第37話 強引な最適化
―魔導区画・上層監視塔―
「……出力、上昇」
リシェルが呟く。
魔法陣が再び広がる。
先ほどよりも密度が高い。
「……さらに上げる」
躊躇がない。
―異常な強化―
「魔力供給、制限解除」
「安全域を無視」
通常ではありえない設定。
「……これでいい」
理論上は成立する。
だが。
「……負荷が高すぎます」
補助術者が言う。
「このままでは――」
「問題ない」
即答。
「維持できる」
断言。
だが。
その声に余裕はない。
―ゼル側―
「……上げたな」
ゼルが呟く。
「はい」
リリアが頷く。
「魔力出力が異常です」
「通常の倍以上」
「……無理をしている」
「……はい」
―再接触―
ゼルが動く。
踏み込む。
防御が反応する。
今度は速い。
重い。
「……」
ゼルが止まる。
―成立―
「……通らない」
リシェルが呟く。
「これなら」
「完全に防げる」
強引な成功。
―圧迫―
魔法陣がさらに増える。
逃げ場を削る。
拘束に近づく。
「……押し切る」
リシェルが言う。
「理論は正しい」
「なら」
「力で通す」
―限界の兆候―
「……」
呼吸が乱れる。
視界が揺れる。
手がわずかに震える。
「……問題ない」
自分に言い聞かせる。
「まだ……維持できる」
―ゼル―
「……見えているな」
静かな声。
リシェルが顔を上げる。
「……何がだ」
「限界だ」
短い一言。
―否定―
「……違う」
「これは最適だ」
「理論通りだ」
即座に否定。
だが。
その言葉が重い。
―締め―
理論は崩れていない。
だが。
“維持するための代償”が。
確実に積み重なっていく。




