が入らずじゃれているようにしか見えない。でも俺たちは全力でやっていた。それぐらい体に力が入らない。強風の日に風船が煽られているようなじゃれ方だった。
「いたい!ごめんって。」
力は入らなくても爪は痛い。それでおあいこにしたくて俺は大げさに謝る。目をつぶっているとふわっと甘い香りが鼻腔をくすぐる。人の暖かさが体を包んだ。
「でも無事でよかったよね。」
メルアシアは一瞬の抱擁から離れて笑いかけてくれる。近い距離なのもあるけど、何というか輝いていて見えた。
いろいろあったけど素直に無事なのがうれしい。でも今はそんなことより今は助けてくれた人のことだ。
俺たちは二人で頷いて部屋に入ってきた人を見る。髪がくしゃくしゃで目元が暗い濁った瞳がしている。
「あなたは何者なんですか?」
俺が尋ねるがその人は気にすることなく引き出しから黒い液体を取り出す。波を立てたそれは粘性高く波で水面が下がっても瓶の側面にねばっと少し残ってから水面に帰る。
「騒がしいな。これだけ瀉血したのに。」
瓶の中身を揺らす直感で分かったそれは血だ。時間がたって黒ずんでるものだと思う。
「これは君の膿さ。体のバランスを直した結果と言ってもいい。」
俺の体に力が入らないのは怪我だけじゃない理由があると。血を抜かれたせいもあるのか。
「瀉血って便利だよね。勝手に出歩かれなくするにも使える。」
「っ!」
こいつが都市の刺客の可能性を忘れていた!教会との取引のためなら一瞬だけ俺たちを捕えているなんてあり得る。
「安心しな。私は森の賢者さ。」
その言葉で信用なんてできるか。だが、構えようと動かない体をこわばらせているとメルアシアが後ろから大丈夫だよと呟く。村落の関係者なのか・・・。そうであれば助けてくれたことにも合点がいく。怪しげなこと言ってるけれどいい人なのか。
「瀉血の成功率は高く無いけれど実験成功してよかった。奇石の研究を進められる。」
・・・。・・・。俺たちのためを思ってじゃなくて実験材料のために瀉血したのか。賢者はガチャガチャとした道具を取り指す。いややばいだろあの器具。途中から二股のガラスチューブで二股でない方の先端に針が付いていて二股の方にはポンプだのマグネットだの雑多な道具がついていた。どうみてもチューブは真空になってない。そんなもんぶっさしたのかよ。人は空気が入ると死ぬ。失敗率高そうな言い方だし俺に無断で使うのやばくない?賓客だよ?
俺が慄いていても全く賢者は気にしない。すると、ピーピーという鳴き声が聞こえて小鳥が窓から入ってくる。
「話は変わるけど。ここは森の中・・・なのか?」
気になっていたここの場所について尋ねる。トロイメライと比べたら教会だって自然あふれている。しかし教会でも小鳥なんて入ってこなかった。俺たちが逃げてた場所を考えれば森だろう。
「正解だ。君たちの倒れていたところからそう遠くない森の中。ここは停滞を選んで、安寧のために搾取し憎悪を溜めるこの世界で唯一解放された場所だ。」
彼女の言葉の意味はおいておく。しかしまずい、ここは都市の捜索圏内だろう。早めに出ないと。
「今は下手に出ない方がいい。」
俺の心を読んだように森の賢者が牽制する。推測できないはずなんてないか。
「でも早くしないと取り囲まれる」。
「もう遅いよ。大分森の中に奴らは散らばってる。その体じゃすぐ捕まる。」
背筋が少しだけ冷える。どれだけ寝ていたのだろう。ただ感覚の話になってしまうが大分寝ていた。すでに手遅れに感じる。だとしても行かなければならない。どれだけ絶望的な人気だろうが命を懸けている以上、プラスの倍率の馬に賭けざるをえない。
「私が逃がしてやる。だからそれまでゆっくり話を聞かせてくれ。ここじゃあなかなか情報が入らなくてこまってるんだ。なぜ男性がいるかは聞かないけど逃げてきた今回の事件について聞かせてくれないかい。」
俺はハッとする俺も毒を飲まされて状況把握なんてできていない。メルアシアが知っていることだけでも知らなければ。
しかし、逃げなくていいのだろうか。優先順位がうまくつかない。俺はちらりとメルアシアを見るが俺に同調する動きはない。メルアシアが信じる相手を信じるべきか。
メルアシアは俺に寄りかかりながら口を開く。当然ずいぶん疲れているのか瀉血のせいかずいぶん体重を預けてくる。
「都市は先の教会に対するシィクロウィーンの襲撃に対する支援の会談を持ち掛けてきたの。そんなこと都市から持ち掛けられること今までなかったよ。もちろんケイのことを探ってくるんだってわかったの。」
まぁそうだろうなと賢者は言いながらかまどのある土間に向かう。賢者はすでに用意していたご飯を俺たちに振舞ってくれる。主食類はなく野草を煮込んだスープだけだったが意外と美味しかった。正直トロイメライと比べて教会のご飯は良いものではなかった。それだけに森の中のここは期待していなかったがなかなかだ。惜しいのは俺のリュックに入ってたアウトドア用調味料を加えられないことだ。
「そうなればケイを確保しに来る可能性があるってフィレリアと会議したの。それで私がジョーカーとしてケイのいた部屋の天井裏に隠れてたってわけ。案の定仕掛けてきた緊急事態の対処をして逃げてきて。今に至るってことだよ。」
「だれか手引きした者はいなかったか。教会のものがここに来られて誰か白かわからなければ安心して過ごせん。」
メルアシアは少し悲哀のある表情で躊躇する。聞かれるのを分かっていても言いたくない。訓練のテストで悪い点を取った人みたいだ。
「だれが・・・都市の味方になったかは分からないよ。一人だけに限ったことじゃないから。でも一人だけは分かるよ私はエネがケイに毒を盛ってのは見ちゃった・・・。」
照れ笑いのように頬を染めて呟くメルアシア。鼻が少しだけ赤くなっていた。
「ふぅっむ参考にはならんな。しかし、誰が裏切ってるか分からぬとは脆い絆だ。」
メルアシアは賢者を睨む。それは強い怒りだ。彼女の少し余裕を持った雰囲気が消えてピリピリとした空気が肌を刺す。
「私たちがずっと作ってきた絆をそんなふうに言ってほしくない。みんな近づいて離れて少しずつ固くなった絆をそんなふうに言わないで!みんなはソロルスを人質に取られたんだって。どうしてもどれかの握手を離さなきゃいけなかっただけ!」
声は張り上げなかったが圧があった。
彼女たちは百数十年という時の間、圧倒的な強者だった都市に対抗するために必要だったのは何よりも絆だったんだろう。連帯感こそが彼女たちの誇りだったか。
しかし、まるで賢者は気にしない。応答もせず別の話題に移った。
「教会は都市と敵対したか。」
賢者は窓の外を見ながらつぶやく。その顔は何を考えているのか、全くうかがえなかった。
でも都市と教会が敵対したとしたら、それが俺に関することだとしたら、交渉は一筋縄ではいかないどころか困難になったかもしれないのか。
再度思い出すが俺の任務は世界の改変を防ぐために各世界の繋がりを作る機械を設置すること。それのためにその地域の大勢力と交渉しなければならない。そこと敵対して関係修復なんて俺にできるのか。
「うんん。まだ険悪どまりだと思う。都市は・・・嫌いだけど村落は間接的に助けてもらってるし、都市がなければ教会は運営できないから手の内をさらしたあとにもう一回交渉するってフィレリアさんは言ってた。」
それを聞いて少し安心する。貧血もあって少し眠くなってきた。どうして都市が強硬手段に出たのか今後どういう方針を打ち出すのか今はここのだれにも分からない。案じていても仕方ないのだろう。
「あくびをしている暇はない。ここで待って居ろ。」
外で鳥の鳴き声が騒がしく聞こえる。ほとんど聞いたことはないから分からないが、明らかに異常を知らせるように聞こえる
賢者は剣を取って扉に手をかける。
「危ないって!都市の兵士はしっかり訓練してる。いかない方がいいよ!それにすぐに離れるのも寂しいよ。」
メルアシアは声を潜めて賢者にささやきかける。正直あまり気持ちのいい対応をされていないのにいい子だ。
「家主の使命がある。いやプライベートを荒らされたくないだけだな。ベットの下に抜け道がある。いざという時には近くの村まで繋がっているから使え。」
「貧血がひどくてまだ動けないから。使わなくてもいいように祈ってるね。」
メルアシアはぎゅっとシーツを掴んで賢者の目を見る。賢者を見た後、窓を見ていたメルアシアの視線を追うと銀色の鎧がちらりと見える。かなり遠いがこの小屋に向かってきている。
「トンネルの中の空気は人が生きていられるような空気じゃないかもしれない、できるだけ穏便に頼む。」
「善処するよ。」
扉を開いて賢者は霜枯れの大地に歩き出した。メルアシアが近くに置いてあるナイフを取ろうとするけどベットの上で転びかける。俺は支えるけど二人で転びそうになる。戦うなんて夢のまた夢だ。
俺たちは隠れながら窓から様子をうかがう。スープをすするがふざけているのでなく、まじで飯を食わなきゃ動ける気がしない。
視線の先に人影が写る。華美な軍装だ。金の装飾やボタンが赤い軍服に質の良い剣を佩いている。明らかに将官だ。だからこそ異様である。明らかに部下を引き連れる立場だというのにぽつんと森の中から歩いてくる。銀の鎧だって見かけた。それなのに一人でくる。交渉の場でもないのに来る。警戒する理由には十分だった。
「荷物は確保したからいつでもいいよ。」
メルアシアも異様さを感じたのか這いずりながら荷物を手繰り寄せて逃げる準備をする。
もう少しだけ見よう。と俺が言うとメルアシアが頷く。なにか賢者を援護できればいいけど・・・。いや俺たちをかくまっているのがばれる方がまずい。
「初めましてだろうかな?」
将官は煽るように賢者を見る。ポケットに手を突っ込みまるで無防備だ。だからこそ圧倒的優位であるようにしか見えない。
「でもお互い素性は知っている。」
賢者はひるまずというか関心がないように答える。
二人は距離を離して話している。小屋からはそこそこ離れた場所だ。
メルアシアは袋に入っていた靴を取り出して俺たちは履きながら様子見を続ける。
「初めまして。元元首候補殿・・・。都市を捨てて悠々自適で楽しいねぇ?」
声はかわいらしいティーンエイジャーといったところだが妙にぞくりとする口調で話す。フィレリアと話していた都市の女性にも不気味さを感じたが、今はそれは偽物だった張りぼてのように感じる。上手く言えないが腹の中から何らかの歪みみたいなものを感じる。
「何用かい?私が都市にいたときに君は見たことが無いがね、軍服は更新されていないようだねぇ。第何代か知らない軍団長さん。なんで私の住処を知ってるんだい。」
賢者は相も変わらず相手のことを気にせず聞きたいことを聞く。こんなときに言うのもなんだがさっきこの人の事元元首候補って言ってなかった?明らかに人間社会にいちゃいけない人だろ。
「ワタシに知らないことはないからだよ。きみが石に魅入られて世捨て人になったのだろう。」
それに答えるのは賢者の悲鳴!あいつ何をっ!
「待って。」
俺はとっさに飛び出そうになるがメルアシアが止めてくれる。
賢者は後ろから何者かに捕まれたみたいに窓から見えなくなった。だが何かあったに違いない。
「ワタシは君を殺そうというなんて命令を下すつもりはない。ただ私は知らないことはない。今は知らずとも未来の私が知らないことはない。この意味が分かるかね。」
賢者の答えはない。恐らく答えられないような状態なのだろう。助けられない自分が苦しくて膝に爪を立てる。でもそれで分かるんだ・・・。力が入らない自傷すらできないんだ。
「ワタシは死ぬわけがなく。そして、君の知っていることを吐いてもらうからさ。」
何かいいものはないのか。俺はポケットに乱雑に手を突っ込む。っ!ネバッとした液体が指を伝う。指を切った。でもそれであれがあったことを思い出す。そうだ。俺は血の付いた割れた鏡をポケットから取り出す。女性とコミュニケーションをとるツールだったけれどここで花道ができるとはな。俺はばれないように鏡のかけらだけを窓の外に出して俺たちは窓の下に体を隠すような姿勢で観察する。窓にガラスがなくて木の雨戸がついているだけなのが助かった。今木戸は上にあげられて遮るものなく鏡を設置できた。
・・・。都市の連中は気が付いていない。賢者を観察しようとするがなかなかうまくいかないな。何度かの試行錯誤の末に見えたのは地に足のついていない姿だった。思わず声が出そうになる。賢者は脇腹に短剣が突き刺さっていた。そんな状態なのにわき腹を抑えることすらできない彼女は都市の軍人に首をつかまれていた。希望的観測だが都市の将官の言う通り殺す気はないと思う。緩めに締め付けていると思えた。
「ワタシはあなたみたいな遠くから俯瞰している人が嫌いなの。だってゲームに参加しないで見ているだけの人なんてつまらないもの。」
将官の言葉に思わず立ち上がりそうになる。それほど将官な言葉に明々白々な殺意があった。支離滅裂だと直接言ってやりたい。だが今は見守るしかない・・・。
賢者は首を回して俺たちのいる方と逆側から小屋を見る。
「逃げるよ。」
メルアシアは弱弱しいながらも素早くそして静かにベットの下の隠し扉の戸を開きとびこむ。
なぜ・・・。まだ誰も入ってきそうにないしそれより賢者を助けられるチャンスを捨てたくない。
「早く!」
メルアシアの声が強い。
俺は全く状況を把握できなくてただ従うしかできない。俺は訳も分からず地面の中に潜り込み扉を閉じて賢者を見捨てた。
(ごめん・・・。)
「やっと抜けたよ。」
前の一切見えないほど暗く進むための呼吸すらも息苦しい。半分以上崩れていた道には空気を循環させる機構は無かった。よどんだ空気の中酸欠の恐怖におびえていた身としてはメルアシアの言葉は希望の光に見えた。布ずれだけでしか存在を感じられた彼女が本物の光が見えたことではっきり認識できた。
抜け穴を出たときお互いに身体はボロボロだった。俺は大丈夫だったがメルアシアは服も這いずり回ったせいで擦り剝けた。俺もメルアシアもすれ続けたことで皮膚がめくれ上がる。全身にまみれで直接地面を触れていたメルアシアは破傷風は・・・。俺は丈夫な服に加えてワクチンで大丈夫だがメルアシアは大丈夫だろうか。だが今はどうにもできない。トロイメライから持ち込んだリュックがあれば治療してあげられるが・・・。
俺は頑迷固陋と言えるほど閉ざしていた口を開いた。
「逃げ切れた?ってことでよさそうか?」
多少警戒感を持ちながら口にする。まだ森の中だが遠くにきたとおもう。それだけ遠く這いずってきた。
「大丈夫だと思うよ。」
メルアシアはさすがに疲れたのかうとうとしながらその辺に座る。
「どうしてあの時逃げようといったんだ。都市の連中だって俺たちがあそこにいるとは限らないし、あのまま帰って言ったら俺たちで賢者を介抱できたじゃないか。」
メルアシアは俺を安心させようと笑顔を見せているけど目は笑っていなかった。
「そうだね、普通だったら早すぎるのにもほどがあるよね。でもあのインペラなら違うの。」
「ちがう?」
強い否定だ。手のひらが擦り剝けて痛いだろうにそれでも強く握りこむ。
「インペラは賢者を苦しめてるのを囮に小屋に兵士を突入させてたよ。」
は?
いや、できなくはないけど・・・どうしてそんなことを?俺たちがいるなんてわからないんだぞ?
「私たちがいる可能性を考えれば無駄骨。それどころか隠れてても隠し通路みたいな脱出口がないとそんなやり方をする必要はないよね。でもやるんだよ。あの人はコストとか考えない。絶対に相手を屈服させることだけを考える。」
そんなわけ・・・。その言葉はすぐに引っ込んだ。メルアシアは本当にマジな目をしている
「いままで都市との武力衝突はないよ。でも妨害はしてくる。村落間に新たに道を作るときに別の理由をつけて工事予定地に破壊工作をしたり、シィクロウィーンが頻発する場所に森で隠した道を作れば木を伐採して丸見えにするの。そうやって、有力村落同士のつながりを断つことで都市の相対的優位性を保つ。そういう事を平然とやる人なの。」
「蛇みたい。」
メルアシアは頷く。周到すぎるが神経質な奴ではないな、長期的に考えられる奴の思考だ。未来のコストを考えていまに投資できる人間だ。それほど多くはないだからこそ厄介な奴だよ。
「ここから数キロ先に今回の会議に合わせて戦力を集中させたフロイって村があるんだよね。そこまでいけば都市の連中は準備無しに攻められないから。そこから馬でメリトットに行こう。東側の村で一番の所だからそこで教会からの連絡を待つの。」
疲労困憊といった風にメルアシアは俯く。話す声にも元気がなかった。当たり前だ。
ちょ?!メルアシアの小さな悲鳴が響いた。
「お姫様抱っこしなくても大丈夫だよ?!おろしてって!」
おれはメルアシアを両手で抱き上げるさすがに両手が痛いけど眠そうなほど疲れている彼女を歩かせられない。
「お返しだから気にしないで。」
「そうだけど・・・。」
メルアシアは照れて視線を逸らすが気にせず俺はメルアシアの言う通り歩き出す。そうして俺たちはフロイに着いた。