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第332話「地方貴族の手紙」
王都の貴族街。
一通の手紙が届く。
差出人は地方の有力貴族。
内容は短い。
王都への来訪を、当面見合わせる。
理由は書いていない。
受け取った家令が主人に届ける。
主人は読む。
一度だけ。
それから窓の外を見る。
向かいの屋敷はもう暗い。
先週から人がいない。
「……そうか」
一言だけ言った。
手紙を卓に置く。
返事を書く気にはなれなかった。
書いても意味がない。
事情はお互い分かっている。
王都が変わった。
だから人が来なくなった。
それだけのことだ。
ただそれだけのことが、三十年の付き合いを静かに変えていく。
灯りを消す。
部屋が暗くなる。




