第36話 まだ終わらない
―魔導区画・上層監視塔―
「……まだだ」
リシェルが呟く。
崩れた魔法陣。
乱れた構造。
だが。
「終わっていない」
即座に手を動かす。
―再構築―
「構造を再定義」
「接続部を分断」
「単一構造へ移行」
高速で書き換える。
さっきまでの“連結型”ではない。
独立型。
「……これなら」
「一点突破は成立しない」
―ゼル―
「……変えたか」
静かな声。
リシェルの目が上がる。
「……当然だ」
「同じ構造は使わない」
わずかに荒い呼吸。
だが目は死んでいない。
―再展開―
魔法陣が広がる。
先ほどとは違う。
繋がっていない。
独立している。
「……来い」
リシェルが言う。
「今度は通らない」
―接触―
ゼルが踏み込む。
防御が反応する。
今度は崩れない。
弾かれる。
「……」
ゼルが止まる。
―成立―
「……成立した」
リシェルが呟く。
「理論は崩れていない」
わずかな安堵。
そして。
確信。
「まだ勝てる」
―ゼル―
「……そうか」
短い返答。
そのまま。
一歩下がる。
―違和感―
「……?」
リシェルの眉が動く。
「なぜ引く」
追撃はしない。
攻めてこない。
―ゼル―
「……試しただけだ」
静かな声。
「構造は分かった」
「……っ」
空気が変わる。
―理解―
「……まさか」
「また解析している?」
嫌な予感。
だが。
止まらない。
―締め―
天才はまだ折れない。
理論もまだ生きている。
だが。
それでもなお。
“相手”が悪い。




