第444話「永遠の贖罪」
さらに長い年月が流れた。
国の名は変わり、王都の面影もほとんど残っていない。
城壁は風化し、石畳は土へ還り、かつて権力の象徴だった王城も、歴史遺構として静かに保存されるだけとなっていた。
それでも北の丘には、黒い塔だけが立っている。
贖罪塔。
幾度も補修され、幾世代もの石工が受け継ぎながら、その姿は今日まで残されていた。
理由は一つ。
壊してはならないからではない。
忘れてはならないからだった。
塔の内部では、今なお五つの声が響いている。
ガルド。
リシェル。
エリナ。
カイン。
ヴァルディス。
五人は終わることなく、自らが他者へ与えた苦しみと向き合い続けていた。
助けを求める声も、謝罪も、怒号も、厚い石壁を越えることはない。
そのすべては自らへ返り、永遠という時間の中で繰り返される。
塔の外では季節が巡る。
春には花が咲き、夏には緑が揺れ、秋には落葉が積もり、冬には静かな雪が降る。
子どもたちは笑い、大人たちは働き、新しい命が生まれていく。
世界は止まらない。
未来は歩み続ける。
そして、その未来の片隅で、贖罪塔だけが静かに立ち続けていた。
復讐は終わった。
しかし罪は終わらない。
それが、この国が最後に残した、永遠の贖罪だった。
(完)




