第49話 届かない一撃
―王都外縁・荒野―
風が吹く。
土煙が流れる中。
ゼルが立っている。
傷だらけ。
だが。
視線はブレない。
―カイン―
「……来い」
低く言う。
余裕のまま。
構えすら崩さない。
―再戦―
ゼルが踏み込む。
今度は違う。
一直線ではない。
角度を変える。
重心をずらす。
―試行―
拳を入れる。
だが。
ただ当てるのではない。
“押し込む”。
「……」
手応え。
だが。
―結果―
「……浅いな」
カインが呟く。
そのまま。
体をわずかに動かす。
――逃がす
衝撃が流れる。
完全ではない。
だが。
決定打にはならない。
―反撃―
カインの拳。
速い。
重い。
直撃。
ゼルが吹き飛ぶ。
―リリア―
「……っ!」
「やっぱり……!」
「通じてません……!」
―ゼル―
立ち上がる。
呼吸は荒い。
だが。
「……惜しい」
それだけ。
―分析継続―
「……完全には流せていない」
「だが」
「まだ足りない」
冷静。
完全に。
―再挑戦―
もう一度踏み込む。
今度は速く。
深く。
角度をさらに変える。
打ち込む。
―変化―
「……」
カインの眉がわずかに動く。
ほんの一瞬。
だが。
確実に。
―それでも―
――流される
完全ではない。
だが。
やはり決定打にはならない。
―カイン―
「……いいな」
低く言う。
「変えてきたか」
初めての評価。
―ゼル―
「……当然だ」
短く返す。
「通じないなら」
「変えるだけだ」
―差―
だが。
現実は変わらない。
まだ。
届かない。
―締め―
理解した。
試した。
変えた。
それでも。
まだ足りない。
この差は。
簡単には埋まらない。




