第84話 崩れ始める頂点
―王都外縁・荒野―
風が流れる。
砂が静かに舞う。
ゼルとカインは動かない。
距離は同じ。
だが。
“立場”が変わっている。
―カイン―
「……到達したか」
低く呟く。
さっきの一撃。
確実に入っていた。
逃がせなかった。
ズレなかった。
―ゼル―
「……ああ」
短く返す。
それ以上は何も言わない。
もう。
説明する必要がない。
―静かな変化―
カインの呼吸が変わる。
わずかに。
だが。
確実に。
重くなっている。
―違和感―
今までと違う。
崩れてはいない。
だが。
“削れている”。
―カイン―
「……面白い」
小さく笑う。
だが。
その声は。
わずかに低い。
―踏み込み―
カインが動く。
速い。
重い。
変わらない。
はずだった。
―衝突―
拳がぶつかる。
その瞬間。
――静止
完全に。
逃がさない。
―結果―
衝撃が深く入る。
今までと同じ。
だが。
―違い―
カインの体が。
わずかに遅れる。
「……」
―初のズレ―
ほんの一瞬。
だが。
明確な遅れ。
―ゼル―
見逃さない。
すぐに踏み込む。
二撃目。
同じ状態。
同じ静止。
―連続命中―
逃がさない。
崩さない。
そのまま。
通す。
―変化の蓄積―
一撃ごとに。
カインの動きが鈍る。
ほんのわずか。
だが。
積み重なる。
―リリア―
「……遅れてる……?」
小さく呟く。
信じられない。
あのカインが。
―カイン―
「……いいな」
低く言う。
だが。
完全に余裕はない。
「確かに届いている」
―ゼル―
「……そうか」
短く返す。
それだけ。
感情はない。
―本質―
壊したわけではない。
削っている。
少しずつ。
確実に。
―締め―
頂点は。
一瞬では崩れない。
だが。
一撃ごとに。
確実に。
削れていく。




